広島の土砂災害 11月12日、8月の広島市での土砂災害を受け、危険性が高い地域であることが住民に伝わりやすくなるよう対策を盛り込んだ改正土砂災害防止法が、参議院本会議で全会一致で可決、成立しました。
 8月の広島市の土砂災害では、被害にあった地域の多くが土砂災害警戒区域に指定されておらず、その危険性が住民に十分には伝わっていなかったとの指摘が出ていました。このため改正土砂災害防止法では、指定の前提となる基礎調査が進まない都道府県に対し、国が是正要求を行うとともに、住民に土砂災害の危険性をいち早く伝えるため、基礎調査の結果の公表を都道府県に義務付けています。
 全国には土砂災害の危険箇所が52万カ所以上もありますが、警戒区域に指定されているのは35万6380カ所(8月末時点)にとどまっています。ちなみに、茨城県では土砂災害危険箇所は4079箇所、警戒区域指定は2216箇所で指定率は54.3%です。
 指定が進まない原因の一つは、基礎調査を行う財源や人手の不足があります。自治体は国の防災・安全交付金をより積極的に活用すべきです。政府は十分な予算措置や技術的な支援など、自治体を強力にバックアップすべきです。
 また、指定によって自宅の資産価値の低下を心配する住民もいます。しかし、豪雨の増加などで土砂災害の危険性は高まっています。自治体職員のOBを活用して説明会を増やすなど、住民の理解を深める努力を尽くすべきです。
 国会審議で太田昭宏国土交通相は「基礎調査は5年程度で完了させたい」と答弁しています。各自治体の進捗状況を定期的に公表し、調査の早期完了を促しすことが望まれます。
 改正土砂災害防止法では、都道府県と気象庁が発表する土砂災害警戒情報について、市町村や住民への伝達・周知が義務化されました。
 肝心なのは、警戒情報が住民の避難に生かされるかどうかです。広島や昨年の伊豆大島の土砂災害では、警戒情報が自治体の避難指示・勧告に結び付きませんでした。
 国交省によると、「警戒情報が発表された時、避難勧告を発令する」と定めている自治体は、わずか4%にすぎません(昨年3月末時点)。現在は一定程度増えていますが、発令が遅れれば被害の拡大に直結します。市町村は“空振り”を恐れず、警戒情報が発表されたら直ちに避難勧告に踏み切るべきです。
 避難場所や経路に危険な箇所がないか、総点検が必要です。住民の意識を高める防災訓練にも力を入れなくてはなりません。繰り返される災害の教訓を生かし、対策の実効性を高めていきたいと思います。