井手よしひろ県議は、3月3日に行なわれた県議会代表質問で、県北地域の振興策を取り上げました。特にその中で、県北の拠点都市である日立市の人口減少対策に焦点をあてて質問しました。
人口の社会減ワースト10
 日立市の人口減は、特に社会減において顕著となっています。2013年の人口社減会のワースト2となってしまいました。最も社会減が多かったのが神奈川県横須賀市、ワースト2が茨城県日立市、ワースト3が広島県呉市となっています。ワースト10までを一覧表にまとめ、個人的にその内容を分析してみました。
日立市の人口の推移
 実は、日立市の社会減は今に始まったものではありません。表2をご覧いただければ一目瞭然ですが、すでに平成12年には、社会減は1712人となっており、製造業海外移転の直撃を受けていることが、よく判ります。ただ平成16年までは自然増があったため、全体の人口減にブレーキがかけられていました。しかし、自然減も700人に迫る勢いで、人口減は2000人を超える状況となっています。

 百聞は一見にしかずとの諺がありますが、各地域での人口減対を、実際にその地を訪れて調査してこようと、神奈川県横須市と広島県呉市を現地調査しました。
 人口社会減が著しい都市はいくつかの共通性がある所に気付きます。
 現地調査の結果も踏まえ、人口社会減ワースト3の3都市の相通じる状況を、3点具体的に指摘してみたいと思います。
  1. 重厚長大の製造業が基幹産業であること。
    日立市は日立製作所、横須賀市は日産や富士重工などの自動車産業、呉市はIHIなどの造船業が集積していました。その反面、産業のソフトウェア化や精密機械やなどの多様な産業発展には取り残された感があります。
  2. 海と山にはさまれ、住宅用土地が絶対的に不足していること。
    現地調査の際に撮影した写真を議会報告会で参加者に見ていただいた所、日立市、横須賀市、呉市とも、急傾斜や地域に住宅がへばりつくように林立する様子が3市とも非常に良く似ていることに驚かれていました。
  3. 商業の衰退が著しいこと。
    広い土地が得られないことなどから、大規模なショッピングセンターの立地がみられません。従来からあった大型店舗の流出も顕著で、日立市では平成17年にイオン系の地元百貨店「ボンベルタ伊勢甚」が撤退しました。呉市では年間100億円近い売上を上げていた「呉そごう」が昨年閉店しました。商業の衰退は、特に若い年齢層の流出という結果を招いていることが予想されます。

 さて、こうした共通する状況もありますが他の2都市に比べて、日立市の取組みが、やや遅れている点が「福祉サービスでの近隣市町村との差別化」です。
 横須賀市の担当者が「企業誘致は宝くじを買うようなもの。しっかりと誘致の努力を積み重ねる必要はあるが、実際に多くの雇用をもたらす企業が立地してくれる可能性は高くない」との言葉が印象的でした。それにたいして、福祉や教育環境、都市環境などで近隣の市町村と差別化することは、確実に人を呼びこむマグネットになります。
 こうした観点からみると、現在の日立市の福祉の充実度は、近機の市村と比べて、むしろ見劣りがします。例えば、子ども医療費の助成制度を見てみると、日立市は小学校3年生までの対象となっていますが、隣の東海村、常陸太田市では中学校卒業まで対象を拡大しています。これでは、子育て世代の人口流失を止めることできません。