2014年度から10万組の親子対象に、健康と化学物質の関係解明へ
エコチル調査の概要 2014年度から、環境中の化学物質が子どもの成長・発達に与える影響について長期的に調査する「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)が本格化します。環境省の企画立案の下、独立行政法人・国立環境研究所を中心に全国15地域の大学や医療機関などと連携して行います。
 「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせた造語が「エコチル」、いわゆる環境ホルモンが子どもに与える影響を調査するのが「エコチル調査」です。
 エコチル調査は、子どもと両親10万組を対象に登録。2011年8月以降に子どもが生まれた家庭や、今年3月末までに母親の妊娠が判明すれば参加することができます。1月6日現在、全国で9万2062人(母親)が協力を表明しています。
 調査の背景には、1970年代以降、子どもの健康に関して大きな変化が見られることがあります。
 ダウン症候群や水頭症などの先天異常の子どもが生まれる頻度は、70年代後半と比べ2000〜04年は約2倍に増加。学校保健統計によると、子どものぜんそくの被患率や肥満傾向の割合も増えています。
 米国でも自閉症の割合が増加するなどの事例が相次ぎ、こうした子どもの変化は世界的に進む工業化などによる大気や水の汚染が主な原因と指摘する声が少なくありません。
 このため、エコチル調査では、化学物質の影響を受けやすいと考えられている子どもの胎児期から小児期を経て13歳の誕生日を迎えるまでの期間を追跡。化学物質の測定・分析を通して、環境因子や生活習慣などが子どもの健康にどのように影響するかを解明していきます。
 調査は、妊娠期、出産期、赤ちゃんの1カ月健診時とし、母親に対する血液や尿、母乳の採取、赤ちゃんの毛髪の採取などを実施。生後6カ月から13歳までは半年ごとのアンケート調査に加え、数年ごとに面接調査などを行うとしています。
 2011年から既に協力する医療機関で妊婦健診を受診した妊婦に調査への協力を依頼しており、血液採取など一部の調査を終えた人もいます。
 またエコチル調査の実施に当たっては、世界保健機関(WHO)などの国際機関や米国環境保護庁などと連携した上で、得られた知見を調査に生かすことになっています。
 公明党は、化学物質から子どもの健康を守る取り組みを進めるため、エコチル調査の導入を積極的に推進。2013年度補正予算案には10億円、14年度予算案には約47億円がそれぞれ計上され、調査が加速することになっています。

 環境省では、日本中で10万組の子どもたちとそのご両親に参加していただく大規模な疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を開始しました。
 「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」です。
 赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時から13歳になるまで、定期的に健康状態を確認させていただき、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにします。
 環境リスクが私たちの健康に与える影響を明らかにするために、従来から動物実験、基礎研究を中心としたメカニズムの解明が図られてきました。
 一方で動物と人間とでは、形態学的、生理学的に大きな違いがあることから、動物実験の結果だけから人間の健康影響を知ることは困難です。
 人間になんらかの影響が生じているのかどうかを、実際に人間の集団で観察する疫学的なアプローチが重要になります。脆弱(ぜいじゃく)であるとされている子どもたちの健全な成長・発達に、環境要因が与える影響を明らかにすることは重要です。化学物質の曝露や生活環境など、胎児期から小児期にわたる子どもたちの成長・発達に影響を与える環境要因を明らかにするため、環境省では疫学調査によるアプローチを計画しました。それが、エコチル調査です。
 エコチル調査によって子どもたちの成長・発達に影響を与える環境要因が明らかとなれば、リスク管理部局への情報提供を通じ、自主的取組への反映、化学物質規制の審査基準への反映、環境基準(水質、土壌)等、適切なリスク管理体制の構築へとつなげることができます。
 また、この調査を通じて、環境保健の分野における若い研究者を中心とした人材育成も推進されます。
 環境省が実施するエコチル調査は、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとする環境因子が、妊娠・生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているのではないか」という大きな仮説(中心仮説)を解明するために、化学物質の曝露などの環境影響以外にも、遺伝要因、社会要因、生活習慣要因など、さまざまな要因について、幅広く調べていきます。
 エコチル調査の結果から、子どもの健康や成長に影響を与える環境要因を明らかにし、子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を目指していきます。

エコチル調査の中心仮説
 エコチル調査は、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が、子どもの健康に大きな影響を与えているのではないか」という中心仮説を検証するものです。
 この中心仮説に基づく種々の仮説を明らかにするためには、化学物質の曝露以外の要因についても併せて検討を行う必要があります。解明すべき要因としては遺伝要因、社会要因、生活習慣要因等が想定されます。
エコチル調査の分野別仮説

出産前後の環境影響と子どもへの健康影響

調査の対象となる環境要因
化学物質の曝露
残留性有機汚染物質(ダイオキシン類、PCB、有機フッ素化合物、難燃剤等)、重金属(水銀、鉛、ヒ素、カドミウム等)、内分泌攪乱物質(ビスフェノールA等)、農薬、VOC(ベンゼン等)など
遺伝要因
社会・生活習慣要因
地域(住所)、住居(種類、築年数、空調等)、両親の学歴・職業歴・勤務状況・収入、両親の喫煙・飲酒、食事、家庭環境(兄弟の数、ペット等)、遊び場の環境、学校の環境等

環境影響(アウトカム・エンドポイント)
身体発育:出生時体重低下、出生後の身体発育状況等
先天異常 :尿道下裂、停留精巣、口唇・口蓋裂、二分脊椎症、消化管閉鎖症、心室中隔欠損、染色体異常等
性分化の異常:性比、性器形成障害、脳の性分化等
精神神経発達障害:自閉症、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)等
免疫系の異常:アレルギー、アトピー、喘息等
代謝・内分泌系の異常:耐糖能異常、肥満等