1月30日、総務省は平成25年(2013年)の人口移動報告を公表しました。これによると市町村別の転出者が転入者を上回る「転出超過」は、神奈川県の横須賀市が前年比599人増の1772人に上り、全国市町村で最も多くなりました。ワースト2は茨城県の日立市。日立市の転出超過数は1485人で、12年より311増えました。ワースト3は広島県の呉市で、1373人の減少でした。
井手よしひろ県議はこの3つの自治体に注目し、3月定例県議会を前に緊急の現地調査を行うことにしました。まず、2月11日、12日の横須賀市を訪れ、横須賀市政策推進部長・上条浩氏、横須賀市議会・板橋衛議長から、詳細なご説明をいただきました。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただき心から感謝申し上げます。
横須賀市では、現在「都市イメージ創造発信アクションプラン」の策定を進めています。この中では、人口減少という厳しい現状の中、正確な分析と、明確な戦略性を立てて、「横須賀市が、市内外の結婚・子育て世代から”住むまち”として選ばれるために取り組むべき新たの方針と、その具体策を明らかにしていく」と明記しています。
雇用の減少、若い世代が働く場がない
横須賀市では、マルハニチロ、関東自動車、日産など大手製造業が移転し、大きな人口流失が起こりました。しかし、今回の大幅な人口流出は、大きな企業が移転したことに直接的な因果関係はありません。しかし、人口の社会減が働く場所の有無と大きな関係があることは自明であり、市町村毎の雇用統計を観てみると、その結果は明確に表れています。昨年12月の新規求人倍率は、横浜2.92、川崎1.67、相模原1.26と神奈川内では軒並み1.0を大きく超えています。つまり求職者より、求人数の方が遙かに多いという結果です。しかし、横須賀は0.78と唯一、神奈川県で1.0を下回っているのです。同じく、有効求人倍率でも、神奈川県が0.78で、横浜が1.55、川崎が0.93の中で、横須賀は何と0.44と0.5を下回っているのです。
雇用統計をみても、職を求めて横須賀から周辺の横浜、川崎などに人口が流れたということになります。
とりわけ若年層20代〜30代の若者の働く場が、横須賀ではなくなっていることが要因です。
井手よしひろ県議はこの3つの自治体に注目し、3月定例県議会を前に緊急の現地調査を行うことにしました。まず、2月11日、12日の横須賀市を訪れ、横須賀市政策推進部長・上条浩氏、横須賀市議会・板橋衛議長から、詳細なご説明をいただきました。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただき心から感謝申し上げます。
横須賀市では、現在「都市イメージ創造発信アクションプラン」の策定を進めています。この中では、人口減少という厳しい現状の中、正確な分析と、明確な戦略性を立てて、「横須賀市が、市内外の結婚・子育て世代から”住むまち”として選ばれるために取り組むべき新たの方針と、その具体策を明らかにしていく」と明記しています。
雇用の減少、若い世代が働く場がない
横須賀市では、マルハニチロ、関東自動車、日産など大手製造業が移転し、大きな人口流失が起こりました。しかし、今回の大幅な人口流出は、大きな企業が移転したことに直接的な因果関係はありません。しかし、人口の社会減が働く場所の有無と大きな関係があることは自明であり、市町村毎の雇用統計を観てみると、その結果は明確に表れています。昨年12月の新規求人倍率は、横浜2.92、川崎1.67、相模原1.26と神奈川内では軒並み1.0を大きく超えています。つまり求職者より、求人数の方が遙かに多いという結果です。しかし、横須賀は0.78と唯一、神奈川県で1.0を下回っているのです。同じく、有効求人倍率でも、神奈川県が0.78で、横浜が1.55、川崎が0.93の中で、横須賀は何と0.44と0.5を下回っているのです。
雇用統計をみても、職を求めて横須賀から周辺の横浜、川崎などに人口が流れたということになります。
とりわけ若年層20代〜30代の若者の働く場が、横須賀ではなくなっていることが要因です。
ベッドタウンに急速に広まる“逆ドーナッツ化現象”
井手県議は12日の視察で、京浜急行汐入付近の商店街や住宅街を現地調査しました。ここには、丘陵地の斜面に張り付くように家並みが張り付いています。住宅の空き家が目立ち、商店街もシャッター通りと化しています。この地区の空き家率は約2割に上るといわれています。これが、東京駅からわずか1時間余り、京急横須賀中央駅の一つ東京寄りの駅からわずか2〜3分程度の場所の現状でした。
