学校のイラスト 9月25日、文部科学省は学力の把握を目的に小学6年と中学3年の全員を対象に実施した2014年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表しました。茨城県の公立校の児童・生徒の正答率は、中学3年の数学A(基礎的知識)、B(知識の活用力)が全国平均を下回りましたが、他の6分野は全国平均を上回りました。中でも、小学6年は全ての分野で前年度から全国順位を上げ、特に国語Aは全分野を通して過去最高の3位となりました。 
 茨城県の小学6年は著しい成績向上が見られました。国語Aは正答率が前年度と比べ4.0ポイントアップし、順位を一気に17位上げました。このほかの3分野も全て正答率、全国順位とも前年度よりに上げました。
 県教育委員会では、全小学校の4、5年で夏休みに徹底して四則計算を学ぶ「学びの広場サポートプラン事業」や「みんなにすすめたい一冊の本推進事業」など、本県独自の地道な教育施策の成果が出た結果と語っています。
 一方、中学3年は国語は全国平均を上回わりましたが、全分野で前年度より順位を下げました。
  数学Aは全国平均より0.9ポイント低く、前年度から順位を二つ下げて32位。前年度21位だった数学Bは全国平均より2.0ポイント低く、36位となりました。
 特に数学Bの図形に関する問題が苦手で、「図形の性質を構想を立てて証明する」問題は全国平均よりも9.1ポイントも低い結果に終わりました。
 文科省は、今回の全国学力テストから、学校の序列化や過度な競争を招くとしてこれまで認めてこなかった、学校別成績の公表を解禁しました。
 学校別成績を公表するかどうかは、学校を管理する各市町村教育委員会が判断します。茨城県では、学校別成績の一覧や順位は、学校の序列化や過剰な競争につながるため、国の方針に沿って公表しない方針です。
 その上で、好成績を挙げるなど模範的な取り組みをした学校名を公表することにしています。公表対象は好成績を挙げたり、学習状況の改善がみられたりした学校です。市町村教委の同意を条件に、他校の指導改善につながるかどうか判断した上で公表することにしています。県教委は「公表によって他校の授業改善につなげ、県全体の教育水準の向上が図れる」としています。
 全国学力テストの結果の公表については、様々な議論が巻き起こっています。実際に公表されると、正答率が低かった地域や学校では、結果に固執するテストのためのテスト勉強がエスカレートする懸念があります。また、地域間の学校間の序列化も顕在化してきます。
 一方、全国学力テストは国費約55億円が投じられ巨大事業です。児童生徒約215万人が参加しています。これだけの費用をかけた事業の結果を、国民(保護者や教育関係者)に開示しないと言うことは、情報公開の観点からみて問題ではないかとの議論も尤もです。
 今年の結果を全国的に見てみると、過去低迷していた沖縄が小学校で順位を大幅に上げました。文科省は「学力の底上げが進んでいる」と評価しています。学力の概況をつかむ意味で、学校別成績まではじき出す必要はないでしょう。個人的には、市町村別の平均点を公表するのが妥当と考えています。
 いずれにせよ、学校現場が全国学力テストの成績に一喜一憂し、浮足立ってしまうような状況だけは作ってはいけないと思います。