常総市三坂町
 12月24日、近年被害が激甚化している豪雨や雪害といった自然災害に備えるため、政府は、効果的な防災対策を検討する第1回有識者会議を開催しました。会議は今後の防災対策のあり方を幅広く検討し、提言としてまとめる予定です。
 東日本大震災の被災者が抱えたことで知られる「二重住宅ローン」についても、議論が深まることが期待されます。
 二重ローンを抱えると、自然災害の被災者が住宅を再建する際、被災する前の住宅のローンに加え、新たに組むローンによって多額の返済負担を負い、家計が行き詰まってしまいます。大震災の被災者を法律面から支援した日本弁護士連合会は当時、少なくとも1万人以上がこの問題に直面したとみています。
 大震災による二重ローン対策としては、政府が設けた「個人版私的整理ガイドライン(指針)」が効果を発揮しています。これにより、被災者は破産手続きなしで震災前に借りた借入金の減額または免除の交渉が債権者との間で可能になりました。ただ、大震災を受けて急きょまとめられたため、ガイドラインに法的拘束力はなく、全ての債権者の同意が必要など利用するためのハードルは低くありません。また、ガイドラインは東日本大震災の被災者のみが対象です。
 こうした中、9月に発生した東日本豪雨による鬼怒川の決壊では、茨城県常総市だけで全壊を含む8000棟以上の住宅が被害を受けました。今後も同様の大規模災害の発生が懸念されており、二重ローンに苦しむ新たな被災者を出さないための恒久的な救済策の確立を急ぐべきです。
 また、12月25日には全国銀行協会が事務局を務める「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会 」が「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」およびQ&Aを取りまとめ発表しました。
 このガイドラインは、自然災害の影響によって、住宅ローンや事業性ローン等の既往債務を弁済することができないまたは近い将来弁済できないことが確実と見込まれるなどの一定の要件を満たした個人の債務者が、法的倒産手続によることなく、債権者との合意にもとづき、特定調停を活用した債務整理を 公正かつ迅速に行うための準則として策定するものです。これによって、債務者の債務整理を円滑に進め、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援し、被災地の復興・再活性化に資することが期待されています。 これは、二重ローンを整理した場合も「信用調査機関」に登録されないのが大きなメリットです。(自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン:http://www.zenginkyo.or.jp/abstract/news/detail/nid/5685/
 1995年の阪神淡路大震災で二重ローンを抱えた被災者の中には、救済策が整っていなかったため、20年たった今も生活再建が十分ではないケースもあります。ガイドラインは国が恒久的な制度を検討する際には貴重な参考となります。共通ルールは来年度からの適用をめざしていますが、被災者の立場に立った使い勝手の良いルールの整備を求めます。