日本学生支援機構(旧日本育英会)が学生に支援する「奨学金」に関する問題に注目が集まっています。若干古い記事にはなりますが、産経新聞の取材によれば、奨学金返還訴訟がこの8年間でなんと約100倍(58件から6193件)にまで増えています(2004年〜2012年)。
 マスコミでは、「奨学金を返せない」と嘆く学生・社会人の姿がたびたび報じられ、若者に対して「自己責任では」「借りたものを返す自覚が足りないのでは」という厳しい声も上がっています。反面、日本の奨学金制度は『学生ローン』であり、貧困ビジネスだという指摘もあります。
奨学金返済の延滞者と無延滞者の所得

無利子奨学金枠を8.2%拡大
 来年度予算の概算要求に、学生向け無利子奨学金を3万8000人分増やし49万8000人分とすることが盛り込まれました。そのまま通れば日本学生支援機構が運営する無利子奨学金の貸与枠としては過去最大となります。
 学生の2人に1人は何らかの形で奨学金を借りている時代です。無利子枠の拡大は学生にとって朗報です。日本の学校教育に関する公財政支出の対GDP比率(2009年現在3.8%)や一般政府総支出(国や自治体による全ての支出)に対する比率(8.9%)は、国際的に見るとOECD平均(それぞれ5.8%、13.0%)を大きく下回っています。その分、教育費の個人(国民)負担が大きくなっており、奨学金は多くの学生やその親にとって頼みの綱と言っても過言ではありません。
 公明党は一貫して、学生への経済的支援を訴えてきました。7月に政府に提言した「青年政策アクションプラン2015」と「公明党学生局政策提言―未来を切り開く学生を応援―」でも、重要な柱として、安心して学生が学び続けられるための、奨学金をはじめ学生の教育費負担軽減策を訴えています。
奨学金の返済率
 若い人の非正規労働が増え、奨学金の返還が苦しいという声も聞こえてきます。
 厚生労働省の発表で、全賃金労働者のうちフリーターや契約社員など非正規労働者が占める割合が4割に達し、25年前の2割から倍増していることが明らかになりました。負担の少ない無利子奨学金を増やすべきだという意見を受け、公明党は無利子奨学金を増やすよう政府に求め続けています。
 一方で公明党は返す必要のない給付型の奨学金の制度創設も訴えてきました。国は昨年度から、返済する必要のない高校生向け奨学給付金制度を始めました。来年度は公明党の提言を受ける形で第1子への給付額が増額されます。今後は、大学生向け公的給付型奨学金の創設を求めていきます。
 さらに、現に返済に困っている人への支援として、所得に応じた返済の減免制度がより手厚くなる方向です。所得状況に応じて奨学金を返還できる「所得連動返還型奨学金制度」導入も来年度予算の概算要求に盛り込まれました。

学生の留学もサポートも充実
 留学生の支援も進めます。「官民協働海外留学支援制度〜トビタテ! 留学JAPAN 日本代表プログラム〜」が、2013年度からスタートしました。海外留学する日本の学生を増やすことをめざし、大学生や高校生に奨学金を給付。公明党が毎年の予算要望や提言などで訴えていたことが実現しました。来年度からは高校生への留学支援の募集人員が今年度の300人から500人へ増えるなど、制度も拡充されます。