年代別のピロリ菌保菌率　胃がんなどの原因になるヘリコバクター・ピロリ（ピロリ菌）について、大阪府高槻市は今年度（平成２６年４月）から、中学２年生を対象に抗体検査をし、陽性反応が出れば除菌治療の費用を全額補助することになりました。検査だけでなく除菌費用も含めて無料にする自治体は、全国初となります。
　厚生労働省のデータでは、胃がんは肺がんに次いで死亡数が多く、その原因となるピロリ菌は、ほとんどが５歳以下の幼児期に感染するとされています。
　高槻市はピロリ菌の早期対策として、６月中旬から下旬にかけ、市立中学校に通う２年生全員に尿検査の容器と説明書を配布。抗体検査で陽性反応が出れば、希望者については指定医療機関で２次検査の受診と除菌治療、その確認検査を無料で受けられることにしました。今年度の検査対象者は約３３００人で、市は約９００万円の予算を計上しています。
　また、３０〜６０歳の市民についても５歳刻みで、市内の委託医療機関で５００円で、ピロリ菌検査を受けられるようにします。高槻市健康づくり推進課の担当者は「ピロリ菌は胃がんだけでなく胃潰瘍（かいよう）や十二指腸潰瘍などの病気を引き起こす。早期に除菌して将来病気になるリスクを減らしたい」と、地元紙のインタビューに答えています。
ピロリ菌対策は公明が一貫して推進
　胃粘膜に炎症を引き起こすピロリ菌は胃がんの最大の原因とされています。胃酸の分泌が十分でない子どものころ、井戸水を飲むなどして感染する人が多いといわれています。上下水道が整備された時代に育った世代は井戸水を飲む機会は少ないが、乳幼児期に親から経口感染するケースが多いとされています。ピロリ菌に感染すると、成人になっても菌が胃の粘膜にとどまり続けます。
　そこで高槻市は、ピロリ菌を早期発見して治療することで胃がんのリスクを防ごうと、ピロリ菌対策事業に着手しました。
　計画によると、治療による体への影響が問題ないとされる中学２年生を対象とし、ピロリ菌の感染を調べ、感染が確認されれば、除菌できるまでサポートします。
　高槻市は、事業委託している企業を通じ、ピロリ菌の抗体の有無を調べる尿検査キットを市内の全市立中学校に配布しており、現在、回収作業を進めています。また、私立中学校などに通う生徒については、既に市への検査受け付けは終了しています。高槻市は現在、生徒からのキットの提出を待って、市立中学校の生徒と同じく７月下旬までに、本人に検査結果を通知します。
　その上で、陽性反応（ピロリ菌の存在が確認された）が出た生徒には、２次検査としてピロリ菌の呼気検査を実施。再度感染の可能性が指摘された場合、投薬による治療を開始します。しばらくして再び、確認検査を行い、除菌できていない生徒には、２、３次と治療を行い、完全な除菌をめざすします。
　一方、ピロリ菌対策事業には、生徒への検査・治療のほか、一般の市民に対しては、３０歳から６０歳まで５歳刻みでピロリ菌の抗体を調べる血液検査が盛り込まれています。５００円の自己負担で受診できるようになっています。

日本ヘリコバクター学会でも未成年のピロリ菌対策に注目集まる　
　６月２８日、２９日の両日開催された「第２０回日本ヘリコバクター学会学術集会」では、「未成年におけるH. pylori 検診の現状と将来」のワークショップが行われました。若年者を対象とした検診、更には除菌について注目が集まっています。 地域行われている具体的な先進事例として、以下のものが紹介されました。
  • 川崎医大ほか：岡山県真庭市において、中学２年生・３年生に尿中ピロリ菌抗体検査や尿素呼気試験を実施
  • 北海道大学ほか：夕張市、福島町、稚内市において、中学生と高校生に尿中ピロリ菌抗体検査を実施
  • 兵庫医大ほか：兵庫県篠山市において、中学生に尿中ピロリ菌抗体検査や尿素呼気試験を実施
  • 信州大学ほか：信州大学等を受診した高校２年生に尿中ピロリ菌抗体検査を実施
　なお、これらの検査結果では、ピロリ菌抗体陽性率は５％前後と、高齢者の陽性率より大幅に低くなっています。若年者のピロリ菌除菌を行えば、言われているように、胃がんの撲滅に向けて大きく進むと思われます。