11月25日政府は、全閣僚による環太平洋連携協定(TPP)の総合対策本部を開き、「総合的なTPP関連政策大綱」を決定しました。大綱には、20日に公明党が政府に提出した提言が随所に反映されています。

公明の主張が反映された主なポイント
◎中小企業などの海外進出を後押し
◎農林水産物やコンテンツなどの輸出を促進
◎コメ、麦など重要5項目で経営安定化対策
◎水田・畑作・野菜・果樹の収益力向上を支援
◎食の安全確保へ原産地表示の拡大を検討

JA茨城中央会TPPヒアリング TPPが発効すると、人口8億人の巨大市場が誕生します。参加国間で貿易などのルールが共通化され、日本で約95%、日本以外の11カ国で99%以上の品目の関税が撤廃されることから、国産品の輸出や企業の海外展開が増えるなど大きなメリット(利点)が生まれます。その一方で、国内の農林水産業を中心に、安い外国産との価格競争にさらされることなどへの懸念や不安があります。
 公明党は、メリットを生かす「攻め=希望」と、影響を最小化する「守り=安定」の両面から提言をまとめ、政府に申し入れました。そのほとんどが大綱に盛り込まれ、充実した内容になっています。
 大綱には、農林水産物の輸出や中小企業の海外展開、インフラ輸出、企業誘致といった各項目に数値目標が明記されています。その数値の根拠を丁寧に説明し、責任をもって実行していくことが重要です。
 公明党の主張が反映されたポイントの一例として、四国・愛媛の今治タオルなど、全国には多くの地場産業があります。それらの製品のほとんどで、TPP参加国の関税が撤廃されます。輸出拡大のチャンスですが、地場産業の大部分が中小企業・小規模事業者です。海外進出には、ノウハウの面などで支援が不可欠。公明党は、中小企業などが関税撤廃のチャンスをうまく活用し、海外市場に挑戦できるよう、相談体制の整備や支援の抜本的な強化、アニメやゲームなど日本が得意とするコンテンツ分野での輸出促進策を提案し、大綱に盛り込まれました。
 TPPの大筋合意では、著作権侵害について、権利者が告訴しなくても検察が訴追できるようにする「非親告罪」化が求められていますが、公明党の主張に沿って、愛好家らがアニメキャラクターなどを使って制作する「二次創作」への萎縮効果が生じないよう制度整備を行うことが示されました。
 また、農林水産業で生産者が「安心」と「希望」を持てるよう、公明党は具体的な対策を提言しました。
 日本の農林水産業が果たす食料自給や国土保全などの観点を踏まえ、生産者が「安心」して再生産に取り組めるよう、特にコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5項目で経営安定化対策を提言。いずれも大綱に反映されました。
 例えば、コメでは、関税維持の代替策として米国などにコメの無関税輸入枠を新設しますが、輸入米の増加が国産米の値下がりを招くことを防ぐため、輸入量と同量の国産米を政府が備蓄用に買い入れることにしました。
 「希望」の面では、公明党の主張に沿った形で、水田・畑作・野菜・果樹の産地や担い手による収益力の向上支援や、地域ぐるみで高収益化をめざす「畜産クラスター」拡充など、競争力・体質強化策が盛り込まれました。
 また、生産者からの要請が多かった外国産品との差別化や食の安全確保に向けた「原産地表示の拡大」の検討も明記されました。
 こうした大綱の具体化にあっては、年内に編成される見込みの2015年度補正予算案や16年度予算案に反映させ、法整備が必要なものは順次進めます。
 大綱には継続して検討すべき項目として、公明党が提唱する「収入保険の導入」「飼料用米の推進」などが盛り込まれています。今後も現場の声に真摯に耳を傾けながら、必要に応じて政府に提言を行い、対策を具体化していく決意です。

JA茨城中央会からTPPの影響をヒアリング、意見交換
 11月26日、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党議員会は、JA茨城中央会を訪れ、TPP交渉の暫定合意に関わる県内農業の影響等についてヒアリングしました。
 JAグループが独自に試算したTPPに伴う県内農畜産物への影響額は、今後、国内で対策が講じられなかった場合、県内生産額の減少は年間649億円とされ、特に豚肉は生産額に対し減少率が59.9%と6割近くに上り、影響が最も大きいなどと説明を受けました。林産物と水産物を加えた減少額(影響額)は総額720億円5千万円に達します。
 この試算は、2013年の県内農業産出額と比較した単年度の影響額を試算しもので、東京大大学院の鈴木宣弘教授に依頼し、産出額上位51品目について算定しました。
 分野別の減少額は、農畜産物649億1000万円(減少率15.63%)、林産物10億3300万円(14.55%)、水産物61億700万円(38.58%)。
 農畜産物の減少額の内訳では、豚肉が224億7000万円と全体の約35%を占めました。このほか主な品目では、コメ58億6300万円(6.7%)、肉用牛40億1200万円(31.30%)、生乳21億3700万円(13.7%)、鶏卵126億9300万円(31.57%)。レタス16億4100万円(10.59%)、ハクサイ5億3300万円(3.95%)、ネギ13億6500万円(10.42%)。
 JA担当者からは、「予想以上に甚大な影響が出るというのが率直な感想。特に畜産関係の影響額が大きい。茨城県の畜産業は集約化や大規模化が遅れているために収益性が悪い。海外から安い畜産品が入ってくると、より深刻な影響を受ける傾向がある。ブランド化や新たな競争力の強い品種の開発が望まれる」と語りました。
 井手県議らは「政府がまとめた農林水産関係のTPP対策。コメや牛・豚肉など重要品目への影響緩和策などをしっかりと実施し、影響をどう緩和するかが課題。海外への積極的な農産物輸出も県が支援していきたい」と応じました。