厳しさ増す安全保障環境の中で国民の生命・権利を守る平和安全法制
井手よしひろ県議 3月29日、恒久平和主義を定めた憲法9条の下、国民の生命・権利を守り、国際平和にも一層の貢献をめざす平和安全法制関連法が施行されました。
 米国がもつ影響力の相対的な低下によって世界のパワーバランスが大きく変化し、同時に、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増しています。さらに、非人道的な国際テロも相次いでいます。
 例えば、軍事的な挑発を繰り返す北朝鮮は、今年に入って、4度目となる核実験を強行しました。
 弾道ミサイル技術も飛躍的に向上させ、日本を射程に収める「ノドン」ミサイルをすでに数百発も配備しています。さらに、射程1万キロメートルに及ぶ弾道ミサイルの発射実験を成功させ、目標に正確に着弾させる技術も進歩しています。核弾頭を搭載した弾道ミサイルの出現も現実味を帯びつつあります。
 中国の軍備増強と海洋進出も目立っています。
 中東では地域紛争が収まらず、シリアなど紛争で疲弊した国家が国際テロの温床となっています。
 こうした状況はここ15年余りで特に顕著になっています。この中で、日本国民の生命・自由・人権を守るためには、まず、どのような外部からの攻撃に対しても適切に対処できるだけの防衛体制を整えなければなりません。同時に、国際社会の平和と安定があってこそ日本の安全も成り立つため、国連をはじめとする国際社会が取り組む国際平和のための活動に対しても、武力行使以外の分野で支援することも必要です。
 このように「日本の安全」を守り、「国際社会の安全」に貢献するために平和安全法制は必要です。
抑止力を高め、国際平和にも貢献。戦争法との批判は一部勢力のでっち上げ
 隙間なく「日本の安全」を守り、「国際社会の安全」にも貢献することが平和安全法制の目的です。
 「日本の安全」については、これまでの武力攻撃事態に加え、新たに存立危機事態を定めました。
 武力攻撃事態は日本に対する武力攻撃が発生した場合であり、自衛隊はそれを排除するための武力行使が許されます。
 存立危機事態は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、それによって日本の存立が脅かされ、日本が武力攻撃を受けたと同様な深刻、重大な被害が国民に及ぶことが明らかな場合です。
 その際は、例えば、日本防衛のために警戒監視中の米艦が攻撃を受けた場合にも自衛隊が守ることを認めました。あくまで日本の防衛を万全にして抑止力を高めることが目的なのです。
 「国際社会の安全」については、新たに国際平和支援法が制定されました。例えば、国連決議に基づいて加盟国の軍隊が国際平和のために行動している場合、自衛隊に協力支援活動(後方支援)を認めました。後方支援とは物品・役務の提供や補給、輸送、医療の分野で協力することです。
 自衛隊は憲法9条で海外での武力行使が禁じられています。そのため、自衛隊の後方支援が外国軍の武力行使と一体化しないよう「現に戦闘行為が行われている場所」では実施できないことになっています。
 自衛隊に後方支援を認める国会承認は、公明党の提案で、例外なき事前承認とされました。
 こうした平和安全法制に対し、「海外で武力行使をする戦争法」などという批判は全くの誤りです。戦争法とレッテルを張りで、どのようにして日本人や日本の領土を守っていくのかという議論を封殺しようとする態度は容認できません。

 共産党など一部野党は「戦争法」「徴兵制に道」と批判しています。
 国際紛争を武力で解決しようとするのが戦争です。それは不戦条約や国連憲章で禁止され、憲法9条でも“戦争放棄”が明記されています。
 平和安全法制を支持する国際社会の声今回の法整備の本質は、他国からの武力攻撃を抑止することを目的とする“戦争防止”法です。自衛隊が武力行使を許されるのは、どこまでも国民に日本が武力攻撃を受けたと同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな場合に限られます。日本を海外で戦争できる国にする「戦争法」との批判は、安全保障環境の変化にきちんと向き合おうとしておらず、無責任で根拠のない言い掛かりに過ぎません。
 平和安全法制の整備に対しては、EU(欧州連合)やASEAN(東南アジア諸国連合)諸国をはじめ、多くの国々から賛同の声が寄せられています。平和安全法制は戦争を防止して地域の安全をもたらすものであると評価されていることを雄弁に物語っています。
 一方、徴兵制について政府はこれまで、国会答弁などを通し、憲法18条の「その意に反する苦役に服させられない」との規定や、憲法13条が定める個人の尊重の原則に反するとの理由で「憲法の下では許されない」と断言してきました。
 安倍晋三首相も「明らかな憲法違反。たとえ首相や政権が代わっても徴兵制の導入はあり得ない」と繰り返し答弁している通りで、これらを理解しようとしていない決め付けに過ぎません。
 一部に「憲法違反」との指摘もあります。しかし、6割を超える憲法学者が自衛隊の存在そのものを“違憲”と見ているという報道もあります。そうした憲法学者に自衛隊の役割を明記する平和安全法制への認識を聞けば、どのような結論になるかは容易に想像できます。
 専門家の意見は謙虚に受け止めないといけませんが、政治は現実に国民の生命を守る責務があります。国民の生命と平和な暮らしが脅かされ、幸福追求の権利が根底から覆されようとする明白な危険があるときに、政府が何もしないことこそ、憲法の精神に合致しないと考えます。
 自衛隊の武力行使は自国防衛のための「自衛の措置」に限られており、それを超えて「他国防衛だけを目的とした集団的自衛権の行使は許されない」という政府の憲法解釈の論理の根幹は平和安全法制でも維持されています。

行動する平和主義、外交努力により世界の安定に貢献
 公明党は平和安全法制の成立後、韓国、中国を続けざまに代表団を派遣しました。
 山口那津男代表をはじめとする党訪韓・訪中団は平和安全法制の関連法が成立した直後の昨年10月、韓国の朴槿恵大統領、中国の習近平国家主席と相次いで会談しました。両首脳には安倍首相の親書を手渡し、翌月に韓国で開催された日中韓首脳会談は成功裏に終わるなど、日本と両国の関係は改善の方向に大きくかじを切りました。
 一方、平和安全法制の整備や日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定により、米国との緊密な情報連絡や協力がスムーズになったと指摘されています。こうした効果は、2月の北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射の際にも発揮されました。国民の生命と安全を守る体制が着実に向上しているものと考えています。
 今後は、引き続き、国民の皆さまへの丁寧な説明を続けてまいりますし、政府にもその努力を求めていきます。
 併せて、平和安全法制の運用が適切であるかどうか、公明党はしっかりチェックしていきます。その点において公明党は与党と、日本を元気にする会など野党3党との修正協議をリードし、自衛隊を派遣する際の国会関与の強化などについて合意に導きました。合意内容の実現に向けて、しっかり取り組んでまいります。