東埼玉病院に中野智紀医師を訪ねる
埼玉東病院で中野智紀医師(中央)と 6月26日、井手よしひろ県議と八島功男県議(土浦市選出)は、埼玉県幸手市の東埼玉総合病院とUR都市機構幸手団地の「元気スタンド・ぷリズム」を訪問しました。
 地域包括ケアサービスの構築を目指し、地域医療の推進やNPOによる介護予防推進活動の先進事例の調査が目的です。東埼玉総合病院では、在宅医療連携拠点「菜のはな」における取り組みを、在宅医療連携拠点事業推進室室長・中野智紀先生より聴き取り調査すると共に、意見交換を行いしました。
 東埼玉総合病院は、平成24年5月に幸手市へ新築移転し、わずか2年しか経っていません。法人の理念である『地域への貢献』を具現化するため、『地域密着型中小病院の新しいモデルになろう。』という目標を立て、平成24年度に病院単体で受託した在宅医療連携拠点事業を、平成25年度は地域の北葛北部医師会が委託を受け、東埼玉病院が事務局として、実質的な活動を続けています。
 いわゆる2025年問題への回答として注目される「地域包括ケアシステム」は、地域特性に合致したものが求められており、この拠点施設「菜のはな」が展開する、『幸手モデル』は全国から大きな注目を浴び始めています。
 中野先生は、地域包括ケアシステムの構築に当たり、留意するべき4つの視点として、
  1. 個人最適の視点。個人にとって最も適した統合されたケアとは何かという問いを追求する臨床的な視点。
  2. 多職種協働の視点。個人に最適化されたケアを実現する為、様々な職種、組織、施設を越えて協働するという視点。
  3. 全体最適の視点。質の高いケアが一部の人だけでなく、必要とする全ての住民に継続的に提供されるという視点。
  4. 住民の主体性を重視するという視点。

 中野先生はこの4つの視点で、「住民の日常生活圏を中心に提供され、財源や人材も含んだあらゆる資源が地域で循環し、持続可能な仕組みこそが、地域包括ケアシステムである」と強調しました。
 在宅医療連携拠点「菜のはな」は、多職種協働による在宅医療の支援体制を構築し、地域における包括的かつ継続的な在宅医療の提供を目指すとともに、今後の政策立案や均霑化のための地域拠点です。地域包括支援センターの医療側の窓口として位置づけられるカウンターバートナー=対等な立場で連携するパートナーに他なりません。
埼玉東病院 この「菜のはな」を中心に様々な活動が展開されています。
 「菜のはな」では、カフェ型ワークショップとして、「ケア・カフェさって」を定期的に開催されています。その特徴は専門職だけでなく、地域で活動する民生委員や自治会員の他、「コミュ一二ティデザイナー」といわれるインフォーマルな支え合い活動や町づくりを行う住民や団体、企業の方々が参加しています。この2年間で24回開催されました。住民を含む25の専門職種、のベ1073人が参加しました。ワールドカフェ形式(参加者が少人数で自由に対話を行い、時々他のテーブルとメンバーをシャッフルさせながら話し合いを発展させていく会議形式)によるグループワークを通じ、顔の見える関係の構築、相互理解の推進、協働の具体化など様々なテーマについて対話を行っています。
 現在、多くの市町村が、在宅医療介護連携事業をモデル事業としてスタートさせようとしていますが、市町村という大きな単位でスタートさせようとする場合が多いようです。地域という現場が想定できない大きな単位での事業展開に対して、真逆な取り組みであると評価しています。現場から離れた在宅医療介護連携事業は、砂上の楼閣と行っても過言ではないと考えています。
 「菜のはな」では、地域にとってあるべき連携の具体像とは何か?共有することが有効な最小限の情報とは何か?等を模索する為、具体的な事例検討を繰り返し行いました。医療介護連携推進へ向けた障壁を住民目線で抽出し、最終的に「医介連携ワークシート」としてまとめました。また、介護側が医療側へ連携する際に困難をきたすケースが散見された為、具体的な連絡基準を「見守りパス」としてまとめ、参加者全員に配布しました。課題の可視化だけでなく、具体的な解決策までまとめ上げることで、ケアの統合や地域チームとしての意識形成が進みました。

先進的な「住民主導型・地域包括ケアシステム」構築への取り組み
 また、市内でも特に高齢化が問題となっているUR幸手団地(3023戸)モデルとして、最初の「健康と暮らし支えあい協議会」が設置されました。この協議会は自治会が実施主体となり、行政や地域包括支援センター、地元医師会、民生委員を含む支援の担い手を住民自身が招集します。
 「菜のはな」は北葛北部医師会の指導の下、地域包括支援センターと協力して、医療介護のワンストップ相談窓口である「暮らしの保健室」や、ニーズ調査である「健康生活アセスメント調査」など様々な後方支援プログラム、医療や介護へのシームレスな地域連携室機能を提供する事を通じ、協議会の運営を支えつつ、住民の主体性を育む役割を担っています。
 この協議会では「住民主催の地域ケア会議」を実施しています。支援が必要な住民を「地域トリアージ」し、必要なケアを検討、そして医師会診療所を含む具体的な支援へと連携します。会議で提示される事例の多くは、参加者である自治会員や民生委員、地域包括支援センター、そして菜のはなの活動によって抽出された支援を必要とする住民です。現在、市内2カ所において協議会の設置および住民主催の地域ケア会議を実施しており、今後、市内全域へと展開していく方針です。
 また、自治会などの公的なコミュニティだけでなく、サロンやサークルなどの非公的なコミュニティに対しても、暮らしの保健室の設置による支援を行っいます(現在11カ所に設置)。
 「地域包括ケアにおいては、行政が責任主体を担いつつも、公的・非公的にとらわれずに地域のあらゆる資源を有機的に連携させ、住民が自ら主体的に地域の暮らしを支えていく互助の仕組みづくり、そして、それを支える共助と公助による支援体制を構築することが必要不可欠」と中野先生は力説していました。
「菜のはな」の紹介チラシ