5月28日の衆院平和安全法制特別委員会で行われた公明党の北側一雄副代表の質問と、安倍晋三首相ら政府側答弁から、自衛隊海外派遣の3原則についてまとめました。

安全保障における原理・原則・視点
自衛隊海外派遣、公明党が3原則を主張
 また、北側副代表は今回の安全保障法制の整備、安全保障において、“原理”、“原則”、“視点”、この三つがあることを指摘しました。
 “原理”とは、憲法適合性のことです。憲法9条、また憲法13条との適合性を当然持たなければならなりません。
 憲法9条は、武力による威嚇または武力の行使をしてはならないと規定しています。一方で憲法13条は、国民の生命、自由、幸福追求の権利は国政上、最大の尊重を要すると規定しています。その13条から自衛の措置が認められています。
 その自衛の措置の限界を示したのが、昨年7月1日の閣議決定の新3要件です。
 この憲法適合性があるからといって、自衛隊を、憲法に適合すれば全て派遣するということではありません。
 次は法制度。自衛隊という実力組織を出す以上は、そこに法律上のできるだけ明確な根拠がないといけません。今回の安保法制もここの部分の整備です。
 この法制度をつくるに当たっては、やはり“原則”あるということで、自衛隊の海外派遣3原則ということを、公明党は主張しました。この自衛隊海外派遣の3原則は、1番目に国際法上の正当性の確保、2番目に国会の関与など民主的統制、3番目に自衛隊の安全確保。この3原則を、個々の法制の中でそれぞれについて具体的に法制化をしようと、公明党は主張したのです。
 では、制度があって、要件が満たされれば必ず派遣するのかといえば、これまたそうではありません。その時々の政策判断があります。その判断は、その時の内閣、国会が行います。制度ができたからといって、要件に当てはまれば必ず自衛隊を派遣するということでは決してありません。
 憲法に適合しているか(原理)、そして法制(原則)、そして制度があったとしても政策判断が必要(視点)。この三つの段階が自衛隊の海外派遣の決定にあります。
政策判断の3つの視点
 さらに、三つ目の政策判断にも私は一定の視点があると考えます。
 第1に、わが国の主体的判断だということです。よく批判として、アメリカの要請があれば断れないのではないか、だとか、アメリカから言われれば地球上どこでも後方支援するとか、こうした批判があります。しかし、ここはあくまでわが国の主体的判断。わが国の国益にとって、どうなのかという判断があり、またその時の国際情勢がどうなのか、その事態に国際社会はどう対処しようとしているのか、わが国はどういう役割を果たしていくのがいいのか。こういう判断をしないといけません。
 また当然のこととして、国内の世論の支持がなければ自衛隊の派遣はできない。それらを考慮して国が主体的に判断をしていくということです。
 第2に自衛隊にふさわしい役割があるかということです。自衛隊の能力、人員、装備、これまでの経験・実績。そういうものを踏まえて、自衛隊にふさわしい役割があります。自衛隊の得意分野もあります。さらに予算面でも制約があります。自衛隊にふさわしい役割が何なのかということも、当然、時の内閣、国会は検討しないといけません。
 第3に平和外交努力です。平和外交努力と今回の安保法制整備は目的が一緒です。紛争を未然に防止する。また紛争があるならば、それを拡大させない。平和外交努力と安保法制整備による抑止力の強化が相まって紛争の未然防止につながってくる。非軍事分野での貢献活動も日本はしっかりやっている。そうした貢献活動についてはどうなのかと、こうしたことを考えて政策判断をしていくことになります。

安倍首相「(平和安全法制)法律をつくったとしても、これはやらなければならないということではもちろんない」
 北側副代表の質問に対し。安倍首相は以下のように答弁しました。
 法律をつくったとしても、これはやらなければならないということではもちろんない。できるというだけで、その上に立って、慎重な慎重な政策判断がある。
 このいわば3段階になっているということは、はっきりとさせておく必要がある。残念ながらこれが混同された議論が横行しているわけで、法理上は、これはでき得るという答弁をすると、いきなりそれをやるのだと(報道の)紙面に踊る場合があるわけだが、そもそも能力も想定もしていないことは、これは起こり得ないわけだ。
 そこで第1に、憲法適合性に関しては、自衛隊の活動が武力の行使との一体化を防ぐ仕組みなどにより、武力による威嚇または武力の行使に当たらないことを確保している。その例外は、新3要件を満たす場合の自衛の措置に限られる。
 そして第2に、自衛隊の海外派遣に当たっては、国際法上の正当性の確保、国会の関与等の民主的統制の確保、自衛隊員の安全確保のための措置、これは“北側3原則”といわれているものだが、平和安全法制において、法律上の要件として明確に定めているところだ。
 第3に、この法制に基づいて、自衛隊が実際に活動を行う場合には、まずわが国の主体的判断の下、自衛隊の能力、装備、経験に根差した自衛隊にふさわしい役割を果たすが、その前提として外交努力を尽くすことを重要な視点として政策判断をする。この3点を基本的な判断基準としていきたい。

自衛隊派遣の3原則