松山浩一社長と井手よしひろ県議
 8月26日、井手よしひろ県議は、株式会社日立機械のひたちなか営業所を訪れ、松山浩一社長から放射性物質により汚染された土壌を減容化する装置“アースセーバー”について説明を受け、10トン車に搭載された装置を視察しました。
 “アースセーバー”は、放射性物質で汚染された土を高圧水で研磨・洗浄し、約9割を元の土壌に戻せる装置です。汚染土を1割に減容化できます。“アースセーバー”は、汚染された土が仮置きされている現場で、移動しながら減容処理が可能です。
 減容化に必要なのは、水のみです。特殊な化学物質などは一切使いません。フレコンバッグ内の土をいったん、装置内に取り込んで高圧洗浄し、土の粒の表面を削り落とします。これによって、セシウムなどの放射性物質が取り除かれます。削り出された表面の粒は、最終的に25ミクロン以下まで細分化され凝集剤で固形化。汚染部分の土は容量全体の10分の1まで減らし、残り9割の土が再利用できるようになります。
 環境省の実証実験で効果が確認され、除染で出た土壌の再利用が期待できます。環境省は今後、洗浄された土壌を再利用するための仕組みづくりを検討する方針です。
(土壌除染装置:特許第5270046号、環境省除染技術検索サイト登録:T-00031)
アースセイバー 日立機械の松山浩一社長は、もともと災害時に泥水を飲料水に変える給水装置を開発していました。日立機械の環境企画室の小林充典室長が東日本大震災後、汚染土を高圧洗浄すれば、表面の放射性セシウムがはがれ落ちることに着目。給水装置と組み合わせて2011年秋、試作品の開発にこぎつけました。移動型の土壌除染装置として13年5月に特許を取得しました。
 表土をはぐ除染作業ででた土をふるいにかけて、1.5ミリ以下のものを高圧ジェット水流で研磨して、表面に付いた放射性セシウムを落とし、洗浄後の土壌と分離、2.洗浄の際に汚染された水に専用の凝集剤を入れて、水とセシウム付着の粘土を分離、3.セシウムの塊を取り出す、という工程です。
 環境省が2014年度の実証実験を、福島県浪江町の公園で実施。1キロあたり約1万ベクレルの土壌約480キロを洗浄し、取り出されたのは2000ベクレルの約380キロだった。除染率と再利用できる割合はともに8割でした。
 その後の住民説明会でのアンケートで、除染方法について「はぎ取った土を洗浄して汚染が多少残るものの、自分の家に戻す」を選んだ人が半数を超え、建設資材として使うのに7割超が賛成したといいます。

 松山社長は「福島では真っ黒なフレコンバックに詰め込まれた汚染土が山積みされています。中間貯蔵施設の確保もままならない中で、減容化の必要性は高まっているのではないか。また、放射性物質を粒の細かい粘土質に濃縮させて、比較的きれいな砂石を取り出せれば、建設資材として活用できる。福島の復興に少しでも役に立ちたい」と、熱く語っていました。
 福島県内では現在、庭などで汚染された表土をはぎ取り、他の地域のきれいな土で埋め戻しています。はぎ取った土はすべて仮置き場などで保管され、今後、福島県内の中間貯蔵施設での保管が検討されています。
 環境省によると、福島県内の除染土などは今年3月末で700万立方メートルを超えていて、今後も増え続ける見通しです。除染土の再利用を目指す技術は他にも開発が進んでいて、防潮堤の建設資材などとして活用が期待されています。

[トップインタビュー]日立機械 松山浩一社長
読売新聞(2015/8/23)

◆環境分野事業に意欲
 工作機械販売の日立機械が、放射性物質に汚染された土壌を洗浄する「アースセーバー」の販売を始めた。松山浩一社長(59)に開発の経緯や今後の事業展開などを聞いた。(聞き手・高松秀明)

−−開発の狙いは。
「地元の工場を中心に工作機械を販売する事業が本業なのは変わらない。地域に根付いた『機械の総合商社』として、汎用機から専用機まで様々なニーズにこたえていく。ただ、今後は工作機械の需要は見込めないかもしれない。アースセーバーで環境分野の事業を新しい柱としていくことを考えている」

−−開発のいきさつは。
「20年前に阪神大震災の被災地にボランティアに行ったことがきっかけだ。水の大切さを実感して、川や池の水から飲料水を作る災害用給水装置『アクアセーバー』を開発した。この技術を使えば汚染土壌の洗浄が可能だと分かり、東日本大震災後の2011年5月から開発に着手した」

−−装置の特徴は。
「薬品や洗剤を使用せず、水だけで最大94%の除染ができる。洗浄に使った汚水は装置の中で放射性物質を取り除いて再利用する。装置一式は10トントラックに搭載し、除染の必要な場所まで移動でき、その場で処理した土を埋め戻せる。14年度には環境省の除染技術実証事業に選ばれ、福島県浪江町の公園での実験では除染率と再利用可能な土の割合はともに80%だった」

−−今後の事業展開は。
「放射性セシウム以外の有害物質の洗浄にも使うことが可能だ。福島県内の除染作業の現場だけでなく、有害物質による土壌汚染が問題となっている国内外の地域で活用できないか、検討していきたい」

 1956年生まれ。日立市出身。専修大文学部卒。80年4月入社。営業課長、専務取締役を経て、94年から現職。90年代の長嶋巨人軍のスローガン「スピード&チャージ」をモットーに、現在も営業の最前線に立つ。携帯電話が普及する以前のポケットベルを身に着けていた時は、鳴ってから「5分以内に電話をかける」ことを身上にしていた。
 1979年、中古の工作機械を販売する「松山三郎商会」から分離独立して設立した。主にエレベーターや家電、医療器機などを作る工作機械を販売する。環境分野の事業にも取り組む。日立市多賀町の本社のほか、ひたちなか市東石川に営業所がある。従業員は20人。2014年7月期の売上高は17億円。