九州電力川内原発遠景  7月16日、原子力規制委員会は、鹿児島県の九州電力川内原子力発電所1、2号機の安全対策が、新たな規制基準に適合しているとして、「審査書案」を了承しました。
 現在、国内の50基ある原発のすべてが運転を停止しており、川内原発が新規制基準下で第1号の再稼働となる見込みです。
 安全審査を申請中の原発は、東海第2発電所も含めての11原発17基。こうした原発の審査に拍車がかかります。
 審査書案によると、九電は地震の揺れの最大想定となる加速度を620ガルに引き上げたうえ、沖縄沖合で東日本大震災級の巨大地震の発生を想定するなどして、安全対策の全面的な見直しを行いました。また全交流電源が喪失するような重大事故も想定し、水素爆発を防ぐ除去装置を設置するなどの対策を講じました。
 審査書案の了承を受け、川内原発が立地する薩摩川内市と鹿児島県は、万一の重大事故に備え、住民の避難体制整備や甲状腺被曝ひばくを防ぐ安定ヨウ素剤の配布などを始める予定です。
 原子力規制委員会は、審査の雛形となる川内1、2号機の審査に、多くの職員を集中させていました。審査書案了承に伴い、中断していた他原発の審査が再開し、判断が加速されます。
 マスコミ報道などにより第2弾として有力なのは、基準地震動(想定される最大の揺れ)を福井県のクリアしている関西電力高浜3、4号機です。
 これに佐賀県の九電玄海3、4号機が続くとみられます。
 愛媛県の四国電力伊方3号機と福井県の関電大飯3、4号機は地震動を審査中で、第4弾以降とみられます。
 新潟県の東京電力柏崎刈羽6、7号機など断層の調査が残る原発は、審査が中断しており再稼働の見通しはてっていません。最後に審査会合が開かれたのは今年1月で、事実上「凍結状態」です。敷地内の断層を追加調査中で、審査は長期化する見通しです。
課題多い東海第2原発の再稼働への道
 審査が先行しているのは加圧水型の原子炉を持つ原発です。福島第1原発同じ構造の沸騰水型原発は、水素爆発を防ぐためのフィルター付きベントなど、新基準への適合を図るための設備更新に手間がかかるために、申請が遅れています。
 各電力事業者は、比較的容易に再稼働が見込める原発から申請を提出しており、稼働後40年で運転終了という原則や再稼働への投資が大きくなりすぎる原発は、採算性の面から廃炉が選択されるのではないかと予想されています。
 こうした一般的な流れと異質な動きとなっているのが、東海第2原発です。すでに、事業者である日本原子力発電(日本原電)は、この6月に安全審査の申請を済ませました。稼働後35年を経ており、沸騰水型では初の申請となりました。老朽化しているうえ、主要な配線の難燃性が疑問視されている中での申請です。日本原電は3つの原発を運営する原子力発電の専業事業者です。敦賀の1号、2号機が活断層の問題で申請が難しい中、なんとしても効率性を無視しても再稼働に結び付けたいとの思惑が感じられます。
 再稼働には、原子力規制委員会の審査をクリアしたとしても、避難体制などの問題に神経を尖らせる茨城県や地元市町村などの承認も必要です。現在、運転差し止めを求める訴訟も進行中です。東海第2発電所に残された時間は正味4年。日本原電は、常識的には再稼働は断念し、今後の企業としての存続あり方を真剣に検討すべき時期に差し掛かっています。