赤紙チラシ
平和安全法制の施行で「徴兵制度が導入される」という主張は荒唐無稽!
 夏の参議院選を控えての行動なのか、共産党系の団体が成人式や高等学校の登下校時などに、戦前の召集令状のレプリカを配る事例が、ネット上で話題になっています。茨城県の結城市議会でも、今年1月市主催の成人式で配られた「祝成人式」の白封筒に入れられた召集令状に似せられた「平和安全法制に反対するチラシ」が取り上げられました。

 そもそも「平和安全法制のその先には徴兵制度導入が待っている」という、その主張はいかがなものなのでしょうか?
 徴兵制とは、個人の意思にかかわりなく一般国民に兵役を義務付ける制度です。日本においては、徴兵制は憲法18条の「その意に反する苦役に服させられない」との規定、または、憲法13条が定める個人の尊重の原則に反するとの理由で、現憲法下では明らかに憲法違反になるとされてきました。
 安倍晋三首相も、国会で「徴兵制度は明らかな憲法違反。たとえ首相や政権が代わっても徴兵制の導入はあり得ない」と繰り返し答弁しています。 このように徴兵制に関する政府見解は一貫しています。
 平和安全法制と徴兵制の問題を、なぜいっしょに一部の野党は持ち出すのでしょうか?これによって自衛隊員が危険にさらされるとか、将来的に入隊希望者が減って徴兵制になるとか、解釈改憲で徴兵制を導入する可能性があるとか、選挙目当ての荒唐無稽の話になっています。徴兵制度、召集令状という煽情的なことばで、人々の不安を募り、選挙に有利な世論を作ろうとしているとか思えません。
赤紙チラシ:宛名氏名の「六谷信太」は「ムダニ・シンダ」と読ませる!
赤紙チラシ その上で、共産党の関連団体が配っている「赤紙チラシ」をみてみたいと思います。戦争反対の世論を高めたい、軍国主義下の日本の歴史を正確に伝えたい、といった思いのもとでチラシを作り、配布することは、言論、思想、表現の自由であり、個人的にとやかく言うつもりはありません。正々堂々と配っていただければよいと思います。
 ただ、その内容は大いに気になります。
 この赤紙チラシに書かれた召集令状のあて先は、住所が「三重県津市船頭町一七二一番地」、名前が「六谷信太」となっています。あたかも実在の人物のように記載されており、私も当初、そのご家族がこうした歴史を二度と繰り返してはならないと提供されてものと信じていました。
 しかし、記載された住所をグーグルマップで検索してみると、意外な場所が表示されます。ここは、「津生協病院」の住所でした。津生協病院は、ホームページによると「みえ医療医療福祉生活協同組合の保険・医療ネットワークの基幹病院としての役割を担う」病院とされています。共産党系の病院と言っては言いすぎかもしれませんが、関連が深い医療機関です。
 さらに、驚かされたのは「六谷信太」との名前です。これは、河北新聞の記事を引用した方が良いと思います。
<戦後70年>「赤紙」配り反戦訴え、赤紙のレプリカを配った署名活動
(河北新報OnLine2015/8/16)
 岩手県母親大会連絡会は、太平洋戦争中に国民に兵役の義務を負わせた徴兵制を伝えようと、「赤紙」と呼ばれた召集令状のレプリカを盛岡市大通の商店街で配布し、平和の尊さを訴えた。
 メンバー約10人で400枚を配った。安全保障関連法案の廃案を求める署名運動にも取り組み、「日本を再び戦争する国に戻してはいけない」と呼び掛けた。
 赤紙のレプリカは、1941年に陸軍歩兵隊に召集された三重県の男性の召集令状を親族が複写した。名前の欄は男性の出兵後に親族によって「六谷信太」(むだにしんだ)と書き換えられたという。
 県連絡会の鈴木まき子会長(60)は「紙切れ一枚で家族が戦地に向かわされるような悲劇は二度とあってはならない。若い世代に戦争の悲惨さを語り継いでいきたい」と話した。

 「六谷信太」は「ムダニ・シンダ」=「無駄に死んだ」との意味だと知ったとき、怒りにも感じた感情が沸いてきました。
 茨城県内では、この赤紙チラシの召集令状の部分だけをコピーして、学校で教材の一部として使った事例も報告されています。少なくてもこの赤紙チラシを本物の召集令状のレプリカのようには使っては欲しくないと思います。