テレビの報道番組より 10月21日、鳥取県議会は、覚醒剤などと同程度の興奮や幻覚を引き起こす「危険ドラッグ」を、「危険薬物」として取り締まることができる、「県薬物の濫用の防止に関する条例」改正案を可決しました。
 厚生労働省によると、地方自治体が危険ドラッグを一括規制するのは全国初です。県は11月に同条例を施行します。
 危険ドラッグは、国や地方自治体が違法な薬物として指定する際、薬事法などで規定された成分の特定が必要です。しかし、成分分析などに時間がかかり、その間に化学構造の一部を変えた新しい危険ドラッグが次々と流通し、対応が後手後手に回っています。
 こうした現状を改善するため、名前や形状が従来から販売されている危険ドラッグと疑わしいものを「知事指定候補薬物」とし、販売、購入の両者に届け出を義務付け、流通を抑制。違反が明らかになった際には立ち入り検査もできるとしています。11月中旬から施行する予定です。酒やたばこ、医薬品などは除外しています。
 県議会での審議では規制対象が曖昧な点について自民党県議から懸念の声が上がり、「厳格かつ慎重な運用に努められたい」との付帯意見が提出されました。また「自治体ごとに刑と罰が異なることは法的安定性にもとる」として国に法整備を求める意見書も可決されました。
 遅い国の対応に対して、地方が一歩踏み出した対策に乗り出したことは評価できます。しかし、成分の特定などの根拠を示さずに罰則を科すのは、実際は難しいのではないでしょうか。そもそも、警察がこの条例で容疑者を逮捕し、公判を維持できるのでしょうか。報道によると、鳥取県の担当者は「県内には危険ドラッグの販売店がなく、条例改正で流入の抑止が期待できる」と発言していますが、この“抑止力”ということばが本音かもしれません。
県条例での規制8都府県が実施、10府県が検討中
 独自に「危険ドラッグ」を規制する条例を制定する自治体が相次いでいます。毎日新聞の取りまとめでは、鳥取を含み9都府県で制定されています。さらに、少なくとも10府県が制定する方針です。
 兵庫県は鳥取県と同様、成分を特定しないで、危険ドラッグに指定されていない薬物について販売店などを規制できる条例を制定しました。京都府も、成分を特定せず販売店と購入者に譲り受け書類の提出や保存の義務付けなどを盛り込むことを検討しています。静岡県は事件や事故などで使用された薬物の販売停止や回収を緊急的に命じる勧告を盛り込む方針です。中学校や高校、大学などの周囲200メートル内で販売店開設を禁じることも検討しています。
 特に注目なのは、2013年4月に和歌山県が新たに定めた「薬物濫用防止条例」と「知事監視製品制度」です。この知事監視製品に指定するには、インターネット上の情報を参考にすることができ、2週間程度の素早い対応が可能です。監視製品に指定されると、様々な義務が課せられます。
 取り扱い業者は、知事監視製品販売業の届け出、購入者への使用説明書の交付・使用方法の説明、購入者から「誓約書」の受け取り、知事監視製品の「仕入れ記録」作成、購入者の「誓約書」と「仕入れ記録」を3年間保存などが義務づけされます。購入した者は、販売業者への誓約書の提出、誓約内容を遵守することが義務づけられます。また、県外の店舗やネット通販などで購入した者は、県庁薬務課などに誓約内容を記入した「購入等届出書」を提出、誓約内容及び県が交付した「説明書」の内容を遵守することが義務づけされました。
 これらの義務を守らないと、業者に対しては警告や罰金20万円以下の罰則が、購入者には警告や罰金5万円以下の罰則があります。
 いずれにせよ、こうした地方の動きに対して、国はさらに積極的な規制策を講ずるべきです。