リーサス 地方創生のための様々な政策を立案する際、とても便利なツールが、政府が4月に公開した地域経済分析システム「RESAS」(リーサス)です。リーサスは、行政や民間事業者が持つビッグデータを集約し、分かりやすく視覚化したもの。自治体だけでなく、地域の未来に関心を寄せる住民にも活用の輪が広がっています。
企業間取引など 統計データを地図に描画
 リーサスの分析メニューは「産業マップ」「人口マップ」「観光マップ」「自治体比較マップ」の4つで構成されています。

◆産業マップ
 産業マップは、帝国データバンクが提供する企業間取引の情報を視覚化したものです。産業構造の全体像を示す「全産業花火図」、産業分野ごとに他地域とのつながり(取引関係)を示す「産業別花火図」、企業単位でのつながりを示す「企業別花火図」の三つで構成されています。企業間取引の流れを描いた様子が花火のように見えることから名付けられました。
 産業マップでは、雇用者数や他地域から呼び込んだ資金量などが分かり、地域への貢献度や影響力が強い産業を把握できます。
 群馬県太田市は、既にリーサスで地域経済への波及効果が大きい企業を選別し、支援策の検討を開始しました。東日本大震災の前後で企業間取引のあり方が変わった福島県では、つながりの強い地域を調べ、新たな販路開拓などを進めるための作業を始めていいます。
 地域経済の実態を分かりやすく視覚化した産業マップは、関係者から「画期的」との評価を受けているが、情報提供に協力した事業者への配慮が必要なことから、守秘義務に関する誓約書を提出した自治体の職員のみが使うことができます。残念ながら担当職員以外の閲覧は出来ません。
 利用申請は既に、全ての都道府県と96%以上の市区町村から出されており、今後も、広く活用されると見込まれています。
◆人口マップ
 産業マップを除く3つのマップは、インターネット上に公開されているため、誰でも利用できる。(ただし、インターネットブラウザは“クロム”しか対応していません)
 政府の人口推計データを収めた人口マップでは、例えばある自治体の「2040年の5〜9歳の人数」などと条件を定めてデータを表示できます。このため「自分の子どもが通う小学校が将来1クラス5人程度になる」といった予測なども可能です。さらに、人口分析について隣接する市区町村との合計数なども示すことができるので、他地域と協力して、地域の実情にあった小学校数などの検討に活用されることが期待されます。病院や医師数など、地域に必要な社会インフラをどれだけ整備するかといった議論の土台にもなります。

◆観光マップ
 国内全域を500メートル四方に分割し、そのエリアに1時間当たり何人いたのかを月別・時間帯別に見ることができる観光マップは、地域住民や観光業関係者から高い評価を得ています。
 観光マップは、民間事業者から政府が購入した携帯電話の位置情報を基に作成。例えば、商店街の店主が、商店街周辺は、どの時期の、どの時間帯に客が多いか、などを調べることに活用できます。こうした携帯位置情報に基づく人の流れの分析は、これまで携帯事業者から有料でデータを買わなければなりませんでしたが、リーサスでは誰でも、どこでも、いつでも無料で使用可能です。
 北海道小樽市は、既に観光客の多い地域と少ない地域を割り出し、具体的な改善策を検討しています。

◆自治体比較マップ
 黒字企業比率や一人当たり賃金、創業比率などの項目で、自分の自治体が県内や全国で何位なのかが分かる自治体比較マップは、自治体の目標設定や政策効果の検証に有効です。自治体比較マップでは、各項目における「全国上位10市区町村」も同時に表示される。このため、政府が推奨しているのが、中小企業庁のポータルサイト「ミラサポ」との併用です。自治体比較マップサイト内の施策マップでは、「広島県広島市」の「創業支援策」などと、地域、政策分野ごとに、国、都道府県、市区町村の施策が一覧で表示されます。さらに行政の担当者の連絡先も表示されるので、創業比率が高い地域の政策を知り、必要なら担当者に話を聞くといった作業が効率的に進められます。
参考:地域経済分析システム「リーサス」