県北ジオパーク日立ジオサイトの掲示板
 茨城県の県北地域の活性化のツールとして大いに期待されるのが「茨城県北ジオパーク」です。
 県北地域には、緑あふれる山々、紅葉の渓谷、白亜紀の翼竜や魚竜、アンモナイトの化石を産出する海岸、日本最古・5億年前の地層、日本の近代化を支えた鉱山、豊かな山の幸・海の幸などのたくさんの地質・自然・文化資源があります。
 これらをガイド付きツアーや各種イベントなどを通じて、世界の人々に楽しんでもらいおうとするのが「茨城県北ジオパーク」です。2011年、日本ジオパークとして公式認定を受け、さまざまなイベントやツアーを開催してきました。
 しかし、昨年12月14日に開催された日本ジオパーク委員会では、茨城県北ジオパークは「条件付再認定」との厳しい評価を受けました。日本ジオパーク委員会の評価は「エリア内の住民、市町村および茨城県のジオパーク活動に対する理解や認識は低く、持続可能な運営体制は構築されていない。また、全国規模で行われる日本ジオパークの会議や大会にほとんど参加しておらず、他ジオから学ぶ体制が不十分である。拠点施設づくりも遅れている。したがって条件付きで再認定とする」との内容でした。このまま、県や市町村との連携も不十分で、組織体制の整備、拠点施設の整備を行わなければ、2年後には県北ジオパークは認定を取り消される可能性が高まっています。
 県北ジオパークを県北地区、特に日立市の活性化のツールとして活用するためには、以下の3点が必要だと思います。
  1. 茨城県や日立市の中で推進体制を明確にする。基本的には観光の部局に位置付け、地域創生に活用する体制を各地する。
  2. 一般の観光客が自由に訪れることができるジオパークの拠点施設を整備する。現在は、県北ジオパークの事務局は茨城大学の水戸キャンパス内に置かれています。実際のジオサイトから距離的に離れており、大学構内のため一般の市民との一体感にも欠けます。例えば、日立市内のかみね公園内に設置を検討すべきです。
  3. 茨城県や日立市のホームページや日立駅などで県北ジオパークの広報活動を活発化させる。

条件付き再認定に関わる日本ジオパーク委員会のコメント
【茨城県北ジオパーク】広域にわたるエリアのなかでは、インタープリターと呼ばれるガイドが活発な活動を継続している。この活動と、茨城大学地質情報活用プロジェクトに所属する大学生・大学院生、自治体担当者、民間企業が連携しており、ジオパークを活用したボトムアップ型の地域振興の素地がある。しかしながら、エリア内の住民、市町村および茨城県のジオパーク活動に対する理解や認識は低く、持続可能な運営体制は構築されていない。また、全国規模で行われる日本ジオパークの会議や大会にほとんど参加しておらず、他のジオパークから学ぶ体制が不十分である。拠点施設づくりも遅れている。したがって、条件付きで日本ジオパークとして再認定とする。
日本ジオパーク委員会:http://www.geopark.jp/about/pdf/press_release20151214_01.pdf

〜5億年前のカンブリア紀の地層〜茨城県北ジオパーク<日立ジオサイト>のポイント
 日立市は、太平洋に面し海沿いの狭い地域に発達した都市で、その大部分は阿武隈山地の南部、多賀山地とも呼ばれる低い山地で占められています。地質としては、日立変成岩類と呼ばれ、原岩の地質時代が不明なものが多く、日本列島基盤岩の構造区分の中でその所属が常に問題となってきたそうです。これが、古生代の日本の地層の成り立ちがわかる大変貴重なものだということが最近わかりました。
 地質学の研究を続けてきた茨城大学理学部の田切美智雄教授は、2008年、日立変成岩の一部が約5億600万年前のカンブリア紀の地層であることを発表しました。それまで日本最古とされてきたのは岐阜県のオルドビス紀(約4億9000万〜4億4000万年前)の地層でしたが、この発見で、日本列島が出来上がってきたと言われるパンゲア大陸よりもさらに前のゴンドワナ超大陸時代からの日本列島の成り立ちがわかるのではと期待されています。日立のこの地層は、当時中国大陸の縁の海底にあったものらしいです。これほど広範囲の古生代の地層は他にはなく、日本列島の始まりはこの地域だったのではないかと推測されます。
 日立市内でこの日本最古の地層が観察できるところは、小木津山自然公園と、小木津不動滝付近の東連津川流域です。
 小木津不動滝は、滝の高さ約12m、幅6mの堂々とした滝です。小木津不動滝右手から山奥へ通じる林道を歩いて行くと、林道沿いに地層の露頭が見られます。何度も変成を受けたカンブリア紀の地層、そこに貫入した花崗岩などが観察できます。このあたりに落ちている石を拾ってみればほぼ間違いなくそれは日立変成岩、日本最古の地層の石です。
 道は東連津川に行きあたって終わりになっています。この川をさかのぼれば、約5億年前のカンブリア紀の変成花崗岩と約3億5000万年前の石炭紀の変成礫岩の不整合面が見られる、地質学上とても珍しい場所がありますが、案内がなければとても行けないような危険な場所なので、こちらは専門家の方以外にはお勧めできません。
 これに比べ、すぐ近くの小木津山自然公園は、誰でも日本最古の地層を観察できます。
 小木津山自然公園は、JR小木津駅から徒歩10分、常磐自動車道日立北ICから車で約10分、不動滝の南側に位置します。約65ヘクタール、自然林の中の遊歩道を気軽に森林浴を楽しみながら散策できる公園です。この公園の入口からすぐ地層スポットがあります。わかりやすいのは道沿いに流れる小川の周辺。小川沿いに右側に曲がると、カンブリア紀の地層が前面に露出している場所が見られます。変成花崗岩と言い、もともとかなり堅い岩石ですが、何回も変成作用を受けているため、たたくとボロボロと崩れてしまいます。
 日立市のかみね公園南駐車場内には「かみね公園ジオサイト」の看板が設置され、カンブリア紀後期の地層の上にあるかみね公園で見られるたくさんの露頭や、茨城県北ジオパーク構想について説明しています。
(日立地域ブランドのHPを参考にまとめました。日立市地域ブランド推進協議会:http://www.brand-hitachi.com/user_data/ourtown_tisitu.php

:参考「日立変成岩類〜 カンブリア紀のSHRIMPジルコン年代をもつ変成花崗岩質岩類の産状とその地質について〜」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/119/2/119_2_245/_pdf