政府の「データカタログサイト」の試行版 “オープンデータ”は、国や地方自治体などが持つ公共データを、誰でも自由に使える形で公開することを意味します。公開データは、コンピューターで読み込んで使うことを前提にしたもので、著作権の規制を受けません。
 これまで行政が公開しているデータは、コンピューターに識別させるために別途加工する必要があったり、無断改変が禁じられていたりしたため、アプリ開発などの二次利用がしにくい面がありました。データを加工しやすい形式でホームページ上に公開することで二次利用を促進し、民間の知恵を活用した新しいサービスの登場を後押しするなどの効果が期待されています。具体的には行政機関が保有する地理空間情報、防災・減災情報、調達情報、統計情報などの公共データを、あらゆるOSやソフトで使える汎用性のあるCSV形式などで公開します。
 市民の参画や行政と市民との協働を促進する流れを受けて、このオープンデータへの関心が高まっています。
 オープンデータは、国と地方自治体が一体となった取り組みが求められることから、政府のIT総合戦略本部(平成24年7月4日開催)では、1.政府自ら積極的に公共データを公開すること、2.機械判読可能な形式で公開すること、3.営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること、4.取り組み可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取り組みに着手し、成果を確実に蓄積していくこと、の4原則がとりまとめられ、併せて、東日本大震災の教訓を踏まえ、緊急時に有用と考えられる公共データについては、早期に取り組みを進めていくことの重要性が確認されました。
 そうした中、政府は、昨年(平成25年)末に各府省庁が公開する公共データの案内・横断的検索を可能とする「データカタログサイト」(ポータルサイト)試行版を立ち上げ、今後は全省庁が参加し、統計や調達、防災などに関連する約1万個のデータ群が最終的に公開される予定です。
参考:データカタログサイト(β版)
 企業や公共団体がこれらのデータを活用し、低コストかつ短期間にアプリケーションやサービスを開発できることになります。
 一方、地方自治体では、福井県内(鯖江市など)の取り組みが顕著で、福井県としても昨年(平成25年)12月26日、防災、統計など69の県独自データのほか、県と県内17市町の計1000件を超える公共施設情報を公開した「県オープンデータライブラリ」を県ホームページに開設しました。
参考:福井県オープンデータライブラリ
福井県鯖江市の取り組み・39種のデータをHPで公開
 鯖江市は従来、公共データの開示については、ホームページや広報などで一部公開したり、情報公開制度に基づく請求者に対して開示する対応にとどまっていましたが、2010年12月に市内企業家らの提案を受け、全国で初めてオープンデータへ向けた取り組みを開始。2012年1月、第1号として公園にあるトイレの位置情報を公開しました。
 鯖江市では、オープンデータを「データシティ鯖江(XML、RDFによるオープンデータ化の推進)」というウェブサイトで公開しています。現在までに、人口や気温などの統計情報、災害時避難所や市営駐車場などの施設情報、防災マップや古地図などの地図情報、観光情報など39種類のデータが公開されています。これらは、市のデータであるとの表示を条件に、商用利用や改変も自由にできます。
 活用事例は、コミュニティーバスの走行位置が数秒間隔で更新されるアプリや、現在地から一番近いトイレを表示するアプリ、災害時避難所へのルートを表示するアプリなど市が把握しているだけでも80のアプリがオープンデータから開発されています。これらも市ホームページ内に一覧がリンクされているので、そこからスマートフォンなどで利用することが可能です。
 鯖江市の取り組みは、国などが産官学共同で設置した団体「オープンデータ流通推進コンソーシアム」から、最優秀賞の表彰を受けるなど高く評価されており、実際に開発されたアプリを利用した人からは「便利だ」との声も寄せられていいます。
参考:データシティ鯖江(XML、RDFによるオープンデータ化の推進)

現場の担当課には根強い抵抗感も
 一方で、各データを所管する現場の担当課には、データの正確さや責任の所在といった不安から、根強い抵抗感もあるのが現実です。「使われ方が分からないのでは、責任が持てない」と、公開を渋るケースもあるようです。消火栓の位置情報を公開する際には、担当課が10カ月かけて約3500カ所の消火栓を再点検しました。
 市は今後、市民や民間企業などの提案を基に、有効活用できそうなデータから優先的に公開を進めていく方針です。市情報総括監の牧田泰一さんは、「まだ市民に便利さが十分伝わっておらず、職員の意識も低い。優秀なアプリの開発もこれから。職員への研修を行い、目に見える(公開)基準を設けて、身近なモノからデータ公開を進めたい」と話しています。(コメントは1月23日付け公明新聞の記事より引用)