山梨県庁でヒアリング 1月15日、茨城県議会公明党の井手よしひろ県議と田村けい子県議(つくば市選出)は、つくば市議会の小野泰宏、山本美和、浜中勝美各議員と共に、山梨県庁を訪れ、「山梨県太陽光発電施設の適正導入ガイドライン」の策定について聴き取り調査を行いました。また、県庁でのヒアリングの後、甲府市内の甲斐善光寺周辺を視察し、メガソーラー開発の現場を確認しました。
 山梨県では、事業用太陽光発電事業者に、太陽光発電施設の適正な導入を促すため「太陽光発電施設の適正導入ガイドライン」を策定し、平成27年11月4日に公表しました。
 現在、茨城の象徴である『筑波山』の山麓で、メガソーラー建設によって深刻な自然破壊が懸念される事例が発生しています。また、昨年9月に発生した関東・豪雨被害(鬼怒川の水害)の要因に、メガソーラ建設工事により自然堤防の一部が削られたことが指摘されている事例もあります。
 現行の国の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の中では、茨城県とつくば市では、その対応に苦慮しています。
 いち早く県がガイドラインを制定して、メガソーラの健全な導入に先鞭をつくた山梨県の先進事例を調査しました。
ガイドラインのフローチャート ガイドラインについては、山梨県エネルギー局の赤池隆広局長、クリーンエネルギー担当の渡辺一秀課長補佐より、ご説明をいただきました。 また、公明党山梨県本部の安本美紀代表(県議会議員)にも同席をいただきました。
 2014年10月、山梨県の横内正明知事は、メガソーラーに関して、二つの方針転換策を示しました。一つは、山林の伐採による景観や防災への影響への対策、もう一つは、FITの見直しによる山梨県のエネルギー戦略への影響です。
 山梨県では、2050年ころまでに、県内で必要な電力の100%を県内産の再生可能エネルギーで賄う、エネルギーの地産地消の実現を目指していました。しかし、山梨県内では、メガソーラーの開発に伴う山林の伐採によって、景観や防災への影響を懸念する声が挙がりました。
 横内知事は、山梨県が進めているエネルギーの地産地消戦略を推進していく上で、メガソーラーの導入は必要としながら、現在の開発のペースが想定以上に早すぎること、また、山林を開発する案件が多いことから、問題が生じていると指摘しました。
 そして、具体的な対応として、山林の開発に必要な、林地開発許可の段階での指導や条例に基づく環境アセスメントの対応をより徹底していくこと、市町村による景観法に基づく景観計画と条例による規制を促すことを表明しました。
 一方、FITの見直しにより、必要に応じてエネルギーの地産地消戦略(県内で必要な電力を100%県内で賄う)の見直しを含めて、検討することを明らかにしました。
 それから1年を掛けて昨年、制定されたのが「山梨県太陽光発電施設の適正導入ガイドライン」です。
 このガイドラインの対象は、10kW以上の事業用太陽光発電で、屋根設置を除いた施設です。「県独自の新たなフロー」として、立地の検討や、設置時の防災・景観・環境面などへの配慮、住民との合意形成などに関し、現行制度で必要のない「市町村への事前相談」を求めています。
 「市町村への事前相談」など「県独自のフロー」は、すでに経産省から設備認定を取得した案件にも適用されます。設置時の防災・景観・環境面などの検討のほか、場合によって「立地の再検討」の可能性も明記しています。
 「立地の検討」に関しては、「立地を避けるべきエリア」と「立地に慎重な検討が必要なエリア」を具体的に挙げています。
 避けるべきエリアには、国立・国定公園・県立自然公園の特別地域と普通地域、条例に基づく32の保全地区、富士山北麓世界遺産景観保全地区のほか、保安林、災害危険区域、農業振興地域などを挙げています。
 茨城県の筑波山の事例などは、大半がこの項目に抵触します。
 「立地に慎重な検討が必要なエリア」には、「傾斜度が30度以上ある土地」、「地域森林計画対象民有林」、「市町村により景観形成拠点として位置づけられ場所」などを挙げています。これらの場所については、必ずしも法令上の手続きは必要ありませんが、「慎重な検討」を求めています。
 また、設置時に順守すべき事項として、景観面では太陽光パネルの色彩、植栽やフェンスなどによる目隠しの手法を示しました。また、「環境保全上特に必要があるときは、造成工事を数ブロックに分け、緩衝エリアの緑地を設けること」「希少野生種が生息する土地がある場合には保全措置を講ずること」などを求めています。
 しかし、パネルの色彩などは、国への申請の際、型式を明示して申請しているので、実際には変更はほとんど難しいのが現状です。
 緑地の形成に関しては、「敷地面積2000m2以上の場合、敷地の20%以上」「パネルの水平投影面積3000m2以上の場合、周辺部に15%以上」と、具体的な基準も示しました。
 また、重要なのが発電所の入り口に、事業者名と保守管理者名、連絡先(住所・電話番号)の表示を義務付け、法的には「立ち入り防止措置」の必要のない50kW未満の低圧案件に関しても、フェンスなどで囲み、人が入れないようにする措置を求めていることです。
 加えて、大規模なソーラー発電施設を小分けに申請している事例も目立つため、「本来であれば出力50kW以上の規模である太陽光発電設備を、同一の場所において出力50kW未満の太陽光発電設備に分割して設置する案件(以下「分割案件」という。)があり、電柱が乱立し、景観への悪影響を与えるケースも見受けられます。このため、分割案件については、全体をひとまとまりの発電施設と捉え、以下の措置を講じてください」との表現で、必要な措置を明示しました。
 さらに、20年間の定額買取期間が経過した後、解体撤去する場合、「使用済の太陽電池モジュール・架台等については、産業廃棄物に該当するた
め、廃棄物処理法に基づく排出者責任の下で適正処分が義務付けられています」との項目も網羅しました。

甲斐善光寺 
 聴き取り調査では、この山梨県のガイドラインと共に、市町村ごとに景観条例を改正したり、厳格に運用することにより、無秩序なメガソーラー開発に歯止めを掛けようとしています。
 ただ、すでに工事が始まった事業者には有効な規制や原状復帰策がないのも事実です。地元市町村、住民と事業者の真摯な話し合いが必要のようです。
 写真は甲斐善光寺の裏山に建設されたメガソーラ(2016/14/15撮影)

参考:山梨県太陽光発電施設の適正導入ガイドライン(https://www.pref.yamanashi.jp/energy-seisaku/guideline.html)