どうのようなマタハラを受けましたか? 妊娠をきっかけにした人事異動に伴って降格させられたのは男女雇用機会均等法に違反するとして、女性が職場に損害賠償を求めた裁判で、最高裁は「原則違法」との判断を示しました。その上で、例外となるのは本人の自由な意思に基づく明確な同意や、業務上必要な特段の事情がある場合との基準を明示しました。
 妊娠・出産を理由にした不利益な対応や嫌がらせを受ける「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」の撲滅に向け、大きな弾みとなる判決です。全ての事業者がこの判決を重く受け止め、自らの職場を再点検すべきです。
 職場でのマタハラに苦しむ女性は少なくありません。昨年度、各地の労働局に寄せられたマタハラの相談は2090件に上っています。相談せずに泣き寝入りする人も考えられ、「氷山の一角」にすぎないでしょう。
 マタハラが横行する要因の一つは、家庭よりも仕事を優先するのが当たり前といった男性中心の働き方を求められる職場の雰囲気が大きいといえるのではないでしょうか。このため、結婚した女性が妊娠をためらったり、妊娠後も残業などで無理を続け、流産してしまうケースもあります。改善するには経営者や上司の意識改革が不可欠なのです。
 子育てに積極的な男性、いわゆる「イクメン」は社会に浸透しつつありますが、こうした意識を持つ上司「イクボス」も増やしていく必要があります。
 女性が働きやすい職場は、男性も働きやすいはずです。仕事と育児を両立できる職場は、優秀な人材の確保や生産性の向上につながり、企業にとっても利点があります。女性が安心して妊娠・出産できる職場づくりを広げる必要があります。
 政府はマタハラ防止に向けた取り組みを、しっかりと後押しすべきです。まずは均等法の周知徹底や相談体制の拡充に一段と力を入れてるべきです。事業者への指導・監督も強化しなければなりません。
 国会では、公明党の佐々木さやか参院議員が、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に理解を示す管理職の育成などマタハラを防ぐ行動計画の策定を企業に義務付けるべきだと提案しました。女性が活躍できる環境を整えるため、政府は具体策を検討しなくてはなりません。
参考:働くみんなのマタハラ手帳(連合)