学生への経済的支援について議論する文科省の有識者検討会は先週、奨学金の返済月額を所得に応じて柔軟に設定できる仕組みにすべきとの報告書案をまとめました。今月中にも正式決定し、文科相へ提出する予定です。
国の奨学金は、独立行政法人・日本学生支援機構を通じて大学生らに貸し付けられています。今年度の利用者は、有利子と無利子の貸付を合わせて約1450万人に達します。
日本の大学独自の奨学金もあわせて、50%を超える学生が奨学金を利用しています。奨学金の中心は「日本学生支援機構」の奨学金です。「日本学生支援機構」の奨学金利用者は、大幅に伸びています。かつては奨学金の貸与を受けるためには成績要件などをクリアしなければなりませんでしたが、制度改正によってより多くの学生が奨学金を借りることできるようになりました。その結果、無利子の第1種奨学金の貸与人数はそれほど増加していませんが、有利子の第2種奨学金の貸与人数が大きく増加しています。
欧米では奨学金とは給付型(渡しきり、返済に必要なし)のことを指し、貸与型については『学資ローン』と呼んで区別しています。日本は本来の奨学金制度とは違う方向に進んでいると批判する専門家もいます。
もともと奨学金事業を担っていた日本育英会から日本学生支援機構に引き継がれた2004年以降、奨学金が「金融事業」と位置づけられ、その後、金融的手法の導入が進んだといわれています。奨学金に占める有利子の割合や民間資金の流入が拡大。返済金の回収も強化され、2010年度からは返済が滞れば、滞納者として「全国銀行個人信用情報センター」に登録されるようになりました。
回収の強化といえば、近年、裁判所を使った「支払督促」を申し立てられる奨学金滞納者が急増しています。2004年にはわずか200件だった支払督促の申立件数が、2011年には1万件と、この7年間で50倍に拡大しています。
返還猶予制度の運用にも問題があります。日本学生支援機構の奨学金には返還期限を猶予する制度があります。この制度は、非常に厳しい要件が課されている上に、運用上も様々な制限が課され、申請方法なども複雑で不明瞭なため、制度を利用できない返済困難者が多いのが現実。返還猶予制度はもっと柔軟に分かりやすくするべきです。
国の奨学金は、独立行政法人・日本学生支援機構を通じて大学生らに貸し付けられています。今年度の利用者は、有利子と無利子の貸付を合わせて約1450万人に達します。
日本の大学独自の奨学金もあわせて、50%を超える学生が奨学金を利用しています。奨学金の中心は「日本学生支援機構」の奨学金です。「日本学生支援機構」の奨学金利用者は、大幅に伸びています。かつては奨学金の貸与を受けるためには成績要件などをクリアしなければなりませんでしたが、制度改正によってより多くの学生が奨学金を借りることできるようになりました。その結果、無利子の第1種奨学金の貸与人数はそれほど増加していませんが、有利子の第2種奨学金の貸与人数が大きく増加しています。
欧米では奨学金とは給付型(渡しきり、返済に必要なし)のことを指し、貸与型については『学資ローン』と呼んで区別しています。日本は本来の奨学金制度とは違う方向に進んでいると批判する専門家もいます。
もともと奨学金事業を担っていた日本育英会から日本学生支援機構に引き継がれた2004年以降、奨学金が「金融事業」と位置づけられ、その後、金融的手法の導入が進んだといわれています。奨学金に占める有利子の割合や民間資金の流入が拡大。返済金の回収も強化され、2010年度からは返済が滞れば、滞納者として「全国銀行個人信用情報センター」に登録されるようになりました。
回収の強化といえば、近年、裁判所を使った「支払督促」を申し立てられる奨学金滞納者が急増しています。2004年にはわずか200件だった支払督促の申立件数が、2011年には1万件と、この7年間で50倍に拡大しています。
返還猶予制度の運用にも問題があります。日本学生支援機構の奨学金には返還期限を猶予する制度があります。この制度は、非常に厳しい要件が課されている上に、運用上も様々な制限が課され、申請方法なども複雑で不明瞭なため、制度を利用できない返済困難者が多いのが現実。返還猶予制度はもっと柔軟に分かりやすくするべきです。
この様な背景があって、現在検討会で議論されたのは返済の在り方です。返済金の滞納者は増加傾向にあり、2013年度は約33万人に上っています。
3カ月以上延滞すると、滞納者は個人信用情報機関に登録され、クレジットカード発行や将来の住宅ローンなどの借り入れに支障が出てきてしまいます。効果的な対策を進め、滞納者を減らさなければなりません。
現行の無利子奨学金には、年収300万円以下の場合に返済を猶予する「所得連動返還型」があります。しかし、300万円を超すと、通常の返済方法が一律に適用されるため、工夫を望む声が大きくなっています。
今回の報告書案は、「所得連動返還型」を改善し、卒業後の所得に応じて返還月額を変更できるよう提案しています。公明党が導入を訴えている政策であり、ぜひ実現させるべきです。
文科省も来年度予算の概算要求に、制度設計に向けた実態調査などを盛り込む方針ですが、課題もあります。
返済者間の公平・公正さを期すには、所得を把握しなければなりません。給料から税金などを源泉徴収される会社員と比べ、自営業者の所得を正確につかむには限界があります。
2016年1月から開始予定のマイナンバー制度は、国民一人一人の社会保障と税などの情報を一元管理するもので、所得把握の選択肢の一つです。国民の理解を得ながら、この制度を活用するのも一案です。
既に、米国や英国、豪州などは所得連動型で返済できる制度を採用しています。海外の事例も参考にしながら、実現していかねばなりません。
3カ月以上延滞すると、滞納者は個人信用情報機関に登録され、クレジットカード発行や将来の住宅ローンなどの借り入れに支障が出てきてしまいます。効果的な対策を進め、滞納者を減らさなければなりません。
現行の無利子奨学金には、年収300万円以下の場合に返済を猶予する「所得連動返還型」があります。しかし、300万円を超すと、通常の返済方法が一律に適用されるため、工夫を望む声が大きくなっています。
今回の報告書案は、「所得連動返還型」を改善し、卒業後の所得に応じて返還月額を変更できるよう提案しています。公明党が導入を訴えている政策であり、ぜひ実現させるべきです。
文科省も来年度予算の概算要求に、制度設計に向けた実態調査などを盛り込む方針ですが、課題もあります。
返済者間の公平・公正さを期すには、所得を把握しなければなりません。給料から税金などを源泉徴収される会社員と比べ、自営業者の所得を正確につかむには限界があります。
2016年1月から開始予定のマイナンバー制度は、国民一人一人の社会保障と税などの情報を一元管理するもので、所得把握の選択肢の一つです。国民の理解を得ながら、この制度を活用するのも一案です。
既に、米国や英国、豪州などは所得連動型で返済できる制度を採用しています。海外の事例も参考にしながら、実現していかねばなりません。