イメージ 総務省は、全国の自治体に2017年度までの3年間にICT(情報通信技術)を活用した固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を求める通知を出しました。併せて、財務書類の作成手順や活用方法を統一的基準で示した「地方公会計マニュアル」も公表しました。
 今後、多くの自治体が採用している現金の増減のみを記録する「現金主義・単式簿記」は、取引の発生ごとに記録する「発生主義・複式簿記」に移行されることになります。
 公明党が自治体への複式簿記の導入や情報提供などの支援措置を求めていたものが反映されものです。各国で複式簿記の導入が広がる中、日本も制度改革が動き出すことになります。
 こうした公会計改革の意義には3つのポイントがあります。
 第一が「財政の視える化」です。現行の予算・決算制度は、予算の適正・確実な執行を図るという観点から現金主義会計を採用しています。ただ、これでは歳入や歳出といったフロー情報(会計期間の取引高)は把握できても、資産や負債といったストック情報(ある一時点の財政状態)を十分に把握することができません。財政の透明性という点では情報が不十分です。そこで、発生主義でストック情報やフロー情報を総体的、一覧的に把握する。つまり財政を「視える化」しようというものです。
 第二のポイントが、「将来コストの把握」です。これまでは減価償却費や引当金などをコストとして把握する仕組みがなく、公共施設の建設に要する投資額には留意しても、その建物の使用を中止・廃止するまでにかかるライフサイクルコストはまったく意識してきませんでした。例えば、LED照明は価格は高いが、同じ明るさの普通の電球に比べて消費電力が少なく、寿命は長い。つまり「ライフサイクルコスト」で考えれば、LED照明の方が安上がりだと判断できます。そうした将来発生するコストも把握し、中長期的に財政へ与える影響を考えられるようにしようというものです。
 第三のポイントが、「資産の把握」です。地方自治法では公有財産台帳の整備が義務付けられていますが、道路や河川などは、それぞれ個別法に基づく台帳で管理されています。また、これらの施設に関するデータは各所管課に分散され、一元的な管理となっていません。全庁的な視点から資産活用を考える上でも、所有する全ての固定資産を棚卸しして固定資産台帳を整備し、取得価額や減価償却費などの情報をもとに正確な資産額を把握していこうというものです。
 結果的に、公会計制度の改革によって、財政運営の透明化を実現し、行財政に対する住民の信頼感を高めることにもつながります。
 ただ、多くの自治体が採用している公会計制度のうち、財務書類の作成に必要な固定資産台帳は75%以上の自治体で未整備です。複式簿記についても採用している自治体は少ないのが現実です。職員に専門性が求められることや、移行時の財政負担などが主な理由です。
 総務省は、会計ソフトウエアの提供や固定資産台帳整備のための財政支援、自治体職員への研修などの負担軽減策を実施します。今後は、各自治体での確実な導入に向けて地方議員も導入へのリード役を務めなくてはなりません。

参考:統一的な基準による地方公会計マニュアル(総務省:2015/1/23)