151108image 安倍総理大臣の消費税10%引き上げ時と同時に軽減税率を実施するとの決断を受け、与党内での軽減税率に関する具体的な議論が始まっています。
 11月4日、自民、公明両党は与党税制協議会の「消費税軽減税率制度検討委員会」を開き、対象品目の線引きのあり方や複数税率の導入に伴って事業者に生じる事務負担について、財務省から説明を受け、与党間の協議をスタートさせました。
 席上、食料品の対象品目の線引きに関して、財務省が食品表示法上の区分を用いた場合の考え方を説明。食品表示法では、食料品の中で、生鮮食料品と加工食品の間には、明確な線が引かれている一方、加工食品の中で線引きできる明確な基準が存在しないと説明しました。
 自民党は「対象品目を限定することによって(制度を)分かりやすくしていかなければならない」と主張。公明党は「対象品目を幅広くしないと、痛税感が緩和できず、(消費税率引き上げや軽減税率制度への)国民の理解に至らない」と訴えました。
 また、事業者の事務負担について財務省は、各商品の税率を把握し、表示や請求書(領収書)発行を行うための「商品管理」と、税率ごとの区分経理などの「納税事務」が想定されると指摘しました。
 納税事務のうち、軽減税率導入当初に採用される簡素な経理方式に関して、公明党の斉藤鉄夫税制調査会長は、党として事業者の負担が少ない経理方式の具体案を提案してきた経緯に触れ、「もっと良いものがあれば、この案にこだわらない」との考えを表明。これを受け、より簡素な経理方式をめざして引き続き議論することを確認しました。
 一方、公明党の山口那津男代表は11月5日、党本部で記者会見し、2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に導入する軽減税率に関して、「軽減税率は、給付より圧倒的に優れている」と強調し、次のように述べました。

消費税率引き上げに伴う低所得者対策について
低所得者ほど負担感が重くなる逆進性を緩和する視点が重要だ。社会保障と税の一体改革に関する3党合意で、恒久的な措置として「給付つき税額控除」という制度が選択肢に位置付けられたが、国民の所得を正確に捉えるインフラが整っていないので、2017年4月に実施することができない。消去法からしても軽減税率しかない。

逆進性緩和策としての給付措置の問題点について
給付を受ける側が自治体で申請手続きをする必要がある。税率8%への引き上げ時で、実際に実施された簡素な給付措置の申請率は、横浜市で66.1%(14年度実績)など3、4割の対象者が実際に給付を受けていない。消費が低迷し、経済の勢いを損ねた実態と合っている。申請手続きの負担を負わせ、行政コストをかけた結果、費用対効果の面で効果の弱い仕組みであったことが裏付けられた。マイナンバー(社会保障と税の共通番号)カードを利用した財務省案に対し、国民が拒否反応を示したのは、申請主義などの欠点を直感したからだ。

軽減税率の有効性について
申請主義の欠点を補い、商品購入時に負担軽減の効果が納税者に100%及ぶことでは圧倒的に優れている。「高所得者にも恩恵が及ぶ」との指摘があるが、所得水準から見た軽減額の効果は、所得の低い人ほど高い。この視点で見ることが重要だ。欧米などは、こうした効果を考えた上で軽減税率を導入している。