経済的支援の拡大や日本版ウネボラ「子育て世代包括支援センター」の整備
150222image 政府の少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」の見直し論議が、内閣府の有識者検討会で進められている。検討会が近くまとめる提言を基に、政府は3月末までに新大綱を閣議決定する予定です。
 人口動態統計の年間推計によれば、2014年の出生数は過去最少の100万1000人。死亡数から出生数を引いた人口の自然減は26万8000人となり、減少幅は過去最大を記録しました。少子化に歯止めがかからなければ、人口減少が加速し、地域の活力は損なわれ、社会保障制度の土台が揺らぎかねません。
 少子化の原因には、若者の雇用の不安定化や晩婚化などの問題が複雑に絡み合っています。子どもを産むかどうかは個人の判断を尊重すべきですが、産み育てやすい環境づくりは社会全体で進めなければなりません。
 安心して子どもを産めない理由の一つが、経済的負担の重さです。特に、子どもが3人以上の多子世帯になると、食費や教育費などを含め、さまざまな支出が増えます。ある調査では、第3子以降を産まない理由に「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ことを挙げた人が最も多くありました。
 検討会では、多子世帯への配慮として、買い物で割引サービスを受けられる「子育て支援パスポート事業」の充実や、公共交通機関での料金負担軽減の必要性が議論されています。自治体や企業、交通機関などから、どのような協力を仰ぐことができるか、多子世帯の支援策について、あらゆる可能性を探すべきです。
 妊娠から育児期間までを切れ目なく支援する仕組みづくりも重要になります。現在は、医療機関や市町村の保健センター、保育所といった各機関が縦割りで親子に対して支援を行っているが、それぞれの連携は必ずしも十分ではありません。
 検討会の議論で対策の一つとして注目されているのが、ワンストップ拠点「子育て世代包括支援センター」です。日本版子育て世代包括支援センターには保健師や助産師、ソーシャルワーカーを配置し、1カ所で幅広い相談内容に応じることができます。国が示している地方創生メニューにも取り上げられている政策であり、早急な整備に向けた議論を期待したいと思います。

地方の市町村の先進的事例:鹿嶋市の“子宝手当”
 多子世帯の支援は、地方の市町村に先進的な取組がみられます。鹿嶋市は、子どもを3人以上養育する世帯に、第3子以降1人当たり月額2万円を給付する「子宝手当」事業を、この4月から導入します。ただし初年度は未就学児だけを給付の対象とし、翌年度以降から順次、年齢を15歳にまで引き上げます。3人目の子どもには合計で360万円の支援が受けられる計算になります。
 「子宝手当」は、子育てに関わる市民の経済的負担を軽くして出産・育児に取り組みやすくするのが狙いです。昨年4月の市長選挙で就任した錦織孝一市長が選挙公約に掲げ、「第3子以降の子育ては行政が面倒を見る」として、検討を進めてきました。
 鹿嶋によると、支給人数は初年度は約550人で、その後は最大で約980人となる見通しです。事業費は初年度1億3200万円、最大時2億3600万円程度と見込んでいます。
 事業費の財源について、市では全般の事務事業見直しで捻出するほか、財政調整基金取り崩しで賄う方針です。ほかに2013年度から行っている第3子への出産祝い金(10万円)制度「元気赤ちゃん応援事業」を廃止し、それによって浮く840万円も充当します。

フィンランドの子育て支援施設「ネウボラ」
 日本では、妊娠が分かったとき、まず産婦人科の病院に行きます。その後母子手帳をもらいに市町村の窓口に、母親学級があれば保健所と、必要に応じて様々な機関に足を運ぶ必要があります。出産後は、今度は小児科や保育園・幼稚園、市町村、保健所…と相談先は多岐に分かれます。
 一方北欧の子育て先進国・フィンランドでは、どの自治体にも「ネウボラ」という子育て支援を行う施設があります。ネウボラとは、フィンランド語で「ネウボ=アドバイス」「ラ=場所」という意味。アドバイスを受ける場といったニュアンスです。妊娠から出産、子どもが生まれた後も基本的には6歳まで切れ目なくサポートを提供する総合的な支援サービスです。ネウボラには保健師や助産師がおり、ネウボラで支援をするための特別な教育も受けています。
 ネウボラには、まず妊娠が分かったときから行き始めます。妊娠の兆候があったら病院ではなく、自分の地域のネウボラへ行きます。健診は無料で、妊娠中は6〜11回健診に通います。健診では医療的なチェックだけでなく、妊婦の不安や悩み、さらには家族の状況まで面談で細かに聞き取りが行われます。夫も何度か一緒に参加する必要があり、夫婦の関係から経済状況、子どもを迎えることへの不安などまで聞き取りされます。
 ネウボラでの個別の面談が重視されます。1回30分〜1時間程度の面談時間がとられ、プライバシーの守られる部屋で。毎回同じ担当者と話をします。面談の結果、必要があると判断されれば、医療機関、自治体の担当者、児童施設などに連携が取られます。その時々で必要な情報もそれぞれの機関できちんと共有されます。
 出産は病院で行いますが、産後からまた子どもやお母さんの健診はネウボラを中心に行われます。日本では出産までは産婦人科、産後は小児科など健診に向かう先も変わってしまいますが、フィンランドではネウボラがそれら全てを受け持ちます。通常、産後から1歳までの期間では、ネウボラでの健診は保健師によるものが10回、医師によるものが3回。歯科検診などを受けたりできます。
 ネウボラには乳幼児が遊べるスペースもあり、親子で散歩がてら立ち寄って遊ばせたり、そこに来ている他の親子と交流したりする場にもなっていいます。
 こうした子育て施設の充実で、フィンランドは1.8(2012年)と比較的高い出生率を維持しています。その一方で、初婚カップルの約3分の1以上が5年後には別離・離婚している実態もあり、未婚の母も決して少なくありません。結婚していないカップルでも婚姻カップルと同じような権利が認められるフィンランドでは、こうした支援が誰でも無料で提供されることに特徴があります。