つくば山中腹のメガソーラ開発現場
つくば市長や住民代表が橋本知事に開発規制を求める要望書提出
 1月21日、筑波山の中腹で民間事業者が太陽光発電施設の建設を進めていることについて、つくば市の市原健一市長や住民の代表が県庁を訪れ、橋本知事に対し計画の許可に慎重な対応を求める要望書を提出しました。公明党の田村けい子県議、小野泰宏市議も同席しました。
 現在、筑波山の中腹地域で、都内の民間業者が国定公園内を含むあわせて4か所で、太陽光発電施設の建設を計画しています。つくば市の市原市長は、橋本知事に対し「地元に十分な説明がないまま計画が進められ住民が不安に思っています。土砂災害のおそれがある区域もあり、反対の意思を示した地元に理解をお願いしたい」と述べました。その上で、計画の許可は慎重に対応し、景観が損なわれないようにすることや、土砂災害を防ぐ対策をとることなどを求める要望書を渡しました。
 住民らがつくる「筑波山の自然、生活を守る会」は、1)国定公園内の太陽光発電事業を許可しないこと。2)太陽光発電事業者に対する指導を強化するため、関係各課の連携による担当窓口を明確にすること。3)防災・景観・環境等の観点から、立地を避けるべき地域の線引きを行うこと。4)適正な設置のためのガイドラインを策定するなど、設置規制を行うこと。の4点を知事に求めました。
 これに対し橋本知事は「筑波山の環境を守るという考えは同じなので、どういう対応ができるか検討したい」と答えました。
 NHKの取材に応じた地元区長の渡邊一雄さんは「住民が立ち上がり、何としても計画を阻止したいと考えています。業者にはもっと場所を考えて事業を行ってもらいたい」と話していました。
筑波山における太陽光発電施設の設置規制を求める要望書

 筑波山は水郷筑波国定公園に指定され、年間200万人が訪れる県内屈指の観光地であり、山頂のブナ林をはじめ生物多様性の高い豊かな自然環境は、次の世代に残すべき貴重な地域資源でもあります。
 現在、その筑波山中腹で4か所もの太陽光発電設備の建設計画が進んでいます。
 太陽光発電設備は建築基準法上の建設物・工作物から除外されているため、事業者からの事前説明もないまま、突如、森林が伐採され、土がむき出しになってしまったところもあります。これらの行為は、景観を大きく損なうのみならず、保水力が低下し、土砂災害・浸水被害を引き起こすことが予測され、住民の不安が高まっています。
 再生可能エネルギーの活用は、地球温暖化対策として推進すべき事業であり、太陽光発電事業に対して反対するものではありません。しかしながら、森林伐採等、貴重な環境を破壊してまで設置することについては異議を唱えざるをえません。
 筑波山の貴重な自然環境を守り、美しい景観を保全するため、また、土砂災害・浸水被害を防止し、住民の生活を守るためにも、太陽光発電施設の設置規制を求め、下記の通り、要望いたします。
  • 国定公園内の太陽光発電事業を許可しないこと
  • 太陽光発電事業者に対する指導を強化するため、関係各課の連携による担当窓口を明確にすること
  • 防災・景観・環境等の観点から、立地を避けるべき地域の線引きを行うこと
  • 適正な設置のためのガイドラインを策定するなど、設置規制を行うこと。
平成28年1月21日
茨城県知事 橋本昌殿
筑波山の自然、生活を守る会  
共同代表:筑波山麓区長会    
筑波山神社      
筑波山温泉旅館協同組合
筑波山宮前振興会


メガソーラー事業者が住民説明会・住民の工事一時中止要請は拒否
 1月20日、つくば市沼田地区の筑波山麓で太陽光発電施設の建設を目的に樹木が違法伐採されるなどした問題を巡り、施設を計画しているセンチュリー・エナジー社(東京都千代田区、山中正社長)による地元説明会が開催されました。
 この説明会は、現在筑波山中腹でメガソーラーを計画中の4社のうちの1つ、「センチュリー・エナジー」が、つくば市の強い要請を受けて行ったものです。センチュリー・エナジー社は建設に法的には問題がないとした上で、「光を反射しにくいパネルを使うなど景観に配慮している」「傾斜地をネットで覆い草地にし、土砂災害の防止を囲っている」などと説明しました。
 これに対し住民側からは、「なぜ、伐採前に説明会を開かなかったのか」といった疑問や「筑波山を訪れる観光客も驚いている」「筑波山の土は広島の土砂災害が起きた場所と同じ、滑りやすいマサ土。災害に対する認識が甘すぎる」など、工事に反対の意見が相次ぎました。
 現地では、すでに樹木の伐採や整地も完了し、発電施設の資材搬入が始まっていることを、井手よしひろ県議が20日に確認しています。今後、地元の市議らが公開質問状を、センチュリー・エナジー社に提出する予定です。納得の得られる回答があるまで、工事の中止を求める声も上がりましたが、会社側は「災害対策を万全にして工事は進めさせていただく」と拒否しました。
 メガソーラーの建設場所は、防災上の危険性が否定できませんが、法律上、無許可でも太陽光発電施設の設置は可能な地域です。市では土砂災害の危険や景観の問題から、筑波山での設置を規制する条例の制定を検討しています。
 会場では市側の担当者が「条例の運用指針で、住民合意を盛り込むことも視野に入れている」と発言、改めて市として建設に反対していく姿勢を明らかにしました。
 最後に事業者が「今後、新たに施行されるつくば市の太陽光発電に関する条令の意向に従い、物理的可能な安全対策を講じる」という主旨の覚書を住民と交わし、説明会は散会しました。