選択肢の設計などで異なる結果に、
国民は読み解く力を養うことが求められる

日刊ゲンダイ 毎週のように発表されるマスコミの世論調査は、現代の政治に無くてはならないものになってきました。しかし、同一テーマについての世論調査結果が、調査を行うメディアによって大きく異なることがままあります。
 現在、議論されている集団的自衛権の行使をめぐる世論調査でも、その結果は「容認反対56%」(朝日新聞6月23日付)と「容認派が7割」(読売新聞6月2日付)に代表されるように、反対多数と賛成多数が新聞社によって、全く逆の結果になっています。しかも、その調査結果が、各新聞社の論調と合致していることから、調査の在り方などをめぐり、議論を呼んでいます。
 というよりも、質問項目や回答の選択肢をどう設計するかによって、世論調査の結果は違ってくる証左でもあります。朝日、毎日は、質問に際して集団的自衛権について、「日本に対する攻撃とみなして一緒に戦う権利のこと」「憲法上行使できない」などと強調し、「反対」(行使できない立場を維持)か「賛成」(行使できるようにする)かの二者択一で回答を求めています。
 一方、読売、産経は、集団的自衛権について「日本への攻撃とみなして反撃する権利」など肯定的に説明し、その使用について、「全面的に使えるようにすべきだ」「必要最小限(の範囲)で使えるようにすべきだ」「必要はない」と三つの選択肢を用意しました。読売、産経ともに「必要最小限(の範囲)」に約6割の支持が集まり、「容認」が多数を占めています。つまり「必要最低限」という項目をつくり、回答の受け皿を用意したともいえます。
 メディアが世論調査への依存を強め、競って早々と調査を実施する傾向は強まるばかりです。世論調査で表れるのは大衆感情(世論)であり、公的な意見(輿論)ではないともいわれますが、回答者の理解が深まっていない段階で、しばしば調査は実施されます。
 説明文や質問の順序によって、回答が無意識のうちに誘導される現象はよく知られていることです。しかし、ひとたび世論調査の結果が判明すると、そこから、記事が生まれ、解説が加えられていきます。
 この間、テレビ番組などで世論調査が「活用」され、世論が定着していきます。世論調査から世論が生まれているといっても過言ではありません。
 近年、各新聞社は憲法(安全保障)・外交政策・原発政策などで独自色を強めています。社論を補強するために、世論調査を活用するような印象が強まれば、メディアとしての信頼性は損なわれかねないと指摘します。
 一方、私たちは世論調査の数値をうのみにせず、これらを読み解く力を養うことが求められていることは言うまでもありません。
(写真は日刊ゲンダイ2014年5月25日付け記事より)