昨年9月18日付けのブルームバーグ(ネット版)で、この状況が紹介されました。ブルームバーグは、“逆ドーナツ化”とこの現象を名付けました。
記事を引用すると、「少子高齢化や新築促進の住宅政策で全国的に家余り現象が進行。さらにバブル崩壊に伴う地価下落で都心により近い地域へ人々が流出し、郊外の宅地では、空き家が一段と目立つようになった。2020年の東京五輪開催が決まり、マンション人気に沸く都心部とは対照的に、郊外には空洞化が忍び寄っている。総務省の調査では08年10月1日現在、全国の空き家率は13.1%と過去最高。石炭産業の衰退とともに財政破たんに陥った北海道夕張市のような例はあるが、富士通総研の上席主任研究員・米山秀隆氏は、地元産業の衰退と関係なく、『今後は普通にゴーストタウン化する町が増える』と警告。特区構想などで企業や人の都心集積を進めるアベノミクスがこうした傾向を加速させる可能性もあると指摘する」
「横須賀市のような郊外のベッドタウンは高度成長期に大都市圏への人口流入の受け皿として宅地が造成されたが、中でもニュータウンと呼ばれる大規模団地について、国土交通白書は『高齢化と子ども世代の流出で人口が急減した』と分析。大阪・吹田市の資料では、千里ニュータウンの人口はピーク時の75年から2010年までに31%減少した。今後は郊外にとどまらず、各地に空き家地域が拡大する可能性がある。少子高齢化に伴う人口減少が全国的に進行しているからだ。国土交通省の資料によると、日本の人口は05年から減少、核家族化で増加している世帯数も15年を境に減少する見込み。少子高齢化は今後加速し、50年までに居住地域の2割がゴーストタウン化する見通しという」
人口減少抑止へ、横須賀市の挑戦
横須賀市はYRP(横須賀リサーチパーク)等を整備し積極的な企業誘致策を展開しています。しかし、産業構造が重厚長大からソフト産業化している現実から、たとえ新規誘致が成功したとしても、それによって大きく雇用が増えることにはなりません。上条政策推進部長は「新規企業の誘致が成功し、かつ雇用が増えると言うことは、宝くじを当てるより難しいと覚悟しています」と語っています。
横須賀市では、京急・横浜中央駅前のエリアの大規模な再生アクションプランを進めています。この地区は耐震設計基準制定前の築35年以上の高級建築が多く、大型商業施設が閉店するなどまちの賑わいが低下しています。横浜では駅前の大規模な再開発が行われており、このままでは消費流出が進むことは充分に考えられます。
そこで、横須賀市は「横須賀中央エリア再生促進アクションプラン」を策定しました。これは、マンションや商業施設、ホテルなどを民間事業者が建設する場合、特別減税(敷地面積1000m2以上の建物の場合、5年間にわたり固定資産税・都市計画税を90%減税)や大胆な助成制度(商業施設は10m2あたり20万円の奨励金、ホテルは宿泊客数増加分1人当たり30万円の奨励金)で、地区内への投資を誘導しようとするものです。
すでに27年秋の完成を目指して、新たなランドマークとなる38階の高層マンション「ザ・タワー横須賀中央」の建設が進んでいます。その他にも再開発事業が2件、その他の建て替え事業が3〜5件進行中です。これによって供給される新たなマンションは700戸以上と見込まれています。
「都市イメージ創造発信アクションプラン」の意味
中心市街地に高層マンションが進出すると、そこに住む人の割合は、横須賀市の場合、市内が6割〜7割。市外が4割〜3割という比率になるといわれています。つまり、放っておけば横須賀市の人口増にはあまり効果が無く、かえって市内周辺部の空洞化を促進してしまうという皮肉な結果になります。ここで重要になるのが、先に述べた「都市イメージ創造発信アクションプラン」なのです。
横須賀市に住んでもらいたい人たちを30代から40代の新築を希望すると設定し、京浜急行沿線や相鉄線沿線に地域を特定し、集中的なPR活動、イメージアップ活動を5年間にわたり実施しようという野心的なプログラムです。
この世代にアピールできるよう子育てや教育環境の充実を行い、競争他地域との差別化を図ることも計画しています。具体的には、1.乳幼児のいる家庭への保健師・助産師の全戸訪問、2.不育治療に対する支援、3.保育所の待機児童解消、4.学力向上放課後教室、5.市立学校全普通教室へのエアコン設置、6.全学校へのネイティブスピーカー配置、7.キャリア教育の推進、8.都市公園の整備などです。
井手県議は12日の視察で、京浜急行汐入付近の商店街や住宅街を現地調査しました。ここには、丘陵地の斜面に張り付くように家並みが張り付いています。住宅の空き家が目立ち、商店街もシャッター通りと化しています。この地区の空き家率は約2割に上るといわれています。これが、東京駅からわずか1時間余り、京急横須賀中央駅の一つ東京寄りの駅からわずか2〜3分程度の場所の現状でした。
昨年9月18日付けのブルームバーグ(ネット版)で、この状況が紹介されました。ブルームバーグは、“逆ドーナツ化”とこの現象を名付けました。
記事を引用すると、「少子高齢化や新築促進の住宅政策で全国的に家余り現象が進行。さらにバブル崩壊に伴う地価下落で都心により近い地域へ人々が流出し、郊外の宅地では、空き家が一段と目立つようになった。2020年の東京五輪開催が決まり、マンション人気に沸く都心部とは対照的に、郊外には空洞化が忍び寄っている。総務省の調査では08年10月1日現在、全国の空き家率は13.1%と過去最高。石炭産業の衰退とともに財政破たんに陥った北海道夕張市のような例はあるが、富士通総研の上席主任研究員・米山秀隆氏は、地元産業の衰退と関係なく、『今後は普通にゴーストタウン化する町が増える』と警告。特区構想などで企業や人の都心集積を進めるアベノミクスがこうした傾向を加速させる可能性もあると指摘する」
「横須賀市のような郊外のベッドタウンは高度成長期に大都市圏への人口流入の受け皿として宅地が造成されたが、中でもニュータウンと呼ばれる大規模団地について、国土交通白書は『高齢化と子ども世代の流出で人口が急減した』と分析。大阪・吹田市の資料では、千里ニュータウンの人口はピーク時の75年から2010年までに31%減少した。今後は郊外にとどまらず、各地に空き家地域が拡大する可能性がある。少子高齢化に伴う人口減少が全国的に進行しているからだ。国土交通省の資料によると、日本の人口は05年から減少、核家族化で増加している世帯数も15年を境に減少する見込み。少子高齢化は今後加速し、50年までに居住地域の2割がゴーストタウン化する見通しという」
人口減少抑止へ、横須賀市の挑戦
横須賀市はYRP(横須賀リサーチパーク)等を整備し積極的な企業誘致策を展開しています。しかし、産業構造が重厚長大からソフト産業化している現実から、たとえ新規誘致が成功したとしても、それによって大きく雇用が増えることにはなりません。上条政策推進部長は「新規企業の誘致が成功し、かつ雇用が増えると言うことは、宝くじを当てるより難しいと覚悟しています」と語っています。
横須賀市では、京急・横浜中央駅前のエリアの大規模な再生アクションプランを進めています。この地区は耐震設計基準制定前の築35年以上の高級建築が多く、大型商業施設が閉店するなどまちの賑わいが低下しています。横浜では駅前の大規模な再開発が行われており、このままでは消費流出が進むことは充分に考えられます。
そこで、横須賀市は「横須賀中央エリア再生促進アクションプラン」を策定しました。これは、マンションや商業施設、ホテルなどを民間事業者が建設する場合、特別減税(敷地面積1000m2以上の建物の場合、5年間にわたり固定資産税・都市計画税を90%減税)や大胆な助成制度(商業施設は10m2あたり20万円の奨励金、ホテルは宿泊客数増加分1人当たり30万円の奨励金)で、地区内への投資を誘導しようとするものです。
すでに27年秋の完成を目指して、新たなランドマークとなる38階の高層マンション「ザ・タワー横須賀中央」の建設が進んでいます。その他にも再開発事業が2件、その他の建て替え事業が3〜5件進行中です。これによって供給される新たなマンションは700戸以上と見込まれています。
「都市イメージ創造発信アクションプラン」の意味
中心市街地に高層マンションが進出すると、そこに住む人の割合は、横須賀市の場合、市内が6割〜7割。市外が4割〜3割という比率になるといわれています。つまり、放っておけば横須賀市の人口増にはあまり効果が無く、かえって市内周辺部の空洞化を促進してしまうという皮肉な結果になります。ここで重要になるのが、先に述べた「都市イメージ創造発信アクションプラン」なのです。
横須賀市に住んでもらいたい人たちを30代から40代の新築を希望すると設定し、京浜急行沿線や相鉄線沿線に地域を特定し、集中的なPR活動、イメージアップ活動を5年間にわたり実施しようという野心的なプログラムです。
この世代にアピールできるよう子育てや教育環境の充実を行い、競争他地域との差別化を図ることも計画しています。具体的には、1.乳幼児のいる家庭への保健師・助産師の全戸訪問、2.不育治療に対する支援、3.保育所の待機児童解消、4.学力向上放課後教室、5.市立学校全普通教室へのエアコン設置、6.全学校へのネイティブスピーカー配置、7.キャリア教育の推進、8.都市公園の整備などです。