150723hitachi_jinko001 7月23日、井手よしひろ県議は日立市内で女性団体の研修会で「日立市の人口減少と地方創生の課題」と題し講演を行いました。
 このブログでは、その資料を公開します。

 日立市では人口減少に歯止めがききません。特に、社会減では2年連続全国ワースト2という不名誉な結果になりました。
 こうした中、日立市では『自ら地域を創生する』という考えから、「地域創生本部」を立ち上げ、人口減少問題と地域の活性化に取り組むこととしました。
 そのため、市議会や幅広い分野から多くの人材の参画を得て、「有識者会議」を設置しました。その意見を参考に、人口の動向や将来展望を示す「地方人口ビジョン」と今後5年間で実施する具体策などをまとめた「地方版総合戦略」の策定を進めています。

 2040年の人口推計は、社会保障人口問題研究所の推計を準拠すると14万1145人。日本創生会議の推計では13万2449人となります。現在日立市では、「出生率は現実的な数値、若年層の転出抑制、転入促進の施策に力点を置き、15万人以上を人口目標とする」としています。
 しかし、2015年7月1日付けの実数を比べてみると。社人研や日本創生会議の推計よりも3000人余り少なくなってしまっています。(推計値18万6664人、実数18万3465人、その差マイナス3199人)
 人口目標の設定にあたっては、より慎重な取組がどうしても必要です。
日立市の人口推計
日立製作所に元気がないので人口減少が止まらない?
 さて、「なぜ若い女性は日立からいなくなったのか?」という命題に、いくつかの仮説を立てて考察を加えてみました。
仮説−1は、「日立の人口減少は、日製の元気がないから(考え方が変わったから)」というものです。
 しかし、産業別の従業員数を2009年と2013年で比べてみると、意外な事実が浮かび上がります。
 全体の従業員数は9万6595人から9万2913人に3682人減少しています。しかし、日立製作所(日製)を中心とする製造業の従業員数は、2万3921人から3万532人と1211人(4.13%)も増えているのです。これに対して、小売業・卸売業、各種サービス業は軒並み大幅な減少となっています。
 これは何を意味するのか。一つは、日立の人口減少は製造業の衰退であるといった単純なものではなく、日立市内の小売業やサービス業など第3次産業の深刻なメルトダウンが進んでいるということです。二つに、かつて日製が進めてきた職住一体の環境が全く崩壊してしまい、職は日立で、住は周辺の東海村やひたちなか市でという選択が一般化したということです。
 また、こうした通説を検証するために、日製関連会社の女性社員の採用状況やいわゆる女子校と呼ばれる高校の進路状況などの調査が不可欠であると強調します。
産業別の従業員数の変化
 仮説その2は、「住宅政策の失敗」があったのではないかと言うことです。1990年代から2000年代にかけて、安くて良質な戸建て住宅を提供できなかったことにより、多くの若い層が日立以外に新居を求めました。今後は、日立市内にある良質の空き家の積極的な活用などが求められます。子育て支援やシングルマザー支援、女性(子ども)の貧困対策等のために、家賃補助やシェアハウスなどの整備を検討することも重要です。
 なお、日立市では、具体策として中古住宅の改修に助成金を出すことを決めています(20万円〜30万円)。

 仮説3は、「貧弱な子育て支援策」です。日立市では今年10月から、子どもの医療助成(マル福)が入院も外来も中学校卒業まで拡充されます。しかし、これは、茨城県内では最低レベルです。すでに、常陸太田市、古河市、結城市、常総市、鹿嶋市、筑西市、大子町が高校3年生までのマル福拡充を実現しています。
 日立に隣接する常陸太田市では、新婚でアパートに入居すると月2万円を3年間支給します。入居時には敷金・契約金に充当できるよう6万円を支給します。赤ちゃんが生まれると月2間年のおむつ手当が支給されます。
新築にも20万円の補助が出ます。
 県西の古河市では新築に100万円の補助を出します。日野自動車の本社工場の移転が決まり、一挙に新築需要が高まるために、より多くの新住民を獲得するための政策です。100万円出しても10年住んでもらえば、固定資産税や都市計画税で元が取れる、という割り切った発想です。
 金銭的な子育て支援の充実策は、市町村間の過度の競争を生むとの批判もあります。しかし、これは福祉の全体的なレベルアップに通じていくと確信します。
子育て支援策の比較
 仮説その4は、「教育環境の充実の遅れ」です。学校耐震化整備は県下ワーストクラス、普通教室へのエアコン設置の遅れ、英語教育への対応の遅れ、パソコン(ICT)教育の遅れ(反転授業)、小中一貫校への対応の遅れなど、日立の教育環境は整備が遅れてしまいました。しかし、その中でも日立一高の中高一貫教育への移行はなどの成功例もでています。
 当面は、小中一貫校の整備計画を早急に作る必要があると思います。
日立再生への処方箋
 その他、当然ながら働く場、自己実現の場を日立に創ることが人口減少対策の繋がることは当然です。
 容易ならぬこうした課題に、1.日立はお金がないから新たな事業が出来ないという発想を変える。2.外部の力を積極的に使う。3.感動分岐点を明確に大胆な施策展開を。4.「PDCA」サイクルから「DPSE」サイクルに仕事のやり方を転換しよう。と4つの提案を行い、講演を締めくくりました。

参考:日立市の人口減少と地方創生の課題(PDF)