子どもを産む若い女性の人口減に注目
日本創世会議の人口予測 5月8日、元総務相で東大の増田寛也客員教授ら民間の有識者で作る「日本創成会議」人口分科会は、2040年の国内人口を独自に推計した結果、全国で896の市区町村が人口減少による消滅の可能性がある「消滅可能性都市」だと発表しました。
 人口推計は国立研究所がデータを発表していますが、日本創成会議は、地方から大都市に移る人の動きは収まらないとしてデータを再計算。特に子どもを産む20代と30代の女性の人口が2010年時点から半減する自治体を「消滅可能性都市」に分類しました。
 その結果、全国で1800ある自治体のうち、2040年にはほぼ半数の896の自治体が「消滅可能性都市」で、特に青森、岩手、秋田、山形、島根の5つの県は自治体の8割以上が「消滅可能性都市」だとしています。
 日本創成会議では、現状1.4人の出生率を2025年に1.8人とすること、また大都市、特に東京への一極集中に歯止めをかけることなどを柱とした政策提言も合わせて発表しました。
 茨城県の分析結果を見てみると、大子町、河内町、五霞町の3町が20代と30代の女性の人口が半減し、人口が1万人以下になると推定。その他、城里町、常陸太田市、稲敷市、常陸大宮市、高萩市、美浦村、桜川市、行方市、北茨城市、石岡市、日立市、筑西市、潮来市、笠間市の14市町が若い女性が5割以上減少するとしました。
 人口が増えると試算されているつくば市や牛久市、守谷市、東海村などでも若い女性の数は減少するとしました。
 茨城県内で一番減少が多いと指摘された大子町は、2010年の人口2万73人が、社人研の推計によると2040年には1万327人に減少するとされていますが、日本創成会議は9503人に減少するとしました。特に20代30代の若い女性は1335人から366人に、72.6%少なくなると危機的な状況を想定しています。
 日立市は、19万3129人の総人口が、13万2449人に減少し、若い女性は9628人と53%も少なくなるとしました。この減少率は、人口10万人以上の茨城県内の市部では最大となります。

 日本創世会議が提案した「ストップ少子化・地方元気戦略」では、いくつかの注目すべき提言がなされています。以下、その主なものを列挙してみます。

  • 地方から大都市への『人の流れ』を変えるためには、地方において人口流出を食い止める「ダム機能」を今一度構築し直す必要がある。それに加えて、近年の若者(特に女性)の動向を見ると、地方から大都市への「流出を食い止める」だけでなく、一旦大都市に出た若者を地方に「呼び込む・呼び戻す」機能の強化を図ることが重要になってきている。地方の持続可能性は、「若者にとって、魅力のある地域かどうか」にかかっていると言えよう。すなわち、『若者に魅力のある地域拠点都市』を中核とした『新たな集積構造』の構築が目指すべき基本方向となる。

  • 男女の出会い結婚する機会づくりは、地方自治体や企業で自主的に取り組まれており、一定の実績を上げている。近年の人口動向では、若年女性が都市部に集中し、その結果、都市部では女性が男性に比べて多く、逆に地方は男性が多い等、地域によって男女比が不整合となっている状況が見られる。企業でも職種・職場によって男女いずれかに偏っているのが一般的である。このような状況を考慮すると、男女の「出会いと結婚」の機会づくりは、社会的にも存在意義が高まっているといえる。地方自治体等公共機関においても結婚情報や機械提供を行う取り組みを積極的に展開すべきである。

  • 日本の男女は、国際的にみて、妊娠や出産に関する知識水準は低い。「男女とも加齢に伴い、妊娠する能力が減弱し、また、妊娠中や分娩時のリスクや新生児のリスクが増加する」という事実を正確に認識することは、国民が自らのライフプランを考えるうえで、非常に重要なことである。一方、日本では、「晩婚化」とそれに伴う「晩産化」という医学的な憂慮すべき事態が急速に進んでいる。若い男女に対して、対象者の年齢に応じて、妊娠・出産に関する情報の提供と知識の普及・啓発や学校教育の充実を図ることは喫緊の課題である。

  • フィンランド等では、身近な拠点(ヌウボラ)が、ワンストップで妊娠から出産、子育てまで切れ目なく相談に応じ、必要な支援を行う体制が作られている。日本ではこうした取り組みは行われておらず、行政等の窓口や支援体制もバラバラで、各サービス間の情報連携も不十分である。母親が妊娠期から身近な拠点で相談でき、安心して子供を産み育てることま可能となるような、切れ目ないワンストップ相談支援体制を整備すべきである。

  • ひとり親になっても、子育てが続けられるように、また、再び結婚し子供を持つことにチャレンジできるように支援を強化する必要がある。このため、地域において、ひとり親家庭の水に足をして、相談から各種支援まで包括的に提供できる仕組みを構築することが重要である。また、母子家庭に対して行われている様々な支援について必要に応じ、父子家庭にも拡大するよう取り組むことが必要である。

  • 多子世帯、特に第3子以降については、子育て・教育に要する費用が大きな影響を与えている。このために、保育や幼児教育サービスについては、原則として、第2子は負担が半額、第3子以降は無償とするような、経済的支援策を講ずることが重要である。

  • 子供が多い世帯ほど有利となるような、税制・社会保障制度上の措置を検討すべきである。

  • 地方においては、農林水産業を地域産業の柱として位置付け、その立て直しを図る必要がある。農業従事者は長らく減少傾向が続き、年齢も高齢化が進んできた。しかし近年の政策展開によって、若者等が新規就農するケースが増加していることは注目される。フランスでも青年就労交付金が若年農業者の増加に成果を上げており、日本においても、都市に住む若者等による農林水産業への就業を支援していくことが重要である。特に新規就農者は立ち上がり期は得られる農業所得が低く、生活が維持しがたいことから、立ち上がり期の支援の重要性は高い。

参考:日本創世会議のHP