
8月22日、「ひたち野外オペラ・マクベス」が、日立シビックセンター新都市広場で上演されました。この催しはオペラによる地域の活性化を図ろうと、日立シビックセンターや市民などが協力して開催しているもので、今回で4回目、東日本大震災を挟んで7年ぶりの公演になります。

演じられた「マクベス」はシェークスピアの4大悲劇の一つ。スコットランド武将・マクベスは、魔女の予言に惑わされ。王を暗殺。欲望にまみれ疑心暗鬼の中、最期は破滅に向かう悲劇の物語です。市民たちは魔女や貴族などそれぞれの役柄を演じ、プロの歌手たちとともに「マクベス」を作り上げました。上演時間が3時間以上に及ぶ大作ですが、上演が終わると客席からは大きなカーテンコールの拍手が送られ、「ブラボー」といった歓声が聞かれました。
マクベスを主催した「ひたち市民オペラによるまちづくりの会」は、1993年に「オペラ懇談会」として発足。以来、地域の住民が主体となり、総合芸術であるオペラを専門家と協働で制作していく過程の中で、それを担う人材を育てることで地域の活性化を図り、まちづくりにつなげることを目指し活動を続けてきました。

野外オペラとしては、「トウーランドット」、「カルメン」、「アイーダ」の過去3回を成功さてきました。今回の「マクベス」でも、オペラ制作講座の受講生が中心となり、野外オペラのPRイベントや資金集めなど様々な形で、力を結集してきました。原作にはない子役を配し講座受講生が演じたり、ダンスの振り付けを工夫したりして、一人でも多くの市民が参加できるように演出されています。

総合プロデューサーを務めた原田実能さんのパンフレットに掲載された“あいさつ”が出色です。皆さまにご紹介します。
野外劇場にようこそ総合プロデューサー 原田 実能
日が立つと書いて「音」になります。日立が音でつながるまちづくり。オペラによる日立のまちづくり。これが総
合プロデューサーを務めさせていただくと決めた時からの私の思いの中心です。
3・11の大震災の極限状況の中で、私たちは誰もがつながりの大切さを痛感しました。それでも月日が流れ、のど
もとを通り過ぎて、いつしかつながりの本当の大切さを忘れかけているかもしれない!とふっと思う時があります。
そんな思いの中で今回公演のヴェルディ作曲「マクベス」は、多くの分野の人たちがつながりを持てる作品として選び出され、プロとアマ総勢320名の共創の舞台となります。
オペラは総合芸術であり、音楽、絵画、建築、舞踊、演劇などの、さまざまな分野の人と人とのつながりが、化学反応を起こしつつ出来上がっていきます。野外という開放的な環境を活かして単に鑑賞する時空としてではなく、音楽好きな人はもちろんのこと、オペラとのご縁の無かった人や、老若男女の多くの人たちが、新都市広場の会場で舞台の表で、舞台の裏で、ひとつとなってつながる喜びを創り出し、わたしたちのまち日立の人々の、心が潤い元気になっていく姿を思い描いています。
まちづくりに終わりはありません。忘れてはいけないことは、ローマもオペラも、まちづくりも、一日にして成らず!ということです。22年前に、オペラ事業への可能性を信じて小さな動きが始まりました。これまでの3回の野外
オペラの経験と、それを可能にしてきた毎春継続してきたニューイヤーオペラコンサートと、子どもオペラ学校などの継続したアクションの積み重ねの土台の上に今があります。感謝に堪えません。
人と人とのつながりが再生され、化学反応が引き起されることこそがまちづくりであり、復興への物語が時を刻み始めると信じます。野外オペラ「マクベス」が、日立という私たちのまちの元気に火を灯すギフトになる事を願ってやみません。