8月7日、子どもがインターネットを通じて犯罪に巻き込まれるケースをはじめ、インターネットの交流サイトやゲームに過度に夢中になる、いわゆる「ネット依存」が増えるなか、その対策を考える講演会が水戸市で開かれました。
 「ネット依存の恐怖〜その現況と対策」と題したこの講演会は、茨城県精神保健協会が主催。筑波大講師(精神医学)の根本清貴さんは、「程度の差こそあれ、私たちはインターネットに依存している」と前置き。若者がネットゲームなどで快感を得てのめりこむ状態を脳科学の視点で紹介しました。予防については、現実世界で「認められる」経験を積むことが最も効果があると強調しました。また、「『ネット依存』になってから対策を取るのは難しいので、スマートフォンなどを買い与える前に親と子どもが相談して使用場所や時間などのルールを決めておくことが重要だ」と述べました。
 一方、茨城メディア教育指導員の鈴木慶子さんは、子どものインターネットの利用状況について講演。鈴木さんは「ネット利用の低年齢化が進んでいる。子どもが犯罪に巻き込まれないために、有害なサイトへの接続を遮断するフィルタリング機能など、親がインターネットについて正しい知識をもつことが必要だ」と指摘しました。
 主催した茨城県精神保健協会の池田八郎会長は「『ネット依存』などの対策には、保護者や学校関係者の役割が重要で、インターネットについて正しい知識を持ってもらえるよう働きかけていきたい」と話していました。

井手県議も今年3月の予算特別委員会で対策を訴える
 公明党は、いち早くこの「ネット依存」の問題を取り上げています。井手よしひろ県議は、今年3月に行こなわれた県議会予算特別委員会では、「先日公表された茨城県教育庁の調査によると、平日のインターネットの利用時間が1日2時間以上に上る児童生徒が30.1%に上っています。休日は、実に1日5時間以上利用する高校生が17.6%と高い割合になっています。インターネットにより日常生活に支障を感じたことのある高校生は5割を超えています」などと、現状を指摘して県の対応を求めました。
 井手県議も訪問したことがある国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は、2012年に厚労省などと行った調査で、中学、高校生のネット依存者が全国で約52万人いると推計しています。ネット依存者に発生してくる問題として、視力の低下やエコノミークラス症候群、睡眠障害のほか、学業成績の低下や家庭内暴力などを挙げています。
 一方で対策としては、日中の居眠りや遅刻など、子どもの小さな変化を見逃さない早期発見・早期対応が重要と強調。診療体制の拡充やネット依存の診断ガイドライン作成、教員へのネット研修、依存度の高いオンラインゲームを提供している会社による倫理的な配慮などが必要とし語っています。
 ネット依存の温床になっているのが、LINEに代表されるSNSとオンラインゲーム、そしてスマートフォンの普及です。

LINEが止められない
 twitterやfacebookといった、人と人とがつながるインターネットメディア、いわゆるSNSの中でも、子どもたちのネット依存に大きな影響を与えているのがLINEです。LINEはいまや友達同士の連絡手段として多くの子どもたちに利用されており、大半の中高生が自分のスマートフォンにこれをインストールしているとみてまず間違いありません。メールよりはるかに簡単な操作でメッセージや画像をやりとりできる手軽さ、リアルタイムでトークできるそのスピード感、仲間内でグループを作ってトークする楽しさ、嫌なことがあったらすぐに相手をブロックできる気軽さ――子どもたちにLINEがうけている理由です。そして、投稿した内容を相手が読んだか、読まないかを“既読”という言葉で教えてくれるのも、大きな魅力です。逆に、既読なのに返信していないと言うことは、相手を無視しているということになります。
 こうしたサービスを複数の友達とのあいだで、これといった目的もなく使っていると、いつまで経ってもチャットが終わりません。結果、やめるタイミングを見失ってダラダラとトークし続けることになりかねないという危険性があります。
  従来のガラケーのサービスであれば、書きされることが抑止力になったかもしれませんが、LINEはキャラクターなどを購入しなければ無料なのです。
 LINEがやめられないという相談が、多くの子どもたちから寄せられていると言われます。

オンラインゲームがネット依存の温床
 ネット依存の要因の一つがオンラインゲームです。特に10代〜20代の若い世代の多くが没頭してしまっています。オンラインゲームとは、パソコンやゲーム機をインターネットに接続して、オンライン環境で通信しながら、複数で同時に遊べるゲームです。
 オンラインゲームの基本はロールプレイングゲーム(role-playing game、RPG)です。参加者が各自に割り当てられたキャラクターを操作し、架空の状況下にて与えられる様々な困難を乗り越えて目標をタッセしていきます。現在は、一人で行うだけではなくネット上で多人が同時に参加する形式のゲームが多くなりました。また、架空の戦場を舞台に、実在する銃や武器を使用して、敵チームと戦い、勝敗成績やランキングを競い合う戦争のゲームも人気です。この他にも、架空のペットやモンスターを育てて競い合ったり、箱庭やコレクションを充実させたり、とゲームの内容は多岐にわたります。
 オンラインゲームは、学校やアルバイトが終わった深夜11時頃から午前2時ぐらいが最も盛り上がる時間帯になっています。深夜にゲームに没頭することで、睡眠時間が短くなり、仕事や学業に影響が出てしまっています。長時間ゲームをすればするほど、自分の分身(アバター、キャラクター)が強くなり、武器やアイテム(ゲームに使う道具)も充実して他の参加者よりゲームを優位に進めることができます。チームプレイを必要とするゲームでは、自分一人がゲームを抜けると、チームが負けたり、他の参加者に迷惑をかけたりすることになります。そのため一人だけ抜けて早く寝るということができなくなってしまいます。
 さらに、通常のゲームは無料のものが多いのですが、ゲーム内でのアイテムや武器などを入手するためにお金がかかるものもあります。お金をかければかけるほど、自分の分身を強くしたり、強力な武器やアイテムを購入できたり、他の参加者より優位にゲームを進めることができます。そのため、子どもが法外な通信料金を請求されたり、親にだまってコンビニで現金を電子マネーに換金してゲームに使うこともあります。
 ゲーム制作会社は、定期的にゲームの内容を見直して、ゲーム利用者を飽きさせない仕組みを追求しています。例えば、一定の期間ごとに新しい武器やアイテムを追加したり、上級者しか入れないような世界や迷宮を用意したりして利用者を飽きさせず、より没頭させていきます。そのため、エンドレスで何年間も続けられるゲームさえあるのです。
 若い世代がオンラインゲームに没頭してしまう背景には、彼らが現実で直面する問題が深く関係しています。仕事や学校でうまくいかなかったり、家族や友人とうまくいかなかったりなどといった、現実世界での悩みやストレスがゲームに走らせていることも多いのです。
 現実逃避と大人の社会の利益追求のゲーム会社の狭間で、ネット依存の子どもが増え続けています。

スマホの普及がネット依存に拍車をかける
 スマートフォンの世帯普及率が5割を越えたとされたのは、この4月の内閣府が発表した消費動向調査です。3月末のスマートフォンの世帯普及率が54.7%、タブレット端末が20.9%となりました。
 スマホは大変便利で、いわゆるケータイ電話(ガラケー)以上に色々なことができます。一昔前までは、ネット依存というと、部屋に引きこもってPCやゲーム機の前から離れられないというのが一般的なイメージでした。PCやゲーム機がないからうちは安心という家庭でも、実は子供が学校でも布団の中でも一晩中スマホを手放せず、ゲームやネットにのめりこんでしまうケースがあります。また、ネット依存から回復の兆しを見せ、それまで夢中になっていたゲームやPCから一度は離れたという方が、実はスマホを1日中しているというケースもあります。
 子供達は持ったその日から、すぐにスマホを使いこなし、大人や親よりも詳しくなります。もし子供が急にスマホを欲しがったら、すぐに買い与えるのではなく、スマホの便利な面は勿論、マイナス面を、親の世代も十分に知って、子供とよく話し合うことが重要です。具体的にはルールや使用目的、使用場所、料金の支払い、スマホを持って得られるもの、失うものをよく考えて、約束ごとを決めることが大切です。
 自動車やバイクなど便利な半面大きな危険がつきまとう乗り物には免許制度があります。しかし、スマホやネットには免許制度はありません。大人がよく分からないけど、便利だから役に立つだろうと、他の子どもたちが使っているから内の子どもにも買い与えようという、安易な対応は厳に慎むべきです。