就労自立給付金を創設/不正受給防止へ罰則を厳格化
イメージ 全国で生活保護を受けている人は、4月時点で約216万人となり、前月から約1万人減少しました。毎年4月は、進学や就職などで受給者が減少する傾向にありますが、雇用情勢の改善や景気回復による影響もみられています。
 ただ、3月は受給者数、世帯数ともに過去最多を記録。特に、2008年秋のリーマン・ショック以降、失業が若年層にも広がり、働ける現役世代の受給者が急増してきました。このため、働ける年齢層への自立支援の強化が求められています。
 7月1日から施行となった改正生活保護法は、これまで手薄だった現役世代に向けた自立支援の後押しや不正受給者対策の強化が狙いです。生活保護法が1950年に制定されて以来、初の本格的な改正です。
 今回の改正による自立支援策の目玉は「就労自立給付金制度」の創設です。保護期間中に働いて得た賃金の一定割合を仮想的に積み立て、安定した仕事に就いて生活保護から抜け出した時に、給付金(単身世帯は10万円、多人数世帯は15万円が上限)として支給します。これまでは、受給者が働いて収入を得た場合、生活保護費を減額されるため、勤労意欲を削いでいるという声が上がっていました。
 また、就職してせっかく自立しても、税金や保険料などが負担となり、再び生活保護に頼らざるを得ない状況に陥る人もいます。給付金は、生活が軌道に乗るまでの支えとなることが期待されています。
 今回の改正では後を絶たない不正受給対策も強化されました。具体的には、不正行為を抑制する罰則の厳格化です。自治体が、不正受給額に上乗せして返還を求めることもできるようにしました。
公明党は生活保護制度の精神を重視し、制度改善に邁進
 公明党は、就労自立給付金について、「就労のインセンティブ(誘因)というものが強化される。生活保護から早期脱却するためには就労対策が非常に重要だ」などとの国会質問を重ね、生活困窮者の自立支援の必要性を訴えてきました。生活保護に至る前段階にある生活困窮者などを対象にした自治体への相談窓口の設置を義務付けた「生活困窮者自立支援法」(来年4月施行)と合わせて、今後も、重層的なセーフティーネットの構築を進めます。
 憲法25条には「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が明記されています。それを保障する枠組みとして、「共助」や未然に貧困を防ぐ「防貧」の思想を背景とし、国民が強制加入する医療保険や公的年金、介護保険など、さまざまな社会保険制度が整備されています。
 一方の生活保護は、そうした制度では救済できなかった生活最低水準を満たさない国民を助ける「救貧」の役割を担っています。困窮の原因を問わない「無差別平等の原理」が特徴です。「最後のセーフティーネット」と呼ばれるゆえんがここにあります。
 生活保護制度は昨年末の改正で一度、申請手続きの厳格化や扶養義務の強化が規定されました。しかし、「申請をためらう人が増える」と関係者が反発し、ことし4月に大幅な修正が加えられたばかりです。申請窓口で受給者数を抑え込む「水際作戦」への懸念は、ひとまず薄らいだと言えます。
 全国の生活保護受給者は、先にも述べたように4月時点で216万。ただ2012年度の不正受給額は、保護費全体の0.5%程度です。不正受給は根絶しなければなりませんが、全体のごく一部であり、生活保護受給者が不正や問題があるのでは無いかとの間違った認識は払拭しなくてはなりません。
 そもそも日本は生活保護を受ける資格のある家庭のうち、実際に受給する割合が、先進国の中でも低いと指摘されています。「不安のない制度の運用を」と望む、小さな声にきちんと応えられる社会でありたい。