団塊の世代が75歳以上を迎える2025年に、どのような体制で医療を提供するのかを示す「地域医療構想」の策定作業が、都道府県で本格化しています。
 地域医療構想は、複数の市町村からなる2次医療圏を基本に、10年後の医療需要を推計。必要な病床(ベッド)数を、救急などに対応する「高度急性期」、通常の重症患者向けの「急性期」、リハビリ患者らを受け入れる「回復期」、長期療養向けの「慢性期」の四つの機能ごとに定めることになっています。
 昨年度(2014年度)から始まった病床機能報告制度の集計結果によると、茨城県の医療機能の現状(2014年7月1日現在)は、高度急性期が16.7%、急性期50.5%、回復期6.3%、慢性期23.9%となっています。高度急性期と急性期の合計が全体の6割以上を占め、今後、需要が高まるとみられる回復期が非常に少なくなっています。
 一方、国が示した2025年の医療需要の推計値と比べると、急性期を現行より約4割減らす必要があり、回復期は約4倍に増やすことが求められています。ベット数で言うと高度急性期・急性期で▲6700ベット削減し、反対に回復期は+5600ベット増やす必要があります。
 今後、県は、こうした国の推計値や報告制度の結果を基に、2025年の医療需要や必要病床数などを盛り込んだ「地域医療構想」を、2次医療圏ごとに策定します。7月に構想策定に向けた調整会議を発足させ、2016年夏頃までにまとめる方針です。
病床機能報告制度における本県の病床機能の集計結果(病院のみ)
■整備費補助へ 超高齢化に対応し“回復期”病院を整備
 県内の病院で患者の在宅復帰に向けた支援やリハビリを行う「回復期病床」が不足する中、県は、新たに回復期病床を増やす医療機関に対して財政支援する取り組みを始めます。超高齢化を迎える2025年を見据え、医療ニーズの変化に対応するのが狙いです。優遇策を設けることで、過剰とされる急性期病床からの転換を促し、病床の再編を進めます。
 県は、9月定例県議会に事業費1億9900万円を盛り込みました。医療機関が回復期病床を増やすために施設を新築したり増改築したりする際に、県は昨年度創設された「地域医療介護総合確保基金」を活用し、1床(ベット)当たり320万円の2分の1を上限に補助します。
 回復期の病室や機能訓練室の整備のほか、リハビリに使う機器の導入費用などが対象で、本年度は120床分の予算を計上します。
 国は将来の医療提供体制について、従来の「病院完結型」から「地域完結型」への転換を目指しています。しかし、団塊世代が75歳以上となる2025年には、慢性疾患を抱える高齢者が大幅に増えるため、急性期に偏る現在の病床配置では対応できない恐れもあります。
 そこで、回復期病床の充実に向け、県は施設整備と並行し、人材確保の対策も進めていくことにしています。