茨城県では、今年5月に策定した「いばらきエネルギー戦略」を契機に、水素社会の到来に向けて、県民に水素利用についての理解を深めてもらうとともに、関係者が一体となって茨城県の特性を活かした水素利用の具体化を図るため、水素利用シンポジウムを開催しました。
 12月20日、日立市十王町のゆうゆう十王で行われたシンポジュームには、12月15日発売されたトヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」の展示、試乗会が行われました。MIRAIは世界初の量産化燃料電池自動車(FCV)です。“究極のエコカー”とも称されるFCV。FCVの特徴とその普及の課題をまとめておきたいと思います。

究極のエコカーとも称されるFCV(燃料電池車)
 FCVとは「Fuel Cell Vehicle」の略です。車両に充填した水素と大気中から吸い込んだ酸素を化学反応させ、発電する「燃料電池」を搭載しています。その燃料電池の電力でモーターを動かし走る自動車です。走行中に排出するのは水のみで 、環境汚染のもととなる二酸化炭素や有害物質を排出しません。
 さらに、エネルギー源となる 水素は地球上にほぼ無限に存在しています。石油やLNG(液化天然ガス)、バイオマス、汚泥など、さまざまな物質に含まれ、水を電気分解して作ることも可能です。電気に比べて貯蔵や運搬が簡単という利点もあり、環境性能に優れている点が最大のメリットです。
 また、FCVは、モーターで走るので騒音や騒音が非常に少ないことが利点です。さらに、電気自動車よりも充填時間が短いことです。MIRAIの充填時間は1回あたり3分程度で、約650キロ走行できます。ほぼガソリン自動車と同じレベルです。

FCV普及の課題は水素ステーションの整備
 ガソリン自動車がガソリンスタンドで燃料を補給するように、FCVは水素ステーションで水素を補給します。水素ステーションの建設費用は1基あたり5〜6億円程度かかるとされ 、その設置のコストが最大の課題です。MIRAIの国内販売は水素ステーションの設置が予定されている地域、およびその周辺地域を中心にスタートするよていです。整備予定地域は、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、山口県、福岡県です。残念ながら茨城県は現時点で整備の計画はありません。
 経済産業省が掲げる水素ステーション設置目標数は、2015年度までに国内100カ所。FCV普及の鍵は、利用者の身近な場所に水素ステーションを設置できるかどうかになりそうです。
 また、燃料となる水素自体が高額という課題もあります。そのため、水素価格をガソリン並みに下げるために官民で資金を出し合う取り組みが協議されています。岩谷産業は今月、「イワタニ水素ステーション」における水素価格を1kgあたり1100円と発表し話題となりました。岩谷産業の試算では、ハイブリッド車並に約750キロ走行するには約5キログラムの水素を必要とし、満タンにするコストは5500円程度だとしています。スタート段階ではハイブリッド車より燃料代は割高になると考えられます。(ちなみに井手よしひろ県議が運転しているプリウスは、満タン5000円前後で900キロ程度走行できます)

高額な車体価格、手厚い国・自治体の支援策が必要
 今回発売されたMIRAIの販売価格は723万6000円(消費税込み)です。プラチナを使う燃料電池の製造にコストがかかるため、まだまだ庶民に手が届く金額とはいえません。しかし、経済産業省から202万円の購入補助金が支給されるので、実際の負担額は約520万円 になります。東京や愛知県では自治体の補助金が100万円出ますので、この地域は420万円です。(愛知県の補助金は75万円)これは、トヨタのクラウンと同等以下の価格です。
 トヨタに次いで、ホンダも2015年度中にFCVを販売すると発表しています。普及への課題は残りますが、当たり前のようにFCVが走るすがたが、目前に迫っています。

水素社会の実現へ、燃料電池車の普及めざす
都議会公明党 補充ステーションを視察

公明新聞(2014年03月26日)
 究極のエコカー(環境対応車)と呼ばれる水素で走る燃料電池車(FCV)の普及に向け、都議会公明党(中島義雄幹事長)はこのほど、燃料を補充できる東京都杉並区の水素ステーションを視察し、課題を探った。
 一行が訪れた水素ステーションは、自動車メーカーなどで構成する水素供給・利用技術研究組合(HySUT=ハイサット)の「水素ハイウェイプロジェクト」の一環として設置された施設。運営はJX日鉱日石エネルギーが行っている。
 この日は、燃料電池車に水素を補充する様子や施設内を見て回ったほか、同車の普及に向けた取り組みなどについて、同社の担当者と意見を交わした。
 燃料電池車は水素を酸素と反応させて電気をつくる仕組みで、走行中の二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出はゼロ。1回の充電で百数十キロメートル程度走る電気自動車(EV)に比べ、走行距離もガソリン車並みの見通しだ。エコカーの本命と期待されるが、同社の川上敦司担当マネージャーは、「車両コストの高さと水素ステーションなど補給網の整備が課題」と指摘する。
 国は2015年に燃料電池車を実用化する目標を成長戦略に掲げ、15年までに国内に100基の水素ステーションを設置する計画。
 また、水素は天然ガスやガソリンなどの燃料に比べて、空気中に漏れた場合に着火、燃焼しやすい。川上担当マネージャーは「正しい使い方をすれば、既存燃料と同様に安全」と、水素の安全性を強調する。このため、同ステーションの場合は、水素が滞留しないよう屋根のない構造を採用。敷地を厚いコンクリート塀で囲って安全を確保している。その上で、水素漏えい検知器などを取り付け、安全配慮に努めている。
 一方で、燃料電池車は、災害時の非常用電源としての役割も期待されている。一般家庭だけではなく、避難所となる公共施設に電力を供給できれば、災害時に多くの人を助けることも可能だ。
 視察を終えた小磯善彦都議は、「水素は資源の少ない日本にとって、次代を担う可能性を秘めたエネルギー」と強調。「水素社会の実現に向け、全力で取り組む」と語っていた。