包括的連携協定
 3月16日、防災・減災に向けた取組を推進するため、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)と茨城県が包括的な協定を締結しました。
 防災科研の林春男理事長と橋本昌知事は県庁内で会見し、(1)防災・減災対策に関する調査研究、(2)防災・減災に資する各種データやシステムの平時からの利活用、(3)県民に対しての防災・減災に関する啓発・広報活動、(4)防災・減災分野における知的・人的資源の相互活用などに関して、防災科研と茨城県が有機的に連携し、県民の安心安全を守る体制を構築することを約しました。さらに、県内市町村の防災・減災対策にも活用できるよう努めるものとするとしています。
 防災科研は、文部科学省所管の国立研究開発法人で、本部は茨城県つくば市にあります。全国各地に実験施設や観測施設を所有しています。「防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等の業務を総合的に行うことにより、防災科学技術の水準の向上を図る」ことを目的に設立されました。
 昨年9月の関東・東北豪雨被害を受けて、井手よしひろ県議は、防災技研と茨城県の連携の重要性を主張。11月に開かれた臨時県議会では、知事が包括的連携協定を締結する方向性を答弁していました。
【平成27年11月臨時会:井手よしひろ県議の質問(提案)】
 こうした現状の中で、被災者支援のために情報システムを構築したのは、国の研究所や民間の情報ボランティアの皆様でした。つくばの防災科学技術研究所を中心として、罹災証明書のシステム、要支援者の支援システム、ボランティアのニーズマッチングシステム、避難所の必要物資のデータベースなどが稼働しました。必要なソフトウエア、パソコンなどのハードウエア、地図情報などの著作権問題など、この危機的な状況を防災科学技術研究所などの支援を受けて乗り越えることができたと言っても過言ではありません。
 私は市町村の被災者支援システムを平時から準備する必要を痛感いたします。また、この10月からはマイナンバー制度がスタートをいたしました。このマイナンバーを活用すれば、被災者を支援するシステムの精度が格段に向上します。
 常総市の事例でも明らかなように、被災者支援システムの構築のノウハウは、既に防災科学技術研究所などで実用化されています。あとは運用に当たって、防災科学技術研究所などと県並びに市町村がしっかりと連携することが重要です。
 そこで、今回の豪雨被害を受けて、市町村の被災者支援システムを平時から充実させ、発災時には速やかに的確な支援体制を構築する必要があると考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。と同時に、マイナンバー制度を被災者支援に活用すべきと考えますが、知事のお考えをお示しください。

【橋本知事の答弁】
防災科学技術研究所 次に、被災者支援システムの導入についてお答えいたします。
 今回の豪雨災害では、つくば市に所在する防災科学技術研究所が情報ボランティアの方々の協力を得て、常総市においてさまざまな支援を行ってくれたところであります。常総市から聞いたところによりますと、具体的な支援内容としましては、罹災証明書発行システムや要支援者の支援システム、ボランティアのニーズマッチングシステムの構築のほかに、道路通行可否の情報や上下水道の復旧情報等を表示した地図を作成し、市のホームページで公開できるようにしたこと、避難所における情報提供支援として、タブレット端末を携帯した情報ボランティアが、市役所などが発表した被災者向け情報を被災者の求めに応じて提供したことなどが挙げられます。
 特に、被災者支援の基礎となる罹災証明書の発行支援に関しては、被災家屋調査実施計画の策定や、罹災証明書の発行・管理を行うための手順の策定などの支援を行っていただいたと聞いております。防災科学技術研究所においては、こうした被災者を支援するシステムを構築しており、それを活用して発災時には速やかに市町村を支援する体制をとっております。
 議員御指摘のように、災害に備えて市町村が被災者支援システムを導入しておくことは大変に有効でありますが、小規模の市町村にとっては、システムの維持管理や更新のための費用が大きな負担となることも考えられます。このため、被災者支援システムを導入できない市町村であっても、発災時には防災科学技術研究所からの支援を受けることができるよう、県と防災科学技術研究所との間で包括連携協定を締結し、平常時から県主催で市町村職員を対象とした支援システムの利用訓練を行うなど、発災時の的確な被災者支援体制を構築できるよう努めてまいります。
 なお、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆるマイナンバー法では、災害対策基本法による被災者台帳の作成にマイナンバーを利用することができることとされております。
 今後、内閣府では、マイナンバーを被災者支援に活用する具体的な手順を取りまとめることとしておりますので、これを踏まえ、県におきましても、マイナンバーを被災者支援のために活用してまいりたいと考えております。
 県といたしましては、防災科学技術研究所のような地元の研究機関と連携することや、被災者台帳の作成にマイナンバーを利用することなどにより、災害発生時に迅速に被災者を支援できる体制を整えてまいりたいと存じます。
参考:防災科学技術研究所:http://www.bosai.go.jp/