3月3日の県議会代表質問で、公明党の井手よしひろ県議は、ソーシャルインクルージョンの視点から、子どもの貧困や発達障がいへの対応の強化を知事に求めました。
 特に子どもの貧困の問題は、単に個人の問題にとどまらず、社会的にも大きな損失となり、日本の未来を左右する重要な課題となっています。国を上げて、地域に根ざした子どもの貧困対策を進めるべきです。

各国の子どもの貧困の割合
 子どもの貧困率は、30年前の1985年に10.9%であったものが、2012年の調査では16.3%と、実に6人に1人が子どもが貧困の状況に置かれています。その中でもひとり親家庭だけにしぼってみると、貧困率は54.6%とはね上がります。
 ここで言うところの貧困率とは「相対的貧困率」を指します。所得が何百万円以下という絶対的な貧困率とは意味が異なります。相対的貧困率は、可処分所得の中央値の半分以下の人の割合です。言わば、一般的な所得の半分に満たない世帯員の割合です。
 国際比較においても、OECD加盟国の相対的貧困率を比較すると、全34か国中、日本は第6位と高位になっており、子どもの貧困率では第10位となっています。ひとり親家庭で見ると、OECD加盟中、最悪の貧困率となっています。日本が急速に格差社会に進んでいる証拠かもしれません。
 貧困世帯の子供は十分な教育を受ける機会が乏しく、低収入の仕事につかざるを得ないケースが多くなります。これを「貧困の連鎖」と言っています。
 国は昨年4月施行の「生活困窮者自立支援法」において、この貧困の連鎖を断ち切るために、生活困窮家庭 の子供に対する「学習支業事業」を盛り込みました。
 これは福祉事務所設置自治体が行うことができる任意事業です。地域の実情に応じた様々な学習支援のみならず、児童生徒の生活上の悩みや進学に関する相談なども行える大変自由度の高い事業となっています。
 茨城県では、平成27年度から国から2分1の助成を受けて、阿見町で「いば・さら塾」をスタートさせました。阿見町内に住む「生活保護世帯」「準要保護世帯」「その他県が必要と認める世帯」が対象となっています。 「NGO末末の子供ネットワーク」に委託する形で事業が行われています。
 平成28年度からは、県内の半数程度の市が新らたに学習支援事業を始めるとしていますが、全国的にみてのみると取組みが大きく遅れています。
 その要因は、事業の受け皿となるNPOやNGO、ボランティア団体が少ないことや、国庫補助率が2分1であり、財政的な負担を伴う事などが上げられます。
 さらに、困窮世帯の子ども達だけに学習機会を与えることに、他の子どもたちとの平等性をどう担保するかとの抵抗感が一部首長にはあるようです。また、こうした学習支援の場所に通っていることによって、貧困の状況になっていることが分かってしまったり、広い行政区域の中でどこに学習支援の会場を設定するか、その会場までどのように通わせるかなど数々の課題もあります。

 一方、文部科学省の事業では、「地球未来塾」があります。
 これは、学校を活用して、土曜日や平日の放課後に学習支援活動を行うものです。平成27年度は、15の市において約7000人の児童生徒が、宿題や自主学習、自然体験などに勤しんでいます。
 平成28年度は、実施市町村も22市町までに拡大する見込みです。
 地域未来塾は、学校を基本とした取り組みですので、平等性は担保されます。反面、本当に学習支援が必要な児童生徒に支援の手が差しのべられるのか、その点に注目していかなくてはなりません。