被災者生活再建支援法、被災者の立場で適用要件を見直せ
埼玉県越谷市の竜巻被害 1月8日、埼玉県は自然災害で大きな被害を受けながらも、「被災者生活再建支援法」の適用を受けられない住民に対し、独自の救済策を4月から開始することを発表しました。(このブログの後半に埼玉県のHPを引用しました)
 支援法は、住宅が全壊した世帯などに最大300万円の支援金を支給する法律です。適用要件は「10世帯以上の住宅全壊被害(全壊)が発生した市町村」と定められています。
 しかし、竜巻や集中豪雨などの自然災害は自治体の境界に関係なく起こります。そのため、同じ災害に遭っても住んでいる自治体によって、同法が適用される地域と、されない地域の違いが生じています。
 例えば、昨年9月2日に埼玉県と千葉県を襲った竜巻被害では、埼玉県越谷市(全壊30棟)には支援法が適用されましたが、隣接する同松伏町(全壊1棟)と千葉県野田市(全壊1棟)は対象になりませんでした。当然、被災者から「不公平だ」「同じ災害には同じ補償を」などの声が上がり、松伏町や野田市は独自の救済策を実施しました。
 竜巻被害の教訓を踏まえ、埼玉県が8日に示した救済策は、支援法が適用されない場合でも全壊世帯などに最大300万円を支給します。住宅が全壊した被災者が民間賃貸住宅に入居する場合、最大で月6万円を1年間支給することも盛り込みました。予算は年間約1億円とみられており、県と市町村が2対1の割合で負担します。
 埼玉県議会公明党も、議会質問などを通じて、独自の救済策の創設を求めていただけに、県の取り組みを評価するところです。
 支援法の矛盾を是正するために独自の救済策を実施している自治体は埼玉県以外にもあります。内閣府によれば、支援法と同等の対策を設けている府県は、すでに15に上っています。
 このため、内閣府の有識者検討会が昨年12月にまとめた提言は、全都道府県で支援法と同等の措置を講じることが適切だと指摘しています。
 ただし、近年は各地でさまざまな災害が頻発していることを考えると、対応を自治体任せにしたままでよいのでしょうか。
 実際、自治体からは支援法の適用要件の緩和を求める声が出ています。全国知事会は、自然災害が発生した場合に、全ての被災区域が支援対象となるよう国に見直しを要望しています。
 内閣府の有識者検討会は今後、支援法を含め被災者支援の在り方全般について見直し論議を進めていく予定です。あくまでも被災者の立場に立った検討を期待するものです。

埼玉県独自の被災者支援制度を創設
埼玉県のHP(2014年1月8日更新)
 上田清司埼玉県知事は8日、今年初の定例記者会見で、被災者生活再建支援法が適用されない被災者を救済するための埼玉県独自の被災者支援制度を県と県内市町村が共同して4月に創設することになったと発表した。
 被災者生活再建支援法は全壊した住宅が一市町村あたり10世帯以上なければ適用されない。また、現状では、住宅が全壊した世帯に対しては、民間賃貸住宅を借り上げるのではなく、公営住宅への入居で対応することが原則となっている。このため、昨年9月、越谷市、松伏町、熊谷市、行田市、滑川町で竜巻が発生した際に十分な被災者支援ができず制度上の課題が指摘されていた。
 これを受け、県と県内63市町村が共同で検討を行ってきた結果、総合的な支援制度の大枠がまとまり、詳細を詰めた上で4月1日からスタートさせることになった。
 新制度では、法が適用されない全壊または大規模半壊した世帯に対して最高300万円を支給。さらに、住宅が全壊した世帯のために民間賃貸住宅を借り上げた場合、1世帯あたり月6万円を限度に最長1年間交付金を支給する。
 県では新制度を運用するために必要な予算額を約1億円と試算。これを県と市町村が2対1の割合で負担し、各市町村の負担額を人口や世帯数をもとに算出する方向で調整が進んでいる。
 県によると、こうした独自の被災者支援制度はすでに15の都道府県で運用されている。記者会見で上田知事は「(法律改正に向けた働きかけは)これまでもだいぶやってきた。何らかの形で改正の動きは出てくると思っている。ただ、我々の方でも努力は必要。今回、(市町村と)共同戦線を作ることができて非常に良かった」と話した。