“攻めの農林水産業”今年を実行元年に、食文化振興とセットで需要開拓
茨城のいちごをタイで販売するっプロジェクト 「和食」が昨年末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に正式登録されました。無形文化遺産は、伝統工芸技術など“形のない文化”で、土地の歴史や生活風習と密接に関わるものです。日本では、能楽や歌舞伎、アイヌ古式舞踊(北海道)が登録。今回は、和食全体にまつわる日本の伝統的な食文化が評価されました。海外でもフランスの美食学や、地中海料理が登録されており、各地で食文化振興の重要なきっかけになっています。
 食文化の振興と連動し、国産農林水産物の付加価値を向上させたり、国内外で需要を拡大する取り組みは、日本にとって大きなチャンスです。
 公明党は“攻めの農林水産業”を推進するための戦略の必要性を一貫して主張。こうした動きを受け、政府は今年から「農林水産業・地域の活力創造プラン」を実行します。
 例えば、2020年までに国産の農林水産物や食品の輸出額を1兆円に増やします。14年度予算案では「日本食・食文化の魅力発信と輸出の促進」に約190億円を計上。料理学校や海外の給食事業者と連携し、新たな和食メニューを開発したり、レストランや病院での食事などを通じ、日本食の良さをアピールします。
 国内の子どもたちに、日本食の素晴らしさを伝えることも重要です。学校給食での国産品の使用割合を15年度には80%まで引き上げます。
 生産者が加工や流通まで仕事の裾野を広げ、所得を増やすことも重要。医療や福祉など異業種連携やブランド化で「6次産業化」を促進し、20年までに10兆円の新市場構築をめざします。
 いばらき農業にとっても、こうした追い風を積極的に活用すべきです。特に品質の良い茨城産の農産物の海外輸出は大いに期待できます。茨城には、いちご、トマト、メロン、なし、りんごなど一級の果物があります。日本米もその価格のハンディを乗り越える素晴らしい品質があります。
 茨城の農産物も過去には輸出の実績があります。しかし、それは海外でのイベント等に出品するための一過性のものでした。農業者が自らの手で農産物を輸出し、海外の消費者に直接届ける取り組みを県が指導して行うべきです。
ブランド力生かす:いちご「あまおう」を戦略の目玉に・福岡県の事例
 温暖な気候と肥沃な土地に恵まれた福岡県筑後市。この地で38年間、農業を営んでいる下川渡さん(65)のビニールハウスを訪れると、室内は青々とした葉が一面に広がり、その葉の下から大粒の真っ赤なイチゴが顔をのぞかせていました。
 下川さんが丹精込めて栽培しているこのイチゴは、高級ブランドとして知られる「あまおう」。県は、県産農産物の中でも特に高いブランド力を誇るあまおうを販売戦略の目玉に位置付け、香港や台湾、タイなどアジア市場を中心に輸出拡大に力を入れています。
 輸出事業の強化のため、県は2009年に「県産品輸出促進協議会」を設置。海外のバイヤー(買い手)を招いて産地の視察や商談を手掛けたり、海外で販売促進フェアを開催するなど、販路開拓を進めてきました。
 こうした取り組みが実を結び、あまおうの12年度輸出量は74トン(前年度比10トン増)、県農産物の12年度輸出額も推計で11・2億円(同1・5億円増)と、順調に伸びています。
 県園芸振興課輸出促進室の釜瀬健一・企画主幹は「海外のニーズ(要望)に応え、さらなる輸出拡大に努める」と意欲を燃やしています。
 福岡産あまおうは、タイのバンコク市内で1パック2500円程度で売られています。しかし、この超高級品市場で販売量を拡大するには限界があります。あまおうに匹敵する高品質の茨城産いちごを1500円程度で販売できれば、タイのいちご市場を席巻できるのではないでしょうか。