プラムポッカウイルスの感染 果樹の疫病であるプラムポックスウイルス(PPV)のウメへの感染が全国的に拡大しています。国内で感染が初めて確認された東京都青梅市では、ウメの名所「青梅市梅の公園」のウメを全て伐採することを決めています。被害拡大の主な原因は、感染した苗木や接ぎ木による移動です。苗木の徹底管理や媒介する昆虫の駆除に取り組むんでいますが、潜伏期間3年と長いため、早期発見しづらいなど、有効な対応策は伐採しかないという厳しい状況です。
 青梅の梅林は、120種1739本のウメを目当てに、約10万人が観梅期に来園する梅の名所。2010年から感染したウメの処分が始まり、恒例の梅まつりが3月30日で終了した後に残りの1266本も全伐採されることになりました。元の姿に戻るまでは最短でも10年間以上必要です。
 PPVの国内初感染は2009年3月、青梅市の農家からの通報で確認されました。農林水産省と東京都は2012年度までに、植物防疫法に基づき青梅市内で約2万6000本を処分しました。
 関西でもPPVは猛威を振るっています。兵庫県伊丹市では2012年に立ち木約1700本の感染を確認し、約24万本を処分しまし。しかし、翌13年にも、約9800本の感染が確認されました。

茨城県内では“水戸・平成梅林”のウメを全て伐採
ウメ輪紋ウイルス対応 一方、日本三公園のひとつ、水戸偕楽園でも隣接する平成梅林でPPVの感染が確認されました。水戸市では、借楽園公園を愛する市民の会が「市民の力で失われつつある梅品種の保存育成、偕楽園公園を日本一の梅園に」との主旨で、偕楽園拡張部に、ウメの圃場の整備を要望しました。2006年には、ウメ品種の収集や若木の育成などを開始。2007年、偕楽園拡張部に「平成梅林」が整備され、3回植樹がおこなわれました。
 2009年2月、水戸市内の造園業者が、青梅市内の生産園から苗木を譲り受け、平成梅林に接ぎ木ウメのうち3本からPPV感染が確認されました。平成梅林では921本のウメが植えられましたが、その後15本に感染が確認され、2013年度まで感染拡大のため全て伐採され、平成梅林は更地にされました。
 現在まで、ほかの県内のウメ生産園では、PPVの発生は認められていません。
プラムポックスウイルス(ウメ輪紋ウイルス・plum pox virus)とは
 モモ、スモモなどのPrunus属の植物に広く感染する重要な植物ウイルスであり、1915年にブルガリアで発見されて以来、欧州、アジア、北米、南米等でも確認されている。これまでウメへの自然感染の報告はなかったが、2009年に東京都青梅市で初めて確認された。

【感染経路】
 アブラムシにより媒介されるほか、穂木や苗を経由して感染する。生果実は感染経路にはならないとされている。また、感染から発症まで3年間程度の潜伏期間がある。

【症状・被害】
 モモやスモモでは、葉に退緑斑点や輪紋が生じるほか、果実の表面に斑紋が現れ、商品価値が失われたり、成熟前の落果により減収するとの報告がある。また、PPVはヒトや動物に感染しないため、罹病果実を食べても健康に影響はない。
 ウメでは、ふ葉に退緑斑点や輪紋が生じるほか、花弁にブレキング症状(斑入り症状)が現れることもある。なお、これまでのところ果実への顕著な症状は見られていない。

【防除方法】
アブラムシの防除の徹底、感染樹の除去、無病健全な苗の使用。

【宿主植物】
サクラ節を除くPrunus属の果樹(モモ、スモモ、ネクタリン、アンズ、オウトウなど)、セイヨウマユミ、ナガバクコ、ヨウシュイボタなど