筑波山の環境破壊 2月25日、茨城県は筑波山の景観保護エリア「水郷筑波国定公園」内に民間業者が太陽光発電所の建設を計画している問題で、2つの事業者が提出した開発許可申請をいずれも不許可にしました。自然公園法に基づき、山頂などからの展望に影響すると判断しました。
 県は23日に不許可を決定して業者に書面送付し、25日につくば市に通知しました。
 不許可となったのは、筑波山中腹の梅林入り口に近い県道沿いの民有地約9989m2と、梅林西の民有地約9850m2との2か所です。いずれも国定公園内で、開発行為に知事の許可が必要な「特別地域」です。2業者は昨年、開発許可を申請していました。
 茨城県環境政策課によると、自然公園法の施行規則では、特別地域内で工作物を新築する場合、「建築物が主要な展望地から展望する場合の著しい妨げにならないものであること」と定めています。県はこの規定に基づき、不適合と判断しました。
 地元紙の報道によると、つくば市の市原健一市長は、この不許可決定を受け「まだ国定公園外の案件が一つ残っているので粘り強く対応したい」と語りました。地元沼田区の渡辺一雄区長は「うれしい。市が筑波山で太陽光発電所建設を禁止する条例を作るまでは頑張る」と語りました。
 一方、業者の一社は「国の設備認定も受けており、法にのっとって進めてきた。法的手段も取る考え」と話していると報道されていています。
 この地区では、国定公園の区域内3カ所と区域外1カ所で太陽光発電所の計画が進められてきました。区域内のうち1件はすでに業者が撤退を表明。今回のこり2社が不許可となりました。区域外の1件は発電所の工事が、今日も進められています。
つくば市では条例、ガイドライン制定を進める
 つくば市では、現在、筑波山周辺の太陽光発電と風力発電をほぼ全面禁止とする条例の制定を急いでいます。(仮称:つくば市筑波山系における再生可能エネルギー発電設備を規制する条例)
 検討中の条例案は7条からなり、対象地域は、筑波山と隣の宝篋(ほうきょう)山です。うち禁止地域は、自然公園法でもともと開発が規制されている地域に加え、法で指定された土砂災害警戒区域、この二つの区域と一体的につながっている区域。筑波山では、つくば市側のほぼ全域となりります。太陽光だけではなく風力による発電事業も禁止します。条例では市長は、必要に応じて事業者に資料の提供を求めることができるとされています。
 罰則はありませんが、条例の規定に違反するか、違反のおそれがあると認められたときは、市長は事業者に当該事業の停止や、違反を是正するために必要な措置や勧告ができます。勧告に従わない場合は事業者名と住所を公表できます。
 つくば市は、この条例案を3月上旬に公表し、パブリックコメントを実施します。6月議会には市議会に提案し、できる限り速やかに施行したい考えです。
 一方、条例施行前の措置として、太陽光発電事業の禁止と推進に関するガイドラインを、3月末までに作成します。ガイドラインに法的強制力はありませんが、新年度から実施してソーラー発電事業への市の姿勢を明確にする予定です。

 県の自然公園法による不許可処分、つくば市の条例制定により、筑波山の大規模太陽光発電施設設置騒動は一つの節目を迎えます。しかし、すでに計画用地は無残に樹木が伐採されており、工事が止められてもどのように原状復帰させていくかは、今後の大きな課題です。