4月18日付け茨城新聞 4月17日行われた東海第2原発周辺市町村長と日本原電との会合で、首長側は申請を容認する結論を先送りしました。
 わずか1カ月足らずの説明で、申請を行おうとする原電側の思惑は端坐することになりました。
 この一連の経緯の中で一番の問題は、原電側が申請の内容説明を自治体の側に限定し、議会や市民、マスコミに情報を提供しようとしなかったことです。現に、3回開かれた自治体側の会合も全て非公開でした。
 こうした住民不在の考え方に、市町村長も納得できるはずはありません。この時点で容認できるはずがありません。
 今後の対応として、原電に望むことは3点です。1.各市町村議会、県議会で安全震災申請の具体的内容を報告し、質疑応答の機会を設けること。2.各市町村で、住民対象の説明会を開催すること。3.議会と市民への説明は、当然、マスコミなどにフルオープンすること。
周辺首長、判断見送り 東海第2安全審査申請、住民説明が必要
茨城新聞(2014/4/18)
 東海第2原発(東海村白方)の再稼働をめぐる国への安全審査申請に向け、日本原子力発電(原電)は17日、東海村や水戸市など立地・周辺11市町村の首長に対する説明会を同市内で開いた。首長側は「住民に対する説明が必要」として申請を容認するかどうかの判断を見送り、住民への情報提供などを柱とする五つの申請条件を原電に求めた。
 原電に対し、首長側は(1)安全審査は再稼働に直結しない(2)安全協定の見直しを申請後、速やかに行う(3)申請内容について住民に情報提供する(4)原子力規制庁の審査状況を逐一報告する(5)使用済み核燃料などの監視体制の強化ーの5項目を申請の条件として提示、原電に回答を求めた。
 説明会終了後、水戸市の高橋靖市長は「申請内容の説明を受けたのは首長と事務方だけで、議会や住民は何も知らない。あらゆる媒体を使い情報提供してほしい」と指摘した。
 東海村の山田修村長は「申請を否定するものではない」とした上で、「首長に説明したからそれで良いとすり替えられてしまうのは不本意」と住民への説明の必要性を強調した。
 原電はこれまで、申請内容に関し「中身が確定した段階で公表したい」として、申請前の公開を一貫して拒否。この日の首長側の要求は、情報開示に消極的な原電の姿勢を強く問題視した格好だ。
 申請を容認する条件について、高橋市長は「(要求に対し)原電が納得できる回答と住民に開示できる資料を持ってきた時点で了承する」と述べた。
 原電の山本直人・茨城総合事務所長は「開示できる情報を整理し、情報提供の内容と手法を早急に検討する」とし、申請時期をめぐっては「(各自治体の)理解を得た上でのこと。とやかく言えることではない」と言及を避けた。
 説明会には、原子力所在地域首長懇談会(座長・山田村長)と県央地域首長懇話会(座長・高橋市長)を構成する11市町村のうち東海、水戸、日立、ひたちなか、那珂、笠間、小美玉、茨城、大洗、城里の10市町村長が出席。常陸太田市は副市長が参加した。
 原電は二つの首長会との間で3月、安全審査申請前に各市町村に内容を説明し、理解を得るなどとする覚書を締結した。


4月18日付け朝日新聞茨城版首長側、態度を保留 東海第二原発の安全審査申請
朝日新聞茨城版(2014/4/18)
 東海第二原子力発電所(東海村)の安全審査申請をめぐり、日本原子力発電による関係市町村の首長への説明と、首長らの意見を集約する会合が17日、水戸市内であった。首長側は、原電側の情報開示が不十分なことを理由に申請への態度を保留とし、同意を先送りした。
 説明会には原子力所在地域首長懇談会(座長=山田修・東海村長)と県央地域首長懇話会(座長=高橋靖・水戸市長)に加わる11市町村の首長らが出席。原電からは山本直人・茨城総合事務所長ら事務所幹部が出席し、非公開で進められた。
 説明会と意見集約の終了後、両座長が取材に応じ、住民や議会への情報提供、情報開示が不十分なことを問題視する声が多く、申請への態度を保留したことを明らかにした。そのうえで申請に同意する前提として(1)申請は再稼働に直結しない(2)安全協定の見直しを早急にする(3)住民への情報提供(4)原子力規制委員会の審査状況の情報提供(5)使用済み燃料を強固な容器である「乾式キャスク」へ早期に移行する――の5項目を口頭で申し入れたという。
 山田村長は「説明を受けたが、(資料が非公開のため)住民に説明できない。それなら原電に説明してもらわなければ困るというのが多くの首長の意見。原電がどういう対応でそれに答えるか。その答えが出るまでは結論が出せないということで保留にした」と説明した。
 高橋市長は「事務方と首長が聞いたが、住民、議会は何も知らない状況。開示できる一番高いレベルで、あらゆる媒体を使って情報提供してもらいたい。私たちだけに説明をしても住民の不安は払拭(ふっしょく)できない。申請後ではなく申請前に住民に情報提供するのが一番大切なこと」と話した。

原電の説明手法、粗さ露呈の格好
 申請内容の説明を周辺自治体に絞り、住民や議会への説明を拒んできた原電にとっては、その説明手法の粗さが露呈したかたちだ。
 原電がこれまで公開を拒んできたのは、「事前に説明した内容が変われば、原電の申請書の作り方に懐疑を持たれるかもしない」(山本所長)との懸念があったからだという。
 ただ、安全審査の申請は、原発を再稼働する際の手続きの一つでもある。新しい国のエネルギー基本計画では、申請を受けた原子力規制委員会が安全と判断すれば再稼働を進める、と明記されており、申請そのものへの住民の関心は高い。
 山本所長は、原発事故以降の住民意識の変化を感じていたとしながら、「国の審査を受けることが住民に安全を確認していただく一つのステップだ」と強調した。
 原電は住民向けの情報公開のあり方について、「内容とやり方を早急に検討したい」としているものの、原発から30キロ圏内の緊急時防護措置準備区域(UPZ)には100万人近い住民がいる。首長の理解を得て申請しようとしていた原電にとって、住民への説明方法を含め、新たな課題が突きつけられた。(本間久志、村田悟)

反原発派は拍手と歓声
 会場の県市町村会館前に集まった反原発の市民ら約70人は、首長側が原電の安全審査の申請にゴーサインを出さなかったことを知ると拍手とともに歓声をあげた。
 首長側が原電に住民らへの情報公開を要求したことについて、東海第二原発の再稼働阻止を訴える東海村の女性らのグループ「リリウムの会」メンバー(43)は「私たちが強く求めてきたもので、とてもうれしい。形だけの公開にならないよう訴えていきたい」と話した。村内の男性(76)は「とりあえずは良かった。ただ、いずれ原電は申請する。廃炉を勝ち取るため、しっかりとした闘いを続けていく」と気を引き締めた。