エボラウィルス 8月9日までに、WHOはエボラ出血熱で感染、または感染の疑いで死亡した人は1013人に達したと発表しました。西アフリカでは、ギニア、リベリア、シエラレオネを中心にエボラ出血熱の患者が増え続けています。このうち、323人が死亡したリベリアでは、政府が、アメリカ国内でアメリカ人の患者2人に投与され効果が出ていると伝えられている未承認の薬について、アメリカ政府に提供を求めました。
 リベリア政府によりますと、薬は今週後半に現地に到着する見通しだということで、感染したリベリア人の医師に試験的に投与して効果を確かめたうえで、今後、感染した患者に投与するか判断するものとみられます。
 感染の拡大に歯止めがかからないなか、WHOは、未承認の薬の投与を認めるかどうかなどについて、医学倫理の専門家らによる協議を続けており、日本時間の12日夜、判断を示すことになっています。
 エボラ出血熱の潜伏期間は2〜20日間と幅があり、発熱や筋肉痛といったインフルエンザに似た症状を経て最悪の場合は死に至ります。治療薬は開発されておらず、対症療法しかありません。
 事態悪化を受け、リベリア政府は90日間の非常事態を宣言。WHOも緊急会合を開催し、緊急事態を宣言するかどうかの検討に入っています。
 リベリアで患者の支援に当たっていた米国人らが感染、米国内の病院に搬送されました。感染者が運び込まれたことで、米国内のまん延を懸念する声も少なくありません。エボラ出血熱が題材のパニック映画の影響もあり、不安は先進国でも広がっています。
 万一の国内感染を防ぐために、日本政府も防疫態勢の強化に入りました。国内の各空港は水際対策として、体温を画像で計測する装置を使って発熱者の確認を実施しています。感染が疑われる人が出た場合、患者は国指定の「特定感染症指定医療機関」に直ちに搬送されることになっています。
 外務省が出血熱の発生で、西アフリカへの渡航の自粛を呼びかけたことが奏功し、日本人の渡航者の感染は現時点では確認されていません。しかし、感染者を出さないためには万全の対策が重要です。
 WHOによると、エボラ出血熱は患者の体液や血液を素手で触れる「濃厚接触」で感染します。感染しても対症療法で「抗体(免疫体)が検出されるようになると急速に回復に向かいます」(国立感染症研究所)。
 現地住民の支援を行う国連児童基金(ユニセフ)も強調するように、恐怖心や誤解の払拭が感染阻止の第一歩になります。現地では風評が広がり、助かる見込みがあっても治療できない患者も多いようです。
 恐ろしい感染症であるのは間違いありません。しかし、正しい知識を持ち適切に対処すれば、感染拡大を封じ込めることが可能な病いです。日本でも無用な混乱を引き起こす風評は起こり得ます。政府が率先して正しい感染症の知識を提供すべきです。国民は冷静な対応が望まれます。