140616image 子どもを産みやすく、育てやすい環境をつくるために、産後ケア事業などで“切れ目のない”体制をめざす、モデル事業がスタートします。厚生労働省は妊娠から子育て期までを切れ目なく支援する「妊娠・出産包括支援モデル事業」を開始する予定です。
 核家族化が進む中で、妊娠、出産などの悩みを抱えて孤立を深めてしまいがちな妊産婦は少なくありません。
 今でも妊娠、出産、子育ての段階に応じた支援が行われていますが、さまざまな専門機関が担当しているため連携がうまくいかず、必ずしも行き届いた仕組みでない場合もあります。
 昨年8月の社会保障制度改革国民会議の報告書も「妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援が必要」だと明記しており、十分な対応が求められています。
 具体的なモデル事業の特徴の一つは、支援が手薄といわれる産後への取り組みです。
 出産後の女性は心身ともに疲弊し、育児不安から「産後うつ」になる恐れもあります。そこで、モデル事業では、医療機関や助産院などで、出産後の母子の心身のケアや育児指導などを行う「産後ケア事業」を実施します。
 また、自治体の保健師らを「母子保健コーディネーター」として配置。妊産婦のニーズに応じて必要な支援を紹介します。助産師との相談などで、妊産婦の孤立感解消をめざす「産前・産後サポート事業」も行います。
 現在、厚労省によれば30自治体が、地域のニーズに応じた形で取り組む予定です。
 例えば、フィンランドの育児支援の母子相談施設「ネウボラ」という仕組みを取り入れた支援体制を、世田谷区や千葉県浦安市、愛知県高浜市、三重県名張市など7つの市区村で整備中です。「ネウボラ」はフィンランド語で「アドバイスの場」の意味です。全ての子育て家庭に、一人の保健師が妊娠期から就学前まで密に面談し、必要な支援につなげます。妊婦健診や予防接種など、妊産婦とその家族の全ての窓口が一本化され、子育ての拠点となっています。
 高浜市では、妊娠期から継続して見届ける「マイ保健師」を置きます。乳児全戸訪問の後、一歳でバースデー訪問をして、予防接種や養育の状況を確認。市内の産婦人科の空き病床を利用して、不安を抱える母子のデイサービスも行います。
 京都市は、出産から1カ月以内の母子を対象に、医療機関などへの通所や一時宿泊で産後ケアを行う「スマイルママ・ホッと事業」を、7月から立ち上げる予定です。
 千葉県浦安市では、育児相談を担う市独自の「子育てケアマネージャー」が、保健師とともに母子保健の相談に対応することを検討しています。産後ケアは、医療機関での宿泊や、ホテルの空き部屋や保育ルームを通所施設に活用できないか検討しています。
 名張市では看護師などの「チャイルドパートナー」制度を構築しています。チャイルドパートナーが担当となって、母親の配偶者の有無や就労状況などにより、個々のサポートプランを作成。育児不安が募りやすい産後二週間で全戸を訪問し、面談と過去の妊婦健診などから状況を把握します。
 妊産婦のニーズに応じた妊娠・出産の支援を充実させようと、長野県駒ケ根市では産前・産後ケアの実施に向けた取り組みが始まっています。駒ケ根市は市内の産婦人科病院と助産所に産後ケア事業を委託し、7月から出産後の育児不安の軽減や母体管理、育児指導を支援する計画。委託を受ける駒ケ根高原レディスクリニックでは新たに産前・産後ケアセンターを開設する予定で、産後ケアに加え、妊娠前から育児支援に至る包括的なサポートを展開していく方針です。