子育て支援や雇用など抜本対策を
イメージ 人口減少社会の一番の問題は、東京一極集中が止まらないことです。ロンドンもパリもニューヨークも、世界の大都市は人口が一定なのに、東京の人口だけが今でも増え続け、その膨張が止まりません。
 しかも、その東京は、各都道府県と比べて、出生率が極端に低く、1.09です(全国は1.41)。つまり、地方の若い人材が、子供を産み育てにくい東京にどんどん流入しており、地方は更に過疎に。東京は、さらに高齢化が加速するという状況。歯止めがかかりっていません。
 地方では、子供がどんどん減って来て、学校統合が繰り返されています。学校の校区が大きくなり、多くの子供たちがスクールバス登校となったせいか、都市部よりも田舎の子の方が、体力が落ちてしまっているとのことです。今、何か手を打たないと、子供達の未来が危ぶまれます。
 先のブログ「茨城県内17自治体が“消滅可能性都市”、日本創成会議が公表」でも触れましたが、民間の有識者らで構成される日本創成会議は、2040年までに全国の約半数(896)の自治体で、出産期にある20歳から39歳の女性が半数以下になるとの推計を発表しました。これらの自治体では、出生率が上がったとしても、若年女性の流出が影響して人口減少が加速し、将来的には消滅の危機にさらされるという警鐘を鳴らしています。自治体の人口は1万人を下回ると、必要な公共サービスの維持が難しくなるからです。
 まず求められているのは、子育てしやすい環境づくりです。子育て環境が充実し、国民の結婚や出産に関する要望や制度が実現した場合、出生率は1.8程度になると試算されています。
 結婚や出産は、あくまでも個人の考えが尊重されるべきものです。その前提に立った上で、子育て世代の育児を阻害する要因を、社会全体で取り除いていく必要があります。
 試算を発表した日本創成会議も、いくつか改善策を提案しています。例えば、従業員が子だくさんの企業には社会保険料負担などを優遇することや、地方から都市部に向かう人の流れを変えるために、中高年の地方への移住を促す住宅政策、税制上の優遇措置などです。個別の政策は、効果や財源の慎重な検討が求められるが、目に見える形で実施されるならば、一定の効果は期待できます。
 自治体にも相応の覚悟と努力が求められます。政策を総動員すれば活路は開けます。実際に、育児支援策を全国屈指の水準に拡充することで、急減する出生率が上昇傾向に転じた自治体もあります。若者の雇用創出、地域の活性化などに粘り強い取り組みを続けなくてはなりません。結婚支援なども、具体的に一歩踏み込んで行うべきでしょう。
 日本創成会議が個別の自治体名に言及してまで消滅の可能性を論じた背景には、人口減少の影響を、地域の現実的な課題として共有してもらう狙いがあったからです。地域社会の未来について、より踏み込んだ議論を進めていきたいと思います。