イメージ 日本人の死因1位のがんへの理解を子どもの時から深めるために、文部科学省は、小中高校でがん教育を行うための指針作りを進めることを決定しました。医療や教育関係者、がん経験者らによる教育内容の検討会を設置。文科省は今年度から「がん教育」のモデル事業をスタート。全国22地域70の小中高校で実施されています。来年度以降、教材を作成するとしています。
 日本人の2人に1人ががんになるとされていますが、検診の受診率は伸び悩んでいます。また、がんに対する間違った認識も払拭することが出来ていません。
 がんについては、学習指導要領に基づき、小学校高学年、中学校3年、高校の保健分野で生活習慣病の一つとして取り上げられていますが、「がん教育」に焦点を絞った授業は、ほとんど行われていません。
 今回、文科省では、がんや患者に対する正しい知識は「基礎的な教養」と位置づけました。
 検討会では、がんについて、喫煙や運動不足といった生活習慣や遺伝性など多様な原因がある、日本人の死因1位で、一生の間にかかる可能性が高まっている、規則正しい生活や運動などが予防につながる、早期発見で治る可能性が高い、患者への偏見をもたない――といった内容を、子どもの発達段階に応じてどのように教えるか議論することになります。
 指針には、小児がんの知識や、家族にがん患者がいる場合などの配慮も盛り込む予定です。授業は基本的に教員が行いますが、医師やがん経験者らを外部講師として招くなどの工夫も検討します。
 検討会ではモデル授業の効果や課題を検証し、指針作りに反映さます。現在、道徳や総合学習の時間などで取り上げている例も参考にします。
大阪府でも中学校で「がん教育」実施へ、27年度から順次拡大
 がんについての正しい知識を教え、いのちの大切さを考える「がん教育」が、大阪府でも平成27年度から始まることになりました。10月8日の大阪府議会本会議で公明党の三宅史郎議員の提案に対して、大阪府の上家和子・健康医療部長が実施の方針を表明しました。
 大阪府は「がん教育」を27年度のモデル事業として予算化し、複数の中学校で実施する方針です。医師などの専門家を講師として派遣し、実施後は効果を検証した上で対象を拡大する方針です。
 三宅府議は本会議で、「大阪府がん対策推進条例を踏まえ、昨年1月には柏原市の中学で東大病院・中川恵一准教授を講師に迎え「がん教育」が開催された。今年度は文科省委託事業として芥川高校をモデル校に、がん教育の在り方研究が始まった」「今後、がん教育推進のためには、府としても積極的にモデル事業を実践し、課題の洗い出しやノウハウを蓄積すべき。そこで27年度は、府独自の取り組みとして中学校にも広げるべき」と提案しました。
 これに対し健康医療部長は、1.がんの予防、早期発見の推進には、子どものころから身を守るための知識や方法を身につけることが重要、2.25年度からがん対策基金を活用して、がんの予防につながる学習活動に先駆的な取り組みをしている団体を支援.3.27年度の府独自事業については、新たに中学校における「がん教育」の実施に向けて検討したい、と答弁しました。
 都道府県レベルで独自事業として「がん教育」を展開しているのは、京都府や秋田県などがありますが、大阪府が実施を表明したことで、自治体の「がん教育」は一層、進展、国の「がん教育」全国展開に向け拍車をかけるものと思われます。