
日立市では、東日本大震災の影響で使えなくなった庁舎の建て替え計画が、平成29年度に供用開始を目指し、平成25年度から進んでいます。
新庁舎は、日立市出身の女流建築家・妹島和世(せじま・かずよ)氏が代表を務めるSANAA(サナー)が、基本・実施設計を行いました。昨年9月末に策定した基本設計の経緯を踏まえ、防災拠点機能や環境に配慮した新庁舎にする方針で今年9月末までに実施設計を策定することにしています。第1期本体工事は10月に着手し、平成28年9月末に完成の見込みです。総事業費は129億8962万9000千円です。
第1期本体工事は、執務棟と屋内広場の工事発注を予定。事業費削減策として、基本設計では全面ガラス張りだった執務棟の外壁を、実施設計では南北面をセメント壁に見直し、東西面のひさしも外しました。執務棟と連結する屋内広場については、屋根を支える横張をなくし、ガラス張りから鉄板張りに変更し、柱の本数を減らし建設費を10億円以上圧縮しました。
防災拠点機能としては、3日間連続運転が可能なガスタービン発電機、防災設備機器や情報系機器に対応した無停電電源装置などを設置します。また太陽光発電のほか、雨水をトイレの洗浄水として日常的に有効利用し、環境に配慮した施設とします。
執務棟と屋内広場は免震地下1階・地上7階建てで、延べ床面積は約2万7千平方メートル。地下1階に駐車場、1階に総務部や保健福祉部、2階に財政部や生活環境部、3階に教育委員会などを設ける。4〜6階は管理部門とし、7階に市議会議場を配置します。
建物の外壁を基本設計時の特注ガラスから、合わせガラスとセメント板に変更することで総事業費削減に取り組み、市では今後も「130億円を堅持しながら、コスト削減を目指したい」としています。
第2期工事で、多目的ホール棟など建設。解体工事などを経て平成30年度中に全て完了する予定です。

防災機能の向上のため、免震構造範囲を増加したこと、機能性の向上のため8階建てから7階建てへの変更による地下駐車場整備など、地下工事の範囲が増加したことなども、事業費全体の増額の要因となったと説明しています。
事業費130億円の内訳は、本体工事が約120億円、支障物件撤去、現庁舎解体工事などで約3億円、外構工事に約4億円、工事監理業務委託などが約2億円となっています。
財源は国の震災対策補助、合併奨励補助を最大限に活用
新庁舎建設事業の財源構成については、できる限り国からの支援が得られる特定財源の確保に努めました。内訳は、東日本大震災により被災した公共施設の復旧・復興を目的に新たに創設された「震災復興特別交付税」(全体の費用の20%を国から支援を受けられます)、「被災施設復旧関連事業債」(必要な費用の全額を起債することが出来、元利償還金の70%を国から交付税として支援を受けることが出来ます)、「合併特例事業債」(必要な費用の95%でを、元利償還金の70%を国が交付税で支援します)、「庁舎積立金」を財源として事業を進める計画です。
総事業費130億円の内訳は、「被災施設復旧関連事業債」が全体の約40%の約53億円、「合併特例事業債」が約25%の約29億円、そして、残りの35%のうちの約47億円は「震災復興特別交付税」と「庁舎積立金」で賄うこととにしています。震災復興特別交付税は、全体事業費の約10%から20%を見込んでおり、残りは庁舎積立金約22億円の範囲内で賄うことができます。つまり、通常は地方の市町村の庁舎には国の補助が全く出ないにもかかわらず、震災復興の資金と合併奨励の資金を最大限に活用し、日立市の新庁舎の予算額130億円のうち、国からに支援が94億円(約72%)もの支援を受けることができるようになりました。結果的に、市民の税金をもととする「一般財源」はほとんど使わずに庁舎の新築を行うことが出来ます。