改正都市再生特措法
コンパクトシティ実現には住民の理解と協力が不可欠
 8月1日、人口の減少・高齢化に対応するため、病院や商業施設が中心市街地に集まるよう促す改正都市再生特別措置法が施行されました。
 地方では、人口の高齢化や減少、市街地の拡散が進み、生活を支える都市機能をいかに維持するかが大きな課題となっています。利用する施設が一定の生活圏に集約されていくと便利になりますが、まちづくりは決して容易ではありません。
 改正法がめざすのは、全ての住民を中心市街地に集める一極集中型ではなく、複数の拠点を公共交通でつなぐ多極ネットワーク型のコンパクトシティです。都市機能の移転を促す支援制度を講じながら、まちづくりを進めていくことになります。
 具体的には、市町村が「立地適正化計画」を策定し、商業施設や福祉・医療施設などを誘導立地する区域と、住宅を誘導立地する区域を指定します。区域内に立地を進める施設を国が税財政面などで優遇する一方、指定区域外での大規模な宅地開発などは市町村が制限できるようにします。
 集約型都市の利点は多い。都市機能を鉄道の主要駅やバス停の周辺に集めれば、車を運転できない高齢者などは便利になります。市街地が狭ければ、道路や上下水道などインフラ(社会基盤)の維持・整備費用の削減が期待できます。
 この改正都市再生特別措置法のポイントである「立地適正化計画」の策定に際しては、国土交通省は作成主体となる地方公共団体を支援する体制として省内に支援チームを構築。市町村の計画づくりを全面的にサポートすることにしています。
 この計画は、住宅および医療、福祉、商業など居住に関連する施設の立地適正化を図るため、これらの施設の立地を一定の区域に誘導することを目的にしたものです。適正化計画に記載された居住に関連する「誘導すべき施設」には容積率や用途規制の緩和といった特例措置を講じられます。
 民間の都市機能への投資や居住を効果的に誘導、都市全体の観点から均整のとれた都市機能の立地を促すことが目的です。
 背景には、地方都市で進む高齢化や市街地の拡散、それに伴う人口減少などがあります。
 成長戦略や骨太方針に掲げる「民間の知恵や資金を活用しながら、それぞれの地域戦略に基づき、コンパクトシティーを実現する」という基本方針のもと、国交省は、地域住民の足となる公共交通網を軸に福祉・医療・商業といった都市機能と、人口密度を維持する居住エリアの集積を図ることで、多極ネットワーク型のコンパクトなまちづくりを推進します。
 都市機能を外から内(街中)へ移転誘導するための税制措置や、老朽化した病院の建て替えを促す容積率の緩和措置など、支援制度を講じながら、誘導型のまちづくりを進めていきます。
 立地適正化計画では、「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」の区域指定と、区域内で講じるべき施策を盛り込みます。開発を認める「市街化区域」と、開発を抑制する「市街化調整区域」という現行の都市計画の枠組みの中に、コンパクトシティーを実現するための「誘導区域」を再構築するイメージです。
 都市マスタープランで「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を掲げ、中心市街地の活性化や公共交通の活性化に取り組む富山市や熊本市など、先導モデルと言うべき取り組みも既にスタートを切っています。
 国交省は、地方公共団体や民間事業者、業界団体などへの説明会を通して制度内容の周知を図る一方、こうした先進事例のノウハウを集約・蓄積しながら、全国展開を見込んでいます。
 ただ、誘導する施設などをイメージすることはできますが、実際の郊外に居住している住民の「誘導区域」への集約をどう進めるのかはよくわかりません。結果的に都市の周辺に高齢者の居住地域が残されてしまう懸念は払拭できません。こうした、地域をどの様に活性化させるべきかの手法も検討すべきです。
 全体では人口減少が続く日本ですから、県庁所在地などの一部の地方都市には、有効な戦略かもしれませんが、結果的により多くの中小都市の活力を結果的に奪ってしまうことも想定しなくてはなりません。中心市街地によっては、再開発した地区に人が集まる反動で、他の地区内から人が流出する恐れもあります。広域的な視点からの調整が欠かせません。