家庭や商店を含む全ての消費者が電気の購入先を自由に選べる「電力の小売り全面自由化」が、4月からスタートします。電力会社を切り替える事前予約は、今月から受け付けが本格化しています。私たちの生活はどう変わるのか。公明新聞(2016年1月24日付)の記事をもとにまとめてみました。

自分に合った電気を選ぶ/200社以上が参入申請 料金低下に大きな期待
0124image 電力小売りの自由化は、大規模工場などを対象に2000年から始まりましたが、家庭向けの電気の販売は、東京電力など全国10社の大手電力会社が地域ごとに独占していたため、消費者は電力会社を選ぶことができませんでした。
 今回の自由化を受け、すでに200社以上の企業が小売り事業に申請。家庭向けの新しいサービスが続々と発表されています。
 消費者は「ガスも含めて光熱費を抑えたい」「太陽光や風力などで発電を行う会社を選べないか」といったライフスタイルや価値観に合わせ、自分に合った電力会社や多彩な料金プランを選べるようになり、電気料金を安くすることも期待できます。
 電力小売りの全面自由化は、安価で安定的な電力供給に向けた「電力システム改革」の一環。電力不足が問題となった東日本大震災を機に政府が進めてきました。
 今後、発電所から送配電線などを通じて電気を送り届ける、大手電力会社の「送配電部門」が別会社に切り離されます。これにより、新たに参入する企業も大手電力会社と平等の条件で送配電ネットワークを利用できるようになり、料金内容の透明化や、電力市場の活性化が期待されます。
各社、過熱するサービス競争
0124denryokuhyo さまざまな分野の企業が電気小売り事業に参入し、安い電気料金のプランや、電気とガスといったセット契約による割引を発表するなど、サービス競争が過熱しています【表参照】。
 また、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)を主軸とした電力プランをアピールする企業もあります。例えば、携帯大手のソフトバンクは4月以降、再エネを活用したプランを提供する予定です。
 さらに、都市部に住んでいても、地方で発電事業を展開する企業と契約できるため、電力購入を通じて、自分のふるさとに貢献することもできます。
 一方、どの料金プランが自分の家庭に合っているか簡単に比較できれば非常に便利です。そうしたニーズを踏まえ、幅広い商品やサービスの価格を比較できるサイトを運営する株式会社カカクコムは今月、電気料金プランの比較サービスを開始。住所や電気の使用状況などを入力すれば、お得なプラン・電気料金を紹介してくれます。エネチェンジ株式会社も同様のサイトを公開しています。
参考:価格.comhttp://kakaku.com/energy/
参考:エネチェンジhttps://enechange.jp/

公明党、システム改革を推進
 電力システム改革について公明党は、2014年衆院選重点政策で、着実な実行による電力産業・市場の活性化やエネルギー・環境分野の成長促進を訴えるなど、その取り組みを推進してきました。特に、小売り全面自由化に関しては電気事業法などの改正を通じて、山間部や離島部でも、それ以外の地域と同じ料金で電力を安定的に供給するよう電力会社に義務付けました。

電力自由化のQ&A
Q:電力会社を変更するには?
A:新規に契約する会社の窓口や電話、ホームページなどから申し込んでください。契約中の電力会社への解約手続きは、切り替え先の電力会社が行うため、不要です。
Q:費用は掛かりますか?
A:切り替えには、遠隔での検針などが可能な新しい電力量計「スマートメーター」が必要です。このメーターが設置されていない家庭は取り換えが必要ですが、その費用は原則無料です。なお、解約の際、契約内容によっては解約金が発生する場合があります。
Q:停電などの恐れは?
A:切り替え後も、今ある大手電力会社の電線を借りて電気を供給するため、電気の品質は変わりません。また、仮に、契約した電力会社が倒産しても、電力供給が直ちに止まることもありません。新たな供給先が見つかるまでは、各地域の大手電力会社から電気を補給する仕組みになっています。
Q:マンションの場合は?
A:電力会社の切り替えはできますが、管理組合などが一括して電気を購入している場合は変更できないこともあり、確認が必要です。一方、賃貸住宅の場合、電力会社の契約名義が本人なら、切り替えは可能です。なお、切り替え手続きをしなければ、今年4月以降も、現在契約中の電力会社から引き続き、電気が供給されることになります。

多くの選択肢で家計守る/都留文科大学・高橋洋教授
 一般家庭が電気を購入する選択権を持てるようになる。これが小売り全面自由化の大きな意義です。
 電気料金は化石燃料や消費税率などにも左右されるため、家計への影響はプラスにもマイナスにもなります。多くの選択肢から最適な電力プランを選ぶことが、家計を守ることにつながります。
 企業側もさまざまな工夫を凝らしています。その競争がうまく働けば、消費者へのサービスが充実するだけでなく、企業の技術革新も進み、経済効果に反映されます。
 電力自由化は成果が見えるまで年数を要する取り組みです。成功のカギは、大手電力会社と新規参入者が適正な条件下で競争できるか。その環境整備に政府は力を入れてほしいと願います。