トモスみとビル 今年(2015年)4月より、茨城県立こころの医療センターでは、院内に「睡眠医療センター」を開設し、睡眠障害への積極的な対応をスタートさせました。
 従来より、こころの医療センターの土井永史院長が、精神科診療の傍ら睡眠障害の診療を行ってきました。睡眠障害に関する病気は、不眠症、過眠症、ナルコレプシー、むずむず足症候群など100以上あります。その中でも、最も患者数の多いのが睡眠時無呼吸症候群(睡眠呼吸障害)です。
 こころの医療センターでは、呼吸器内科医で睡眠呼吸障害診療の権威である佐藤誠医師をセンター長に迎え、本格的な治療体制を整えました。
 佐藤センター長は「“惰眠をむさぼる”という表現があるように、睡眠は無駄なものといわれてきましたが、睡眠障害が高血圧、心臓病、糖尿病、腎臓病など全身の疾患にかかわるだけでなく、うつや小児の不登校など精神疾患にかかわることも明らかになってきました。県内の医療関係者だけでなく、保健、教育、運輸関係者とも連携して、茨城県の睡眠医療体制を充実させていきたいと思います」と、睡眠医療センターのホームページで抱負を語っています。
 また、世界トップレベル研究拠点である筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)と協力して、まだ謎の多い睡眠に関する臨床研究を推進していく計画となっています。
水戸市内に睡眠障害治療のネットワーク拠点を整備
 さらに茨城県では、睡眠医療のさらなる充実と患者の利便性向上を図るために、水戸市内に「こころの医療センター付属診療所」を平成28年度中に開設することになり、9月県議会にその準備のための予算4800万円余りを計上することになりました。新たな診療所は、水戸市大工町の“トモスみとビル医療モール”内に整備し、「睡眠時無呼吸症候群」の診断及び治療に特化して診療を行います。
 「睡眠時無呼吸症候群」(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われます。医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸と診断されます。寝ている間の無呼吸に私たちはなかなか気付くことができないために、検査・治療を受けていない多くの潜在患者がいるとされ、国内の潜在患者数は300万人とも推計されています。
この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きているときの私たちの活動に様々な影響を及ぼすこと。気付かないうちに日常生活に様々なリスクが生じる可能性があります。
 水戸市内に、気軽に「睡眠時無呼吸症候群」の検査や治療が受けられる専門診療所が出来る事で、茨城県の睡眠医療体制は大きく前進することになります。