東海第2原発から30キロ圏内の市町村 4月17日、東海第2発電所の安全審査申請に関して、日本原子力発電(日本原電)と周辺自治体の首長との会合が開かれました。日本原電側は申請を容認するよう求めたものの、首長からは「一般市民などに対しても申請内容を説明することが必要だ」とする意見が大多数を占め、申請を容認は持ち越されました。
 日本原電は3月、東海第二原発の安全審査の申請にあたって二つの自治体の懇談会と覚書を締結しています。東海村と周辺5市でつくる原子力所在地首長懇談会(座長:山田修東海村長、ひたちなか市、水戸市、日立市、那珂市、常陸太田市)とは、申請に当たって事前に理解を得ること。県央地区首長懇談会(座長:高橋靖水戸市長、笠間市、ひたちなか市、那珂市、小美玉市、茨城町、大洗町、城里町、東海村)とは、事前に申請の内容を説明することを約束しています。さらに、安全審査を容認したことは、再稼働を認めることにはならないことも確認しています。
 17日の会合はこの覚書に基づき、原電側の説明が一応終わったことを受けて開催されました。会合は非公開で行われましたが、NHKなどの報道によると各首長から、「申請内容は市町村の担当者には説明されているが、日本原電が、議員や一般市民への公表を禁止している」「申請内容の概要だけでも市民などに説明することが必要だ」などといった意見が相次いだということです。
 このため11の市町村長らは会合のあと、日本原電の山本直人常務に対して、申請内容を市民などにも説明することを口頭で申し入れたうえで、安全審査の申請容認は先送りとしたことを伝えました。
 事業者の日本原電の山本直人常務は「市町村長からはきちんと情報提供することが大事だとご指摘いただいた。今後の信頼関係を築く活動の一つと受け止め、要望を受けた住民への情報提供についても外に出せる情報を整理して出してきたい」と語りました。
 当初、日本原電は、早期の再稼働に向けて東海第2発電所の新規制基準に基づいた審査を、4月中にも国の原子力規制委員会へ申請する意向でした。この思いはしばらく空転しそうです。

なぜ、日本原電は東海第2原発の再稼働を急ぐのか?
日本原電の運営する3つの原発
 なぜ、日本原電は老朽化し、日本で一番30キロ圏内の人口が多い、リスクの高い東海第2発電所の再稼働に強い意欲を燃やすのでしょうか。それは、正に、存亡の危機に曝されているからです。
 昨年12月、原子力規制委員会が日本原電の敦賀原子力発電所2号機直下の破砕帯(断層)について「活断層の可能性が高い」との見解を示したことで、敦賀原発の再稼動が極めて難しくなりました。日本原電側が「活断層ではない」との明確な証拠を示さない限り、2号機は国内で初めて安全面を理由に廃炉になる可能性が高くなっています。
 保有する原発3基のうち敦賀1号機と2号機が廃炉になれば、新設計画がある敦賀3号機、4号機の建設も絶望的です。もし、東日本大震災による被害で停止している東海第2発電所が再稼働できなければ、実質的に動かせる原発がゼロになってしまいます。
 経済産業省は、日本原電が平成25年度中に全3基を廃炉にした場合、資産の目減りや廃炉費用で2559億円の損失が発生、933億円の債務超過に転落すると試算しています。そうなれば金融機関から新たな借り入れができなくなり、経営は破綻します。
 日本原電が破綻すれば、債務保証している電力各社は債務の肩代りを求められることになります。電力各社の経営が打撃を受けるのは必至で、原電破綻のドミノ現象が起こる懸念があります。
 日本原電は1957年11月、電力会社9社が80%、電源開発20%の出資で設立されました。現在(2012年3月末時点)の資本金は1200億円。資本金の比率は、電力会社9社が合計で85.04%(東京電力28.23%、関西電力18.54%、中部電力15.12%、北陸電力13.05%、東北電力6.12%、九州電力1.49%、中国電力1.25%、北海道電力0.63%、四国電力0.61%)。2004年に民営化された電源開発(JーPOWER)が5.37%。一般株主は142人。日立製作所0.92%、みずほコーポレート銀行0.71%、三菱重工業0.64%などとなっています。
 東海第2発電所の再稼働は、100万県民の安全の確保という原点を離れ、日本の電気事業者の経営をまもるという視点で動いています